話題の飲食施設 大阪・天保山ハーバービレッジ 初の商業祝祭空間

1995.12.04 90号 10面

大阪の都心から鉄道で二〇分。「天保山ハーバービレッジ」は、大阪ウォーターフロントの観光スポットとして、レジャー客の来街動機を喚起している。この施設は大阪・港区の臨海部にあって、再開発によって誕生した商業・文化施設で、世界最大級のアクア施設「海遊館」を目玉に、「天保山マーケットプレース」「海遊館ホール」「広場」「駐車場」などが展開されている。また、海遊館南側に昨年11月、「サントリーミュージアム」がオープンし、新たな賑わいを加えたほか、この隣接地に明年4月の開業を目ざして、リゾートホテル「ホテルシーガル・てんぽーざん大阪」(地上一五階建て、九六室)を建設中で、これが完成するとさらに地域が活性化する見通しだ。しかし、ハーバービレッジは単体としての施設規模が小さいこと、施設への吸引力を海遊館に依存していることが大きく、また、再開発地域であるだけに施設周辺に商業集積がない。地域と一体化した賑わいに欠けるということだが、“海遊館ブーム”が一段落した現在、施設全体に対する集客をどう高めていくかが課題だ。

マーケットプレース二階にフードコート一二店と一般レストラン四店、三階に一般レストラン五店という展開で、利便性とクイックサービスが売りもののファストフードは、二階中央部分(正面入口からアプローチ)に展開している。

席数は一般レストランが計一三七〇席、フードコートが同五〇〇席のキャパシティで、売上げは前者が年間約二〇億円、後者が同一〇億円という実績(平成6年度)。

しかし、フードコートはともかくとして、一般レストランについては集客力が弱く、思惑どおりに業績が伸びていないという状況にある。

このため、オープン三、四年で経営不振により三店舗が撤退、現在このうちの二店舗部分が空室になっている。

二階フードコートの一角、海側に位置するベルデは昨年4月のオープンだ。中国料理店が営業不振で撤退してしまったので、それに代わっての出店だ。

店舗面積約五〇坪、客席数一五〇席。この店はカフェテリア方式で、ラーメン、サンドイッチ、カレーライス、スパゲティ、ハンバーグ、ステーキ、すし、弁当、サラダ、デザートなどを提供しているが、とくに今年は阪神大震災もあって、観光客などの来街が激減、売上げが大きくダウンした。

来店客は5月の連休以降回復してきているが、それでも一日一回転がやっとという状況だ。

客単価は昼一五〇〇円、夜三〇〇〇円で、月商八〇〇~一〇〇〇万円。

天保山ハーバービレッジは、今年7月で開業して満五年になる。海遊館を中心に延べ二〇〇〇万人以上の来街者があったが、今年1月、阪神大震災が起きたために観光客が激減し、営業不振に見舞われた。

しかし、7月に入って被災地の都市機能も回復しだしたこと、また、今年の夏は気象観測史上例のない猛暑だったことなどから来街者も増え、さらには10、11月は秋の観光、修学旅行シーズンということもあって、中高生などの団体客が通年並みに回復してきたという状況もある。

「ハーバービレッジの施設の中でも、とくに海遊館は世界的な施設ですから、京阪神においては定番の観光(見学)スポットとして、修学旅行の学生さんたちには人気が高く、この面での集客のウエートは大きいのです」(天保山ハーバービレッジマーケットプレース営業部)

マーケットプレースには土産品など物販店に加え、ファストフード機能のフードコートや和洋のレストランも展開しており、大阪ウォーターフロントの飲食ゾーンとしての魅力も訴求している。

マーケットプレースの飲食店舗はフードコート一二店、和洋、焼き肉レストラン一〇店の計二二店。

これら飲食店舗の利用は、海遊館からの流れが六、七割、三、四割が目的客という内容で、この利用形態は主に日中が近県などからの観光(見学)レジャー客、夜のディナータイムが地元大阪エリアからの客だ(マーケットプレース営業部)。

・経営/大阪ウォーターフロント開発(株)

・設立/一九八八年4月

・所在地/大阪市港区海岸通一‐一‐一〇

・電話/06・576・5555

・資本金/二〇億円

・出資構成/大阪市二五%、民間企業二七社七五%

・代表取締役社長/三宅理之

・施設オープン/一九九〇年7月

・敷地面積/一万二〇〇〇坪

・施設構成/海遊館=世界最大級(五四〇〇t)の容積をもつ水槽を中心に極地から熱帯までの環太平洋火山帯の各地域を再現した新しいタイプ(学習型)の水族館。総水量一万一〇〇〇t

天保山マーケットプレース=「商業」と「フェスティバル」を一体化させた日本初の「祝祭・商業空間」

広場=噴水広場、イベント広場、サンセット広場、天保山岸壁ボードウォーク、マーメイド広場

海遊館ホール=映画上映、講演会、演奏会など多目的ホール、エントランスビル二階東側。客席八三坪、二六八席、ステージ一八坪

・二階=フードコート/フライドチキン「ケンタッキーフライドチキン」、ハンバーガー「ドムドム」、ピザ「シカゴピッツア・ファクトリー」、どんぶり「丼丼亭」、アイスクリーム「ハーゲンダッツ」、サンドイッチ「ニック&ピック」、鉄板焼「トリトン」、すし「漁場」、ライスボール「コロコロ」、タコヤキ「KABUKI」、フルーツ&クレープ「OFS」、フローズンカクテル「ダイキリバー」計一二店

一般レストラン/アメリカンカジュアル「シスコ・ナインティカンパニー」、オーストラリア料理「メルボルンハウス」、スペイン料理「エル・プエルト」、グルメランド「ベルデ」計四店

・三階=一般レストラン/学生団体レストラン「クラッセ」、日本料理「彩菜」、焼き肉料理「食道園」、ドイツ料理「ハーフェンブルク」、カフェ&パスタ「ポポラーレ」計五店

フードコートは客席(共有)を囲む形で、「ケンタッキーフライドチキン」(KFC)、ハンバーガーチェーン「ドムドム」、丼専門店「丼丼亭」、アイスクリームチェーン「ハーゲンダッツ」など一二店が展開しており、リゾート感覚の内装が明るく開放的だ。

フードコートはマーケットプレースの二階正面からアプローチして、中央部分に位置しており、ワンフロアに集約されているので、来街者への訴求力は大きい。

また、フードコートの北側は桟橋に出るプロムナードデッキになっているので、客席への出入りも自由で、それだけにフードコートの利用動機は喚起される。客層はファミリー客やカップル、観光グループ客が主体だ。平均客単価四〇〇~五〇〇円。

しかし、フードコートでありながら、市街地や郊外ショッピングセンター内出店の施設などに比べ、大きな賑わいはない。

平日と土・日のギャップ、季節的にも冬場はシーズンオフになり、ピーク時と比較すると、客数は四、五割落ち込む。

このため、一般レストランを含め、年間通して落差を小さく、客数をどう吸引していくか、とくに飲食目的志向の客をどう増大させていくか、これが今後の施設運営の大きな課題だ。

三階フロアの焼き肉レストラン「食道園」も、以前の仏料理店が退店したので、一年前それに代わっての出店だ。

店舗面積四〇坪、客席数一三〇席。食道園は大阪地区を主体に一五店を展開しており、焼き肉レストランとしては知られた存在だが、経営はやはり厳しい状況にある。

観光グループ客が来店する場合、売上げは上昇するが、通常は客単価の向上する夜は平日で一回転、土・日で二回転という内容で、業績は目標月商の二〇〇〇万円を大幅に下回っている。

客単価は昼一五〇〇円、夜二〇〇〇円。客層は昼がファミリー客、夜がカップル客主体で、焼き肉弁当八五〇円、焼き肉セット一二〇〇円などがお勧めメニュー。

カルビ、ロース、タンなど単品メニューは二八〇円、三八〇円、五二〇円などで、客の来店動機を喚起するために、昨年11月から価格を二、三割切り下げ、低価格サービスを実施している。

和食の店「彩菜」はサントリー系の経営で、マーケットプレース唯一の和食レストランだけに、集客力は強く、目標数値をクリアしている。

客単価は昼一二〇〇円、夜一八〇〇円。月間売上げ一八〇〇万円。メニューは昼は定食、丼物、うどん類など一四品目(一二〇〇円)を提供するが、夜の主力メニューはしゃぶしゃぶ(リブロース)の食べ放題二九八〇円、うどんすき二三〇〇円など。

低価格志向でディナー客の吸引に成功しているのが、業績アップの最大要因で、夜は目的志向の客が大半だ。

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