過剰な肉消費から脱却し和食に注目 フランスでビーガンがトレンドに
フランス人の50%が肉の消費を減らしている。これは欧州各国でも同様の流れで、ドイツ、スペイン、英国でも3~4割がこれまで過剰であった肉消費を控えることを意識しているという。近年の和食ブームに加え、このビーガントレンド下でも改めて和食が注目を集めているようだ。
ビーガントレンドを支える「フレキシタリアン」の存在
ベジタリアンは肉・魚を避けるが、卵や乳製品は食べる人々であり、ビーガンは肉・魚・卵・乳製品・はちみつなど動物由来の食品を可能な限り排除し、さらに食以外でも皮や毛など動物由来の製品を一切避けるライフスタイルだ。フランスでのベジタリアン・ビーガン製品の売上げは増加傾向にあり、大型スーパーでのベジタリアン・ビーガン食品の販売は、毎年17%程度の成長が見込まれている。
フランスでビーガン・ベジタリアン人口はわずか5%程度であるものの、ベジタリアン・ビーガンの要素を柔軟に取り入れる「フレキシタリアン(=フレキシブルなベジタリアン)」がビーガン市場の原動力となっている。5人に1人がフレキシタリアンの食生活を取り入れているとも言われており、その理由は健康面、動物の飼育環境、環境への影響の順に挙げる割合が多い。その流れで、欧米の食事に比べて植物性の食材・調味料を使用することが多く、和食へも期待が寄せられているようだ。
参考サイト:
ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ) JETORO
ビーガン市場で豆腐などが注目
ビーガン料理は肉や魚、牛乳・バターなどの乳製品を使用しないため、使用できる食品が限られる。そのため、豆腐や醤油、味噌など和の植物性食材を取り入れることによって、料理の幅を広げたいと考える人も多く見られる。
これらの和食材はパリの大手スーパーマーケットやオーガニック系のスーパーマーケットでも手軽に購入できるようになっており、さらに、それらの馴染みの薄い食材を活用するために、和食のビーガンレシピや豆腐をメーンにしたレシピを紹介する本も出版されている。この書籍では天ぷらやラーメン、おにぎりなどすでに認知度の高いメニューから、揚げ出し豆腐、野菜のきんぴらなどさまざまなレシピが紹介されている。
パリの日本食レストランもビーガン対応
パリではもともとベジタリアンメニューを設けているレストランが多い。オペラ地区の日本食レストランでは、vege(ビーガン・ベジタリアン)メニューを販売している店も多い。筆者が訪問した日にはすでにvegeメニューが売り切れてしまっていた店舗もあることからも、その人気の高さが伺われる。vegeメニューは肉・魚の代わりに豆腐やソイミートを使用し、和食に欠かせない“だし”は動物性食材である鰹節の代わりに昆布やシイタケ、野菜だしが使われることが多いようだ。
フレキシタリアンの大多数が重視するのはやはり「味覚」と「価格性能比」と言われている。さまざまな理由で過剰な肉消費から脱却しようとする欧米の人々にとって、日本食は肉を控えつつも食事を楽しむことができる食生活に応える選択肢として、今後も価値が高まっていくのではないだろうか。(在フランス管理栄養士ライター 高城紗織)