ビスケット特集

◆ビスケット特集:コロナ禍の食を支える 巣ごもり消費で需要増加

菓子 2020.12.04 12155号 07面

 コロナ禍で外出ができない中、ビスケットは人々の食を支えた。本紙が行ったKSP-POSデータによる「コロナ禍での主要菓子カテゴリー販売分析」では、「ビスケット・クッキー」の金額増減率は20年3月が前年比2.5%増、4月が同12.8%増、5月が同17.8%増となり、菓子カテゴリーでトップレベルの伸びを示した。巣ごもり消費の増加を受け、長期保存が可能で食事代替にもおやつにもなる汎用(はんよう)性の高さがあらためて評価された格好だ。需要の急増に伴い、小売業から発注が相次ぎ、メーカー各社は従業員の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を取りながら商品供給に注力し、非常時での食料の安定供給という社会的責任を果たした。一方、緊急事態宣言が解除され、人々の移動が始まると需要は落ち着きを見せたが、夏場の新型コロナ第2波の到来で再度需要が活発化。現在、メーカー各社は新型コロナ第3波の到来を受けて対応を始めた。(青柳英明)

 ●汎用性があらためて評価

 新型コロナ第2波までは、感染拡大とビスケットの需要増に相関関係があった。正確にいえば、在宅時間=移動の有無との相関関係となる。緊急事態宣言を伴う第1波時は人々の移動が極端に減少し、巣ごもり消費が発生。緊急事態宣言解除後の第2波では、需要の山はそこまで大きくならなかった。「コロナ慣れ」という言葉に代表されるように、人々が新型コロナウイルス感染症との「付き合い方」を経験則として身に付けたことが影響したようだ。第3波では、東京都が酒類を提供する飲食店の営業時間の短縮を要請するなど、深刻度が増している。緊急事態宣言の再宣言があれば、ビスケットの需給はタイトになる。メーカー各社は、第3波の行方を注視する。

 ●市場の間口拡大 奥行き期待も

 あるメーカー担当者はコロナ禍による需要の急増を受け、16年9月に北海道を襲った台風10号の影響によるジャガイモ不足で17年に発生した「ポテトチップスショック」を思い出したと語る。

 ビスケットの棚を空けることのできない小売業は商品の手当てに動き、発注が殺到した。メーカー会社は、従業員の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を取りながら、主力商品を中心に供給に注力した。こうした影響を受け、当初発売を計画していた新商品が発売中止、または延期となり、発売した新商品の一部は休売となった。

 コロナ禍は、ビスケット市場に間口拡大という現象をもたらした。若年層や男性など、従来のビスケット市場では比較的層の薄かった部分が新たにビスケットを購入し、新規ユーザーになった。これにより、市場の間口が拡大した。市場が拡大するには間口と奥行きの拡大が重要である。

 コロナ禍でくしくも、間口を拡大したビスケット市場の拡大には奥行き、すなわち新規ユーザーに継続して購入してもらえるか、既存ユーザーにさらに購入してもらえるかが鍵になる。

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