自転車で1日かけてレストラン巡り フルコースプログラムがオランダで人気
オランダで人気の「Happen en Trappen」は訳すと「食べて、自転車に乗って」という意味。食べながら自転車に乗るの?…と思われるかもしれないが、実際の内容は「決められたルートを回りながら、ルート内に組み込まれているレストランで食事をし、目的地を回って帰る」というアウトドアのプログラム。走行距離が長いので、1日がかりの行程だ。
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自転車ルートは約200種類
2006年に始まったこのプログラムは、2022年現在でオランダとベルギーで約200種類の自転車ルートが考案され、加盟レストランは約850軒。利用者からのレビューは、満足度98%となっていて人気を集めている。利用者は事前にオンラインでオランダ各地に散らばるルートの中から走行距離と出発地の条件を選択しルートを確定し、参加費を支払って申し込み完了。主催団体からの返信メールを確認して当日を待つ。
当日は、指定された時間に集合場所へ出向き、お茶とケーキをいただきつつルートの説明を受けプログラムは開始される。指定レストランの利用時間は決められており、大幅な遅れがある場合はレストランへ連絡が必要だ。
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道中は前菜、スープ、メーンディッシュ、デザートと各料理ごとにレストランを訪ね、指定終了時間までひたすら走る。食事はたいてい二択用意されており、その料金は参加費に組み込まれているが、ドリンクは別料金となる。
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現在、参加費は42.95ユーロ。走行距離は40キロメートルから60キロメートルぐらい。また、テーマ別のルート(カルチャー、サイクリングとゴルフのセットといったスポーツ)などもあり 目的に合わせたサイクリングができるのもうれしい。
前菜からデザートまで
今回、実際に40キロメートルコースに参加してみた。指定の時間に集合場所に行き、受付。バウチャー(クーポン券)とサイクリングルートを受け取る。走行距離は、最初は長く各ポイント(レストラン)を経過するごとに 次のポイントまでの走行距離は短くなっていく。
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スタート前は、コーヒータイム。コーヒーを飲みながらルートを確認する。その後、手始めに約15キロメートル走って、体を慣らす。いきなりの15キロメートルはあったが、野原や史跡などを巡っているとあっという間に次なる目的地となるレストランに到着。
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15キロメートル走行後の前菜の味は、格別だった。こちらの前菜では、カルパッチョかサーモンのサラダの二択。最初のコーヒー以外の飲料はすべて別料金となる。
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前菜の後、また12キロメートルほど走って、スープの店へ。このスープをいただいたレストランは、福祉事務所が経営するレストランで、従業員のほとんどが先天性疾患保持者の方々であった。一般企業では労働が難しいケースが多い彼らにとって、このような仕事の場が社会生活に参加できる場所。みな生き生きと働いている。
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スープの後、メーンディッシュへとひたすら走り、川辺のレストランで早めの夕食。夕食後は、最後のデザートまで走り、デザートが終わると出発地点へ帰ってゴール。1日中屋外で過ごすことの爽快感と疲労でゴール後は感無量だった。
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コロナ太り解消にも
途中、普段は車で通りすぎてしまうような場所を見たり、地元の人しか通らない道を走ったり、発見も多い。「コロナで経営の厳しい飲食業界」と「コロナ太り解消」への国民の意識も手伝って、特に昨年から人気はうなぎのぼりのようだ。
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平地の多いオランダだからできる長距離ルートではあるが、距離を調整すれば同じコンセプトで、行楽シーズンに日本でも楽しめるのではないかと思っている。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)