製粉特集
◆製粉特集:提案営業やNB提供で成長
製粉業界は、新たな局面を迎えようとしている。人口減少、少子高齢化による国内市場の減少が見込まれているためだ。厳しい環境の中でも、製粉メーカーは、それぞれの強みを生かした提案営業による顧客の売上げ拡大への貢献や、特徴のあるNB製品の提供などで、新しい需要の創出を図っていくとともに、海外市場への取組みの強化など多面的な活動で縮小傾向に歯止めをかける狙いだ。(久保喜寛)
◇小麦粉の需給動向=18年度生産量は0.2%減467万t
農林水産省生産局貿易業務課調べによる「製粉工場における玄麦及び小麦粉の月別需給動向」によると、18年度(4~3月合計)の小麦粉生産量は467万2000tで前年比0.2%減、同販売量は467万2000tで同0.2%減となった(表2)。なお、同期の玄麦買入数量は577万3000t(同2.9%減)、同加工量は586万4000t(同1.3%減)、同期末在庫は136万1000t(同9.2%増)となっている。
一方、食品需給研究センターが発表した18年度(1~12月合計)の小麦粉製品の生産状況は表3の通り。19年度の生産推移(1~5月累計の原料小麦粉使用量)は次の通り。
〈パン類〉▽食パン25万2595t(前年比1.9%増)▽菓子パン17万5109t(同1.2%増)▽その他パン9万2631t(同5.1%増)▽学給パン1万0460t(同0.7%減)▽パン合計53万0795t(同2.1%増)〈生麺類〉▽生うどん7478t(同1.5%減)▽ゆでうどん9万1466t(同7.3%減)▽生中華麺6万7741t(同0.2%減)▽ゆで中華麺3万9086t(同6.8%増)▽蒸し麺4万3134t(同3.5%減)▽ギョウザなど皮類6084t(同0.2%増)▽生そば6354t(同1.0%増)▽ゆでそば2万3388t(1.8%減)▽生麺類合計28万4731t(同2.4%減)〈乾麺類〉▽うどん1万0084t(同1.0%減)▽ひらめん1655t(同3.3%増)▽ひやむぎ7913t(同14.3%減)▽そうめん1万2783t(同0.5%減)▽手延うどん1223t(同2.3%減)▽手延ひやむぎ4453t(同3.6%増)▽手延そうめん2万7661t(同3.1%増)▽干し中華7530t(同0.4%減)▽日本そば1万3746t(同3.0%増)▽乾麺合計8万7048t(同0.1%減)
〈即席麺類〉▽袋麺9万0159t(同1.8%増)▽カップ麺9万3431t(同8.3%増)▽即席麺合計18万3590t(同5.0%増)〈パスタ類〉▽6万5384t(同4.2%増)〈プレミックス製品ベース〉▽加糖9万1074t(同6.5%増)▽無糖6万4571t(同0.7%増)▽プレミックス合計15万5645t(同4.1%増)〈ビスケット類〉▽ハード系1万6996t(同1.7%減)▽ソフト系(クッキーを含む)3万5004t(同9.1%減)▽クラッカー系3415t(同5.0%減)▽乾パン1336t(同5.2%増)▽パイ加工その他4万7891t(同2.7%増)▽ビスケット合計10万4305t(同4.8%減)
◇売渡麦価と粉価
●売渡価格=5期ぶり1.7%引き下げ
農林水産省は19年3月8日、4月期の輸入小麦政府売渡価格について、主要5銘柄加重平均(税込み価格)で1t当たり5万4630円、前期(18年10月期5万5560円)に比べ1.7%引き下げると発表した。引き下げは、16年10月期以来、5期ぶり。
これは算定基礎となる直近6ヵ月(18年9月第2週~19年3月第1週)の平均買付価格が、小麦の国際価格に大きな変動がない中、海上運賃が下落したことで、前期に比べ低下したこと、さらにTPP11協定に基づき、カナダ・豪州産小麦については、マークアップの引き下げが適用されている。
売渡麦価の改定を受けて、製粉メーカー各社は、日清製粉グループが4月8日に価格改定を発表した。その後は、日本製粉、昭和産業、日東富士製粉、千葉製粉、奥本製粉などメーカーが続いた。大手4社の改定額(25kg当たり・税抜き価格)は、強力・準強力粉が20円の値下げ、中力・薄力粉が10~15円値下げ、国内産100%小麦粉が25円値下げとなっている。7月10日出荷分から実施している。
●輸入小麦=アンバランス解消が課題
輸入小麦については、TPPから米国が脱退したことが一番の問題となっている。輸入小麦の約半分が米国という環境の中で、マークアップの引き下げが、米国だけ行われないというアンバランスな状況となっているためだ。このままでは、混乱が懸念されるため、米国の動向を注視しつつ、アンバランスを解消するような働きかけを業界としても行っていく必要がある。
製粉業界直近の状況は、パン、麺、菓子など主要取引先カテゴリーの伸び悩みの影響を受けて横ばいから微減で推移しているもよう。また、6月から食品の値上げが相次いだことや、梅雨寒の天候要因などで、生活者の消費マインドが冷え込んでいることもマイナス要因となっている。
今後の見通しとして人口減少、少子高齢化の影響で国内の小麦粉の市場は縮小することが予想されている。この状況下、国際貿易協定の影響で、関税の撤廃や引き下げで、パスタやビスケットなどの二次加工品の輸入が増えてくると、ますます国内需要が厳しくなってくる。そのため、製粉業界の生産設備が過剰になってくることも想定されることから、製粉メーカーの業務提携や再編といったものが進む可能性がある。
不安要素があるものの、パン、麺、菓子カテゴリーでヒット商品を生み出す環境の基盤を支えているのが製粉メーカーなので、各社は提案営業や、NB製品を提供していくことで、成長を図りつつ、各業界の発展に貢献していく構えだ。
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