全国外食産業・業務用卸特集

全国外食産業・業務用卸特集:フードサプライ 「生産者支援」などエモーショナル消費喚起

卸・商社 2020.08.15 12097号 10面
途切れることなく自動車が訪れる

途切れることなく自動車が訪れる

もったいない野菜セット(内容は産地の状況などにより異なる)

もったいない野菜セット(内容は産地の状況などにより異なる)

自動車を止めるだけでスタッフが積み込み、非接触で安心して購入できる

自動車を止めるだけでスタッフが積み込み、非接触で安心して購入できる

感謝や激励の便りが多数寄せられた

感謝や激励の便りが多数寄せられた

竹川敦史社長

竹川敦史社長

 ◇業務用・家庭用流通の壁に風穴

 コロナ禍の中で、業務用食材の新たな販売方法として大きな注目を浴びたのが、業務用野菜卸のフードサプライが展開した「ドライブスルー八百屋」だ。

 「ドライブスルー八百屋」は、外食店の休業・時短営業などで行き場をなくした外食産業向けの野菜などを一般消費者にドライブスルー方式で販売する形態だ。スタートしたのは、政府が7都府県に緊急事態宣言を発令した2日後の4月9日。市販用と業務用という流通の壁に風穴を開けた、その取組みはコロナ禍で大打撃を受け、BtoBのみの販売から、BtoCも併せ持った販売への模索を始めた業務用食品卸も熱い視線を送っている。フードサプライの「ドライブスルー八百屋」の取組みを紹介する。

 ●ドライブスルー八百屋 最大で全国22ヵ所展開

 「思ったより自動車が多い」「県外ナンバーが多い」「高級車が多い」というのが、フードサプライが京浜島物流センターで行っていた「ドライブスルー八百屋」取材時の感想だ。普段であれば、車の通行量もほとんどない、緊急事態宣言が解除されてしばらくたった週末の午前中のことだ。その人気は、コロナ禍における特需ではなく、しっかりと消費者に認知され、リピーターとして定着している様子が感じられた。

 フードサプライは外食店約5000軒を得意先に持つが、そのうち4000軒が緊急事態宣言により休業となった。そして、外食向け野菜は行き場を無くした。その野菜を「もったいない野菜セット」(5000円・税込み)として、人との接触を最小限に抑えたドライブスルー方式で一般消費者向けに販売した。

 竹川敦史社長は「食品スーパーは、特需で野菜の相場も上がっていた。しかし、外食向けはまったく売れなくなった。特にホテル・レストランでしか使われない高級メロンなどのフルーツ、パクチー、ケールなどは行き場をなくしていた」と当時の状況を語る。同社の売上げは、2月後半から販売が目減りしだし、3月後半には前年比30%減、4月に入ると半減。一方で、在庫は膨れ上がっていった。

 特需の食品スーパーも、消費者にとっては密になること、青果は触って選んで買うということが消費者心理として敬遠したい時でもあった。かといってネット通販は、いつ届くかわからない状況だった。しかし、消費者はステイホームで基本的に家におり、時間を持て余している状態だった。そのため「ドライブスルー八百屋」に買い物に行くことが、レジャーの代替需要にもなった。

 価格は、消費者が時間を使って自ら自動車で引き取りに来る、つまり物流費を消費者が負担することから、シェアリング・エコノミーの考えで、食品スーパーの価格よりもお値打ちな設定にした。ネットの予約注文だけでなく、現地での現金売りも行った。さらに、自動車を持っていない人のためには、得意先の居酒屋チェーンの軒先での販売も行うなど、「ドライブスルー八百屋」は新たな販売形態として確立されていった。

 背景には、「産地応援」「生産者支援」といった消費者のエモーショナル消費を喚起したこともある。これまで外食店に配達すると「ご苦労さん」「お疲れさま」といったあいさつはあったが、「ドライブスルー八百屋」の現場では、「ありがとう」「頑張ってね」といった感謝の言葉や差し入れがあったりもするという。また、メールでも激励の言葉が多数寄せられた。

 「ドライブスルー八百屋」は、全国の同社提携先とのタイアップにより、最大で全国22ヵ所にまで広がった。1日当たり最大で5500人(台)を集めた。新型コロナの影響で観光客が激減し、壊滅状態だった北海道の青果卸では、「ドライブスルー方式で前年を超えた」。また、異業種(ジーンズショップ)との提携で行った「ドライブスルー八百屋」では、本業のジーンズショップの認知度が上がり、緊急事態宣言解除後、過去最高の売上げを上げたなどの事例も出ている。

 また、「ドライブスルー魚屋」「ドライブスルー肉屋」へと派生していった。フードサプライは、それらのサイト開設の手伝いなどを行っている。「ドライブスルー八百屋」のサイト閲覧数は200万ページビュー(PV)を超え、そのサイト内にリンク先を付けた方が効率よく認知度を広げられるからだ。他の農産物の生産者からの連絡も急増している。例えば生花は、ホテルのