米菓特集

◆米菓特集:20年、おつまみ需要けん引し微増 21年は若年ファン獲得の分岐点

菓子 2021.03.03 12195号 09面
米菓の生産ナンバーワンの新潟県では、毎年10~11月にあられ・おせんべいまつりを新潟市の道の駅ふるさと村で開催。昨年は開催が危ぶまれたが米菓メーカー15社が参加し、各社一押し商品がずらり一堂に会した

米菓の生産ナンバーワンの新潟県では、毎年10~11月にあられ・おせんべいまつりを新潟市の道の駅ふるさと村で開催。昨年は開催が危ぶまれたが米菓メーカー15社が参加し、各社一押し商品がずらり一堂に会した

 2020年(1~12月)の米菓市場は、生産金額ベースで2900億円弱の前年比微増で着地したとみられる。食品需給研究センター調べの生産量は、あられが前年を上回り、せんべいが前年割れとなりトータル1.1%減だったが、民間調査会社のデータでは、小売金額ベースで3%ほど上回った。

 各社取材したところ、土産や百貨店、コンビニエンスストア(CVS)は苦戦したが、食品スーパー(SM)・ドラッグストア(DgS)は大幅増加の傾向が見られ、チャネルごとのデータで差が見られる。また、商品アイテムの絞り込みによる生産集中や販促減少で、生産量と小売金額にかい離が見られたようだ。

 カテゴリーでは、特に外出自粛で家飲み・宅飲みによるつまみ需要が増加しており、柿の種や小袋アソート商品が好調。また、つまみだけでなく、おやつにも小腹満たしにも活用され、多様な使われ方でその価値が見直された。迎えた21年は、ニューノーマルといわれる新常態の環境が続き、つまみニーズは継続しそうだ。定番・ロングセラー商品の引き合いも強い一方で、大型の新商品は今春見られない。ただ長年、米菓業界の課題だった若年層へのアプローチは、各社で新しい切り口に挑戦する姿勢が見られ、長い目で見れば21年がターニングポイントの年となる可能性が出てきた。(山本大介)

 ◆市場動向 乱高下、激動の年

 食品需給研究センター調べの1~12月の米菓生産量を見ると、あられが前年比1.4%増、せんべいが同2.8%減となり、合計で同1.1%減の21万9437tとなった。家計調査は小麦粉を主原料とした商品も含まれるが、「せんべい」項目では3.2%減少した。なお、4~12月の年度ベースで見ても、4.6%減で推移している。

 一方、民間の調査では小売金額ベースで3%伸長。米菓上位の各社に取材しても、久しぶりの前年超え、特に柿の種商品を含むあられ(もち米)カテゴリーが好調だったようだ。ただ、堅焼きのせんべい(うるち米)やかきもち商品はダウントレンドを示した。

 全体的に2~5月は2桁伸長が続いた。このため、大手の亀田製菓、三幸製菓、岩塚製菓はもともと商品アイテム数を絞り込んでいたものの、安定供給のため主力品の生産に集中して対応。また栗山米菓は、逆に安定供給ができたことで面が広がった。

 6~7月には、買いだめ在庫増の影響で需要は落ち着き、夏場の全国的な猛暑・酷暑で後半失速。秋冬は、家飲み・宅飲みによるつまみ需要の好調が目立った。また、今年に入って2回目の緊急事態宣言は、1回目に比べると各社影響が少なかったという。3月期決算の企業は、前年急増の裏年となるため、3月単月の数字は追わない動きが大勢だ。

 なお、チョコレート菓子などがファミリーパックの大袋タイプで好調さをみせたが、米菓に限っては既に一袋の中に個包装された商品も多いことから、大袋の需要は大きくなかった。さらに、帰省が控えられたことやパーティー、来客へのおもてなしが減少し、逆に大袋の苦戦も見られた。ただ、三幸製菓は、チャック付きの商品が好調だったといい、自宅で自分用に好きなだけ食べる人のニーズに刺さったようだ。

 ●通年、金額で若干増

 全日本菓子協会がまとめている19年の米菓生産量は前年比0.1%増の22万1796t、生産金額は同2.8%増の2856億円、小売金額は同2.8%増の3809億円だった。

 20年の推定値は今年4月ごろに発表される予定だが、金額ベースでは、ほぼ前年並みから若干増で着地するとみられる。仮需やその後の落ち着きなど、月ごとに大きく乱高下した激動の年だったが、通年でならしてみると、大きな伸長は見られなかった。

