ミネラルウオーター・炭酸水特集
◆ミネラルウオーター・炭酸水特集:容器包装など環境配慮が進化
◆ポストコロナへ新たな取組み活発化
ミネラルウオーター(MW)市場は今春、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛などから、備蓄や家庭内需要が拡大し、スーパーマーケットやドラッグストア、ECチャネルなどで3月に一時、特需的な動きがあったようだ。だが、4月の緊急事態宣言発令などによる不要不急の外出自粛がさらに強化されたことから、オフィス周辺の自動販売機やコンビニエンスストア、交通系チャネルでの減少など消費形態の変化が起こり、4月以降は厳しい市場環境になっている。その状況を打破しようと、さまざまな取組みが活発化している。「100%リサイクルPETボトルや完全ラベルレス実現などの容器による環境配慮の進化」「炭酸水や輸入水での活発な情報発信」「拡大する通販チャネル」「新たなカテゴリーからの提案」など、ポストコロナへ向け、新たな取組みが進む。(本吉卓也)
●完全ラベルレス化や100%リサイクルPET
今春は容器包装などに対する業界を挙げた環境負荷低減の取組みが活発化している。「社会性を有する製品」といわれるMWの面目躍如といえるだろう。
アサヒ飲料はタックシールを削減し、完全ラベルレス化を実現した「『アサヒ おいしい水』天然水 ラベルレスボトル」(PET600ml、2L)を4月7日から、通販や宅配チャネルなどを中心に、リニューアル発売した。タックシールの代わりにボトルに直接リサイクルマークを刻印することで、完全ラベルレス化を実現した。年間で7tの樹脂量削減を見込み、環境負荷軽減に貢献する。同社は、18年からラベルレス商品を展開し、20年はラベルレス商品トータルで約150万箱の出荷量を目指す。
コカ・コーラシステムは、「い・ろ・は・す」から、100%リサイクルPET素材を使用した「い・ろ・は・す 天然水 100%リサイクルペットボトル」(555mlPET)を3月9日から、国内最大規模(日本コカ・コーラ調べ)で発売した。同ブランドでは従来、ボトルの30%にリサイクルPET素材を使用していたが、リサイクルPET素材を100%使用した同アイテム投入で、同システムが掲げる「ボトルtoボトル」を加速させ、日本国内でのプラスチック資源の循環利用促進や環境負荷低減に取り組む。
加えて、同システム初の完全ラベルレスPETボトルを実現した「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」を4月から全国で順次発売している。ケース販売のみで販売チャネルはオンライン、スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストア。「ボトルtoボトル」による100%リサイクルPETボトル素材を使用し、環境に配慮する。
なお、コカ・コーラシステムが全国の20~50代の男女400人を対象に、「ゴミの分別に関する意識調査」を実施したところ、新型コロナウイルス感染症の影響による家事時間の増大に伴い、約7割がごみの分別にストレスを感じていることが分かったという。「PETボトルのラベルはがし」はストレスに感じるごみ分別作業2位になるなど、完全ラベルレスPETボトルの投入は社会課題解決にも貢献するといえるだろう。製品のラベルをなくすことで、ラベルをはがす手間がなくなり、プラスチックごみを減らすことに加え、ごみの分別も楽にし、環境にもユーザーにも優しい製品となる。
これら「完全ラベルレス」が実現できたのは経済産業省による「資源有効利用促進法」の省令一部改正に伴うもので、今回の省令改正は、廃棄物削減(リデュース)の促進、タックシールなどをはがし分別を省くことを目的としている。
●躍進するMWブランド カテゴリー外含め新提案 炭酸水は伸長なるか
19年の飲料総市場でのナンバーワンブランドに「サントリー天然水」(サントリー食品インターナショナル)がなるなど(同社推計)、MWブランドの躍進は続く。「サントリー天然水」ブランドは、本体を含む「MW」と「無糖」×「レモン」の「レモン戦略」を展開する「無糖嗜好(しこう)飲料」の2点に最注力する。「無糖嗜好飲料」の新たな選択肢となるのが、“搾りたてのようなレモンのおいしさ”が楽しめる「サントリー天然水 Clearレモン」だ。「天然水」の“清冽(せいれつ)なおいしさ”とストレスのない飲み心地に加え、満足感がありながらも楽にリフレッシュできる中身に仕上げている。加えて「同 スパークリングレモン」をはじめとした炭酸水の「スパークリング」シリーズを刷新している。
この炭酸水カテゴリーは伸長を継続し、炭酸水売上げナンバーワンブランド「ウィルキンソン」(アサヒ飲料)は19年の年間販売数量が2694万箱となり、12年連続で過去最高販売数量を達成し、「ウィルキンソン タンサン レモン」がフレーバー炭酸水市場で19年年間売上げナンバーワンになったという。今年はカテゴリーナンバーワンブランドとして、炭酸水市場のけん引を担う。
カテゴリー外からの新たな提案となるのが、キリンビバレッジの「キリン iMUSE(イミューズ)水」だ。同品はキリングループの独自素材「プラズマ乳酸菌」を使用した同グループ共同ブランド「iMUSE」からの新たな提案となる。無糖・カロリーゼロによるごくごくすっきりとした飲み口による継続飲用や1000億個配合している「プラズマ乳酸菌」を手軽に摂取できるのが特徴だ。季節の変わり目など、高まる体調管理の意識をとらえ、発売(1月14日上市)初週で、3ヵ月の販売予定数を突破している。メーンユーザーの30代以上の男性に加え、糖を忌避(きひ)する層の支持が拡大しているという。
加えて、通販専用商品の充実や高まる家庭内需要で、外出せずに購入できるECチャネルの拡大もポストコロナの社会でさらに注目が高まると予想される。
●伸長する「輸入水」
19年の輸入水は、国産水が前年割れとなる中、18年に続き前年を上回った(日本ミネラルウォーター協会調べ)。20年もこの勢いを加速しようと、各ブランドから活発な情報発信が進む。伊藤園・伊藤忠ミネラルウォーターズが展開する「エビアン」は、新ラベルデザイン「サンライズ」を採用したリニューアルを敢行し、リサイクルプラスチック素材を10%使用したボトルを導入するなど、環境配慮も進む。日本独自のパッケージ220mlを活用し、新たな飲用提案を行う。
12年ぶりに容器リニューアルを敢行した「ゲロルシュタイナー」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)、“クールなMW”という価値が若年層の支持を集め、700mlPETが大幅伸長する「クリスタルガイザー」(大塚食品)、さまざまな知見を高めながら、好調なECチャネル展開でロイヤルユーザーとの絆を深める「ボルヴィック」(キリンビバレッジ)、炭酸入りMWの代名詞といわれる「ペリエ」(日仏貿易)など、採水地や社会インフラとしての役割など、輸入水が持つ独自価値を訴求し、さらなる伸長を目指す。
●19年のMW市場 20年ぶり前年割れ
日本ミネラルウォーター協会によると19年のMW類の生産数量は夏の記録的な冷夏の影響から、国産品が前年をわずかに下回った。消費者の高まる自然かつ健康志向を背景に安定した伸長を継続してきた同市場が前年割れになるのは、2000年以来約20年ぶり。19年の生産数量は国産363万9511kl(前年比0.5%減)、輸入36万1218kl(同2.6%増)、国産と輸入の合計で400万7294kl(同0.2%減)となった。同協会は、「19年は前年割れとなったが、MW類は成長を続け、この20年で市場が4倍へと拡大している。日常の生活の中での支持が高まっている」としている。