酒類流通の未来を探る

酒類流通の未来を探る:小売最前線=限られた売場で選ぶ楽しみ

酒類 2019.09.21 11944号 13面
ジャンル別に価格を均一化するビール類売場

ジャンル別に価格を均一化するビール類売場

RTDは均一価格に加え、組み合わせ自由のまとめ買いを提案

RTDは均一価格に加え、組み合わせ自由のまとめ買いを提案

売場が広がったワインはオリジナル商品の比重が高まる傾向

売場が広がったワインはオリジナル商品の比重が高まる傾向

嗜好(しこう)の多様化を背景に、SM(食品スーパー)の酒類売場は品揃えの変化を続けている。市場の推移に合わせて缶チューハイなどのRTD売場が拡大、輸入ビールの棚は多くが国産クラフトビールに置き換わり、ウイスキーは輸入ブランドが増えた。ワインは広がった売場を維持、直輸入品や自然派ワインを打ち出す提案が増えている。バラエティーが必要な酒類売場は、スペースの制約やオペレーション負荷への対処が求められる。顧客にとっての選びやすさと管理の効率性を同時に追求し、食卓提案のキーカテゴリーとして売場の充実を目指す。(宮川耕平)

●増税と還元、影響は不透明

酒類は軽減税率の対象外なので基本的には駆け込み需要が発生するはずだが、店によってはキャッシュレス還元が実施されるため見通しは複雑になる。5%還元が適用される店の場合、実質的な購入金額は増税前より安くなる。そのため駆け込み需要はこれまでの増税時に比べ抑制されると思われるが、キャッシュレス決済の浸透度合いによっても結果は違ってくる。また、大手チェーンは還元支援の対象にならないため、駆け込みの獲得に取り組まない理由はない。

増税前後の動きは不透明でも、一定期間でならせばトントンになるという見方は多いが、それは総需要の話だ。

キャッシュレス還元によって消費者が利用する店を選別すれば、店舗間では格差が生じる。中小ストアの5%還元に対しては大手も何らかの対策を打つしかないので、価格競争やポイント付与合戦が激化するとの見通しもある。

還元支援策は10月から20年6月末まで実施される。この9ヵ月間の動向は、10月1日の前後にも増して不透明だ。また、キャッシュレス還元の効果が高いほど、制度が終わる7月以降の反動も懸念材料になる。

●均一価格が定番化

キャッシュレス還元の影響に関係なく、店舗で追求しなければならないのは店頭で選ぶ楽しさを提供しつつ、売場管理の効率を高めることだ。

品揃えの幅を広げることと、オペレーション負荷を抑制することは本来トレードオフの関係にあるが、酒類の嗜好は多様化しており単純な絞り込みでは顧客満足を得られない。かといって、人手不足のさなかに陳列業務を増やすことも難しい。

今年に入り、酒類のカテゴリーごとに均一価格を設定する店が増えている。狙いはチェーンによって異なる部分もあるが、選ぶ楽しさと管理効率を両立させる工夫という一面は共通している。

例えばビール類では、定番ブランドはジャンルごとに共通価格を設定し、限定品やプレミアムビールの一部は個別の売価設定とする場合が多い。

RTDでは定番ブランドを均一価格にするだけでなく、3本または4本の同時購入でさらに割引する提案が広がっている。ブランド指名買いのビールに比べ、RTDはその時々で選ぶフレーバーが変わり、ブランドスイッチも起こりやすい。自由な組み合わせでまとめ買いを促す施策は、RTDのニーズ特性にマッチし、買上点数のアップにもつながる。

価格を均一にすることで、カテゴリー内のさまざまな商品にトライしやすくなる。それがブランド単独ではなく、カテゴリーのファンづくりにつながる。イオンリカーは、この効果によって日本酒やウイスキーのファン育成に取り組む。同社はイオンリテールの100%子会社で、ワイン専門店の運営のほかGMS(総合スーパー)の酒類売場にも関わっている。

ウイスキーは980円均一のコーナーを導入、NBと直輸入品で構成する。需要期の12月をめどに、均一プライスを2980円、3980円と広げる計画だ。直輸入はスコッチから着手して各地域に拡大、品目に占める割合を現状の15%から来期には30%に高める。

日本酒も980円で大吟醸酒をコーナー化している。イオンリカーは各地の酒蔵との直取引を拡大中で、品揃えの充実を進めている。23年には日本酒の酒税が現在より17%ほど下がる。長期視点で伸長の余地があるカテゴリーと見ている。

●直輸入ワインが拡大

SMが取り組むメニュー提案との連動で、最も重視されている酒類はワインだ。食卓を華やかに演出するキーアイテムとして、関連販売の中軸に位置付けられることが多い。このワインカテゴリーであらためて直輸入ワインが拡大している。

直輸入ワインを強化する動きは、00年代の後半にも見られた。当時はイオンや西友、セブン&アイグループ、ドン・キホーテなどGMSが中心だった。現在、その取組みがSMにも広がっている。中でもヤオコーは輸入会社を設立し、低価格帯の補充にとどまらず、2000円台の高価格帯まで幅広く品揃えを拡充している。

直輸入品の高い粗利益率は、販促にも生きてくる。ヤオコーでは月に1日、ワイン全品2割引きセールを実施するが、直輸入品に関してはさらに1日、合計2日行う。また、7月には直輸入ワインの3割引きセールも実施した。直輸入品はワインの中核であるだけでなく、来店目的を作るカテゴリーと位置付けられている。

ワインの注目分野として、オーガニックなどの自然派ワインは着実に売場を広げている。イオンリカーで取り扱う自然派ワインは18年時点で約30品・売上構成比2%だったが、20年には100品、25年には200品に拡大、この時点で構成比30%を計画している。ここでも中心となるのは直輸入ワインだ。

環境やサステナビリティーに配慮した商品への関心は高まっており、酒類の中ではワインがこの分野における市場形成で先行している。こうしたところにもライフスタイル商品としてのワインの特徴が現れている。

●夕食シーンの獲得には酒類

店舗の新しい利用シーンを開拓する手段として、試飲コーナーや「ちょい飲み」機能を設ける売場づくりへの挑戦は続いている。酒類が主役のバー・スタイルだけでなく、酒類を脇役にする工夫もある。

8月末にリニューアルしたダイエー運営のイオンフードスタイル新松戸店(千葉県松戸市)は、「ちょいゴチ」の名称で食事を提供するコーナーを導入した。コンセプトは独自のブランド肉を使用したメニュー20種類を提供する「肉バル」で、このコーナーでは肉料理を引き立てるワインをセレクトして提供する。

外食需要を取り込む新たな機能への挑戦は、10月の消費税率アップによってどういった影響が出るか不透明な部分もある。短期的な懸念材料はあるものの、長期的に見て利用シーンの拡大はSMにとって不可欠の課題だ。

休憩シーンを獲得するためにカフェが必須の機能になったように、夕食需要を獲得する際には、ワインをはじめとする酒類の活用が重要になる。

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