 ◆業界展望 新規顧客創造へ新たな切り口

 米菓市場は50~60代の購買層がメーンで、当然重要なターゲット層として各社重点的に取り組んでいるが、次の消費を担う若年層の需要開拓が十数年来の長期的な課題となっている。画期的なヒット商品の不在なども重なって、堅調な市場だが次の飛躍へ決定打が見いだせない状況が続く。これまでも、決して手を抜いていたわけではないが、今年はより新しい切り口が次々に見られそうだ。亀田製菓は、「亀田の柿の種」のブランド力を生かし顧客と直接つながるプロモーションなどを通じて話題を喚起し、米菓へ興味を持ってもらう活動をさらに強化。加えて昨年から投下している「アラコレ」「パリッカ」といった洋風米菓の定番化に向け、引き続き新商品投入も視野に入れる。

 また、コロナ禍で収入が減る人も増え、経済の先行き不透明の中で、米菓だけでなく嗜好(しこう)品全体が競合ととらえ、おいしさの価値にプラスアルファを付加した商品として、今春「無限エビ」を発売。ゆるいオリジナルキャラクターのエビ神様を設定し、各個食パッケージに「ゆるっとお告げ」を絵柄に入れ楽しみを提供。手が止まらない無限ループのおいしさとともに遊び心の価値を付加した商品で若年層の心をつかむ。

 三幸製菓も、昨年秋にイラストレーター岸田メル氏を起用した同社初のアニメCMを放映。商品パッケージをあえて前面に出さず、アニメへの関心から米菓への興味を誘引する。今年も第2弾を放映する予定。また、新発田第5工場新設で、社会科見学通路を設置し、よりせんべいに触れる機会を増やす。

 岩塚製菓は地元出身のモデル・タレントの西山茉希を特命コラボアドバイザーに任命し、商品開発に意見を取り入れることで、従来の岩塚とは違った面を打ち出し新規顧客獲得を目指す。商品でも、CVS限定で話題となっていた「バンザイ山椒」の全チャネル販売や「おいしく出来ちゃいました。」シリーズを新規投入。一方で、ベビーせんべいのパイオニアとして、育児・育休支援「おこせん」ファンサイトで、職場復帰の手土産コミュニケーションツールに米菓を提案するなど、世代を超えたより深いファンづくりを目指している。

 栗山米菓は、キャラクターとのコラボを加速。アンパンマンやサンリオ、PEANUTSに加え、昨年社会現象となった鬼滅の刃や、現在人気上昇中の呪術廻戦といった話題の漫画・アニメ、YouTubeでおなじみのヒカキンとのコラボ企画など、米菓の新たなファン層を広げている。こうした各社の取組みが実を結び、長い目で見て将来の需要へつなげられるか、注目される。

 ●エコ包装化進む

 17年に各社健康を切り口とした米菓商品を相次いで投入し、18年に浸透しつつあるかに見えたが、嗜好品の米菓では健康切り口に足踏み感がみられる。ただ、嗜好品を選ぶ際に罪悪感を少しでも減らしたいという潜在ニーズがある中で、栗山米菓は引き続き「タニタ食堂監修」商品を展開すると同時に、新たに栄養機能食品(カルシウム)として、黒ごまを練り込んだ新味「おいしい玄米せんべいまろやか醤油味」を追加しアイテムを拡充する。

 三幸製菓も新商品「ちいさな雪の宿」で減塩、「ちいさなパリンコベジタブルコンソメ味」で14種類の野菜パウダーの素材を、素材派おつまみ「ダイズとアーモンド」でタンパク質摂取と糖質オフを訴求していく。

 岩塚製菓も日本のコメ100%の素材の安心感や、主力「岩塚の黒豆せんべい」で黒豆大豆の栄養と生地のおいしさによる塩分の少ない味付け(あっさりうす塩味は食塩相当量一枚当たり0.06g)といった健康価値を引き続きアピールしていく。

 また、亀田製菓や岩塚製菓が取組みを進めてきたスリムパッケージのエコ包装が、三幸製菓や栗山米菓の商品でも相次いで採用されている。商品の特性上割れるものについては、プラスチックトレーを外せないといった事情があるものの、環境負荷へ配慮する流れの中で、可能な範囲でエコパッケージへの取組みが進みそう。

 また、これまで包装を小さくしては売れなくなり元の大きさに戻すといったトライ&エラーが繰り返されてきたが、スリムパッケージはコロナ禍で売場の陳列回数を削減できるという新たなメリットが見えてきた。消費者もレジ袋削減の流れで、コンパクトな商品を求めるニーズも出ており、むしろプラス面が大きくなってきているようだ。

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