「Amazon Fresh」が英国で拡大中 レジなし店舗で不思議な買物体験

ロンドン西部イーリング地区に「Amazon Fresh」(米国では「Amazon Go」の名称で営業中)という、レジなしの実店舗が3月にオープンした。米国に続く海外展開で、英国内でも初の出店となる。初出店から半年が経ち5店舗がオープンし、評判も上々のようだ。

レジに並んだり商品スキャンも不要

米国で「Amazon Go」がオープンした時には「無人コンビニタイプ店舗」などと紹介されていたが、米国でも英国でも店内には、カスタマーサポート、商品補充、品質管理などをするスタッフがいる。

「Amazon Go」「Amazon Fresh」でも、一番の特徴はレジがないこと。すでに英国ではセルフレジがスーパーやコンビニエンスストアで普及しており、来店者が購入商品を自分でスキャンして会計することには慣れている。「Amazon Fresh」では、さらにその作業の必要なく、商品を自分の買い物袋やポケットに直接入れて店を出ればよいだけだ。レジに並んだり、自分で商品をスキャンする必要がない。

店舗は緑が基調に。入店ゲートにはサポートスタッフがいて、わからない際には助けてくれる

万引きをしているような感覚に

筆者も「Amazon Fresh」に初めて買い物へ行った際、多くの人がレビューサイトに書いているように“万引きをしているような”気持ちになった。棚にある商品をただ服のポケットやバックに入れるだけで、お金を支払わずに外に出て行くのは、新しくて少し不思議な体験だった。

「Amazon Fresh」店舗に書いてあるモットー<Just walk out shopping(ただ歩いて出て行くだけの買い物)>

システムとしては、まず入店の際にAmazonのアプリをダウンロードし2次元コードをスキャン。多数のカメラと商品棚の重量センサーがどの商品を購入したか確認し、数分後にAmazonのアカウントで自動に支払いがなされている、というもの。

確かにレジで待ったり、自分でスキャンする必要がないので、非常に便利かつノンストレスだ。「Amazon Fresh」に慣れてしまうと既存の買い物に戻れないかもしれない。

野菜や果物など生鮮の品揃えも多く

商品のラインアップは、英国の「Tesco Express」「Sainsbury’s Local」などと似ており、野菜・果物・肉・魚などの生鮮食品、インスタント食品や飲料、ベーカリー・サンドイッチ、コーヒーなど。価格帯も他社と比較してみても同じくらいに設定されていた。

日本のコンビニと比べてみると、店舗サイズは少し大きめ。野菜や果物などの生鮮の品揃えが多く、日本のコンビニと小型スーパーの中間くらいのイメージといったらいいだろうか。また本や雑誌コーナー、トイレの設置はされておらず、イートインコーナーもない。

野菜・果物コーナーが入口の目の前に広がる

「Amazon Fresh」は今後も英国で拡大する予定という。米国の「Amazon Go」はより大きい店舗もすでに展開しており、Amazonは北米と英国で270店舗以上を持つ「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」も傘下に収めている。英国でオンラインショッピングのトップに立つAmazonが、いよいよ実店舗ビジネスでも大きく動き出したといえそうだ。

参照サイト:
What’s Amazon’s game plan with Fresh stores? The Drum

ただ実店舗は1店をオープンするのに時間も費用も掛かる。Amazonは実店舗での実績を通して、レジなしシステムの技術を競合が導入するように仕掛ける可能性も指摘されている。どちらにしても、今後のAmazonの動きで既存の小売店が大きく変化する可能性がありそうだ。(フードライター 武田高建)