新春特集第1部

新春特集第1部:海洋プラごみ対策 課題解決にCLOMA始動

特集 総合 2020.01.01 11991号 07面
5つのKey actionとプラスチック製品のライフサイクルの関係

5つのKey actionとプラスチック製品のライフサイクルの関係

◇3R強化・代替素材活用を

プラスチックごみによる海洋汚染問題の解決は、ごみの適切な回収・処分が大前提であり、ごみを多く排出する新興国も含めた世界全体で取り組むことが求められている。プラ製品の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組みを今まで以上に強化し、生分解性プラや紙など代替素材の活用を進めることが喫緊の課題だ。ここでは海洋プラごみ問題解決のための取組みや、「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA=クロマ)」が目指すビジョンについて紹介する。(涌井実)

●深刻な海洋汚染 不適切廃棄行為に起因

近年、プラスチックをめぐる新たな世界規模の課題として海洋プラごみ問題が注目されている。使用済みプラ製品が適切に回収・廃棄されずに環境中に放出され、それが海洋に流出していることが問題視された。プラスチック自体が「悪」なのではなく、不法投棄やポイ捨てなど不適切な廃棄行為が地球環境に大きな負荷をかけている。

海への影響は深刻で、2015年には少なくとも800万tのプラスチックが海域に流出しているとの報告がなされた。また、2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量を上回るというショッキングな試算が発表され、今後の持続可能性に対する懸念が示された。

日本は長年にわたり、資源を有効に利活用して環境負荷を低減するさまざまな取組みを進めてきた。製品を原料として再生利用するマテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、エネルギー回収などを効果的に組み合わせることで、国内で排出される廃プラの有効利用率は85%以上。欧米に比べて埋め立て処分量も圧倒的に少ない。

海洋プラごみ問題の解決は、一企業の取組みではあまりにも大きく困難だ。民間企業が持つそれぞれの技術やノウハウを組み合わせ、多様なステークホルダーの理解と協力を得て社会全体の課題として取り組む必要がある。

●持続可能社会へ 連携でイノベーション

持続可能な社会の実現に向け、19年1月にメーカーや小売業者が連携して海洋プラごみ問題解決に取り組む新団体「CLOMA」が設立された。(1)素材・製品の開発・生産・使用を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の達成とクリーン・オーシャンの実現に貢献する(2)「使用済みプラスチック製品の適切な回収・処理の徹底」と「3Rの深化とより環境負荷の低い素材・製品への代替」を両輪として取り組む(3)技術、ノウハウ、経験を会員間で最大限共有し、ビジネスモデルを含めたより大きなイノベーションを創出する(4)技術開発と社会システムの組み合わせを最適化し、ステークホルダーの理解を得ることにより社会実装を加速させる(5)素材を循環利用し、環境負荷を低減するジャパンモデルを世界に発信するとともに、各国の国情に適応する形で展開する–を基本原則に、業種・業態を超えた幅広い関係者の連携を強めてイノベーションを加速する取組みだ。

CLOMAでは、今後の取組みとして五つのキーアクションを掲げた。

○キーアクション1 プラ使用量の削減

プラ製品の薄肉化・軽量化や詰め替え用製品の普及で日本は世界をリードする。ボトルからフィルム容器に変更するなど構造設計の変更やリターナブル容器の普及促進、新たな蒸着・コート層の開発などに注力する。

○キーアクション2 マテリアルリサイクル率の向上

使用済みPETボトルをリサイクルして再度使用する“ボトルtoボトル”の技術が開発され、社会実装が進む。プラ製品の単一素材化や廃プラの店頭回収などリサイクルシステムの確立などの検討が必要だ。

○キーアクション3 ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装

廃プラをエタノールなどの原料として活用するケミカルリサイクルを推進する。廃プラをモノマーまで戻す技術の開発・導入普及も目指す。リサイクルに伴う水環境負荷やエネルギー使用なども総合的に勘案し、環境負荷低減を図る。

○キーアクション4 生分解性プラスチックの開発・利用

生分解性プラの生産量はまだ少なく、生産コストも高い。機能性を向上させながら供給能力を増強し段階的に普及率を高めていく。海洋中で高い生分解性を有するプラスチックの開発普及も進める。

○キーアクション5 紙・セルロース素材の開発・利用

紙やセロハンの活用拡大によりプラ製品の一部代替が進んだ。今後は紙に耐水性などの機能を付与する技術開発や、セルロース素材を活用した製品の開発・普及、紙製品の再資源化率向上などが求められる。

これら五つのキーアクションは日本におけるプラスチックの使用状況と処理の現状、技術トレンドを分析した上で示したものだ。

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