酒類流通の未来を探る

酒類流通の未来を探る:小売最前線=SM 酒類売場、食卓を彩るワイン提案

酒類 2020.07.18 12084号 13面
ワインを選ぶ空間を上質に演出(リンコス横浜馬車道店)

ワインを選ぶ空間を上質に演出(リンコス横浜馬車道店)

オーガニック、ビーガン対応などの専門性で差別化(ビオセボンアトレ竹芝店)

オーガニック、ビーガン対応などの専門性で差別化(ビオセボンアトレ竹芝店)

 ●家飲み拡大で好機

 新型コロナウイルスの感染拡大で家飲みの機会が増えたことから、スーパーの酒類売上げは大きく伸長した。日常消費のためのストック購入が増えたことはもちろん、自宅で過ごす時間を楽しみたいというニーズが高まったことも背景にある。当面は外飲みを気兼ねなく楽しめる環境に戻りそうもない中、内食の購入チャネルである食品スーパー(SM)には、酒類と共に食卓を楽しむための提案が期待されている。

 食卓提案で最も重視される酒類といえばワインだ。直輸入に取り組むチェーンも多く、店のオリジナリティーを打ち出せるカテゴリーでもある。

 ヤオコーは、17年に輸入専業の子会社として小川貿易を設立、ワインは70品ほどを取り扱っている。価格帯は500円前後から3000円ぐらい、酒類売場では直輸入ワインだけを集合陳列して展開する。今期に入り、自社ホームページ内に直輸入ワインの紹介サイトを設けた。商品それぞれの特徴に加え、取引先ワイナリーの紹介にも力を入れている。所在地をマークしたグーグルマップを掲載、ズームをすればワイナリーの周辺環境も確認できる。商品情報を補い、ワインのイメージを具体的にしてもらうための工夫だ。

 マルエツが4月に開設したリンコス横浜馬車道店(横浜市中区)は、駅直結の高層複合ビル1階に位置する。高質業態のリンコスらしく、ワインはアップグレードの品揃えを増やしている。品揃え以上に目を引くのが角地に形成したワイン売場で、明治・大正風のレトロモダンを意識した内装により、ワインを選ぶ雰囲気を作る。

 自然派志向や環境意識の高まりの中、オーガニックワインの裾野も広がっている。食卓提案の枠を超えたライフスタイル提案の分野だ。

 オーガニックスーパーを運営するビオセボン・ジャポンで取り扱うのは、認証オーガニックワインか、同等の方法で造られたワインに限られる。

 ビオセボンでの売れ筋は1200円前後と通常のSMに比べ2倍ほど高い。外食からの流入が顕著だった緊急事態宣言の際には8000円前後の商品も伸びたという。

 同社で取り扱うオーガニックワインには、ビーガン対応品もある。通常との違いは、ワインの澱(おり)を除く際に卵白を使用しないことや、肥料にも動物のフンを使用しないことにある。このビーガン対応品も、ビオセボンで取り扱う商品は全てオーガニックワインになっている。

 ライフスタイルにはノンアルコールという選択肢もある。同社で取り扱うのはワインのようなボトル容器のオーガニックジュースで、ノンアルでも「シャルドネスパークリング」や「カベルネソーヴィニヨン」など、ブドウ品種別に作られた商品を揃える。価格はフルボトルで1000~1500円、ワインと同等だ。

 オーガニックワインは、通常のワインとは異なる専門分野であり、有名産地・ブランドにも違いがある。ビオセボンでは顧客の質問に答えられる接客を重視し、従業員が学ぶ機会として取り扱いワインのテイスティングにも力を入れている。(宮川耕平)

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