イタリアではコメもアルデンテ パーボイルドライスは高栄養・時短調理で人気

イタリア料理といえばピザやパスタなど小麦製品が有名だが、実はコメもよく食べられている。「SUSHI米」も含め、スーパーには常に10種類以上のコメが並んでいるほどである。中でも最近よく目にするのがパーボイルド加工(収穫したコメをもみ殻のまま水に浸し、蒸して、乾かし、精製する工程)したコメ。半調理されたコメは栄養価が高く、調理が簡単、冷めてもベタベタしないなど利点が多い。惣菜コーナーでも人気のライスサラダは、これでなければというくらいだ。今回はイタリアで人気のパーボイルドライスについて紹介しよう。

イタリアのおいしいコメ料理は

世界中で人気のピザやパスタのイタリア料理。ところが世界に名だたるイタリア料理にはおいしいコメ料理もたくさんある。イタリア人はリゾットやライスコロッケ、そしてライスサラダもよく食べる。

イタリアではパスタと同じように、コメもアルデンテにゆでる。大きな鍋に沸かしたお湯の中に、直接、生のコメを入れ、茹で上がったらザルにあける。

日本の雑炊のようなイメージのあるリゾットも、実はまったく別の料理。生のコメを炒めてからスープで煮るリゾットは、少し芯が残るくらいのゆで加減がちょうどよい。軟らかくゆでたコメは、イタリア人にとっては気持ちが悪い、とまで言われたことがある。

バールの惣菜コーナーで見かけたライスサラダ(INSALATA DI RISO)など

パーボイルド加工とは?

アルデンテに調理するのに最適なコメとして、最近イタリアで人気なのがパーボイルドライスである。ゆですぎで軟らかくなることがなく、時間が経っても歯ごたえのあるコメである。

パーボイルドライスは、収穫したコメをもみ殻のまま水に浸し、蒸して、乾かして作られる。そして、白米と同様に精製されたコメである。生の状態だと少し褐色がかった色合いをしているが、これは天然の色であり、化学的なものは一切加えられていない。

すでに半調理しているパーボイルドライスは、調理時間が短いという大きなメリットがある。まるでパスタのように、熱湯に入れた後、わずか15分ほどのゆで時間で完成である。普通のコメのように事前に水に浸す必要もなく、調理時間がずっと短縮できる。

また半加工のため、虫がつきにくいという利点もある。実際、イタリアだけではなく欧州や米国、インドやバングラディシュ、タイなど世界の多くの地域でパーボイルド加工が行われている。

イタリア大手のコメメーカーのライスサラダ用パーボイルドライス。10分でゆでることができ、いつでもアルデンテの状態で、コメ粒がくっつかないと表示されている

パーボイルドライスでおいしいライスサラダやチャーハンができる

イタリアでのパーボイルドライスの一番の活用法はライスサラダだ。日本のちらし寿司のように、レモンや塩、オリーブオイル、お好みの具をご飯と和えて作られる。

これは出来たてを食べるパスタと違って、時間が経ったほうがおいしく、すなわち作り置き料理ともいえよう。酢が入っているので保存しやすく、常温でおいしいので温め直す必要もない。

そのためスーパーや食材店などの惣菜コーナーでの定番メニューとして、テークアウトにも重宝する。コメに野菜類、ハムやツナなど、いろいろな食材が入っているため、手軽にバランスよく食べられるところも人気の理由である。

イタリアのスーパーの惣菜コーナー

パーボイルドライスを使えば、時間が経ってもコメの粒がパラっとしていることも特徴だ。ベタベタしないので、イタリア料理のピラフや中華のチャーハンも、パーボイルドライスを使うと、簡単にパラッと仕上げることができる。

栄養価の高いパーボイルドライスを玄米の代わりに

そして、パーボイルドライスの本当のメリットは、栄養価が高い点にある。もみ殻のまま蒸すことによって、糠の部分の栄養が内側に残るのである。確かに、パーボイルドライスの食感や匂いも、玄米のそれとどことなく似ている。ただ、匂いも玄米より穏やかで、食感もずっと食べやすい。玄米は調理に時間がかかるのと、食べにくいという理由で敬遠する人も多いが、パーボイルドライスなら試しやすいはずだ。

食に関して伝統的でヘルシー志向の人が多いイタリアで、パーボイルドライスが普及しているのであるから、今後、日本の市場でも検討の価値はあると考えられる。(フードライター 鈴木奈保子)

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