1本2万円のボトルウオーターも 英国で水を楽しむライフスタイル広がる
英国では近年、PETボトル入りの水を購入する人々が増えている。物価上昇の続く中、生活費に特に余裕があるわけでもない。また、環境保護に無関心なわけでもない。PETボトルの水の購入量が増えている背景と商品について紹介する。(※以下、PETボトル入りの水をボトルウオーターと呼ぶ)
歴史が長い英国のボトルウオーター
英国のボトルウオーターの歴史は日本よりも長いと思われる。BCCリサーチブログによると、英国で最初にボトルウオーターが登場したのは17世紀から18世紀ごろといわれ、スパ用の飲料水や水を使ったセラピーに使われたとのことだ。
英国民の健康意識の高まりが背景に
2018年に500人を対象に実施された調査によると、イングランド地方では回答者の15%が「ボトルウオーターをよく飲む」と答えており、34%が「水道水を利用する際にフィルターを使っている」と答えている。2020年に実施されたYouGovの調査によると、25歳から59歳の回答者の約30%が「ボトルウオーターを毎日飲む」と回答している。60歳以上では26%が利用しているとの結果が出ている。
両者の調査で挙げられたボトルウオーターを利用する主な理由は「水道水には味がある」「水道水の汚染が気になる」であった。加えて、ミネラルウオーターの方が健康的であるという認識の広がりも否定できない。英国では、肥満や糖尿病が問題化しており、国民の健康意識の高まりが顕著である。そのため、砂糖入り飲料水の代替品として利用する消費者も多いと考えられる。
参考リンク:
Who drinks bottled water every day? | YouGov
Do people drink the tap water in the UK? – EN
海外の湧き水や氷山水も
ボトルウオーターの値段はさまざまである。高級スーパーマーケットのWaitroseは、ローズマリーの抽出液入り湧き水のPETボトル(750ml)を3.45ポンド(約556円)で売り出している。また、高額の商品では、チリ産の湧き水Apsu(750ml)が130ポンド(約2万940円)で販売され、味わう際の最適温度は4度Cという指示まである。他にも、スロベニア産の25ポンド(約4030円)や北極の氷山水の120ポンド(約1万9350円)などがある。
ボトルウオーターとはいえ、環境への意識の高まりから、プラスチックボトルの使用にちゅうちょする人々も多い。リサイクル可能なボトルを選ぶ消費者も多い。
いずれにしても、日本人にとっては考えられないような価格で売られているボトルウオーターではあるが、欧州大陸には「水のソムリエ」という職業もあるほど定着している。欧州人にとって、水をワインのように楽しむというライフスタイルが当たり前とも言える。英国もそうなりつつあるのか?今後が楽しみである。(フードライター ラッド順子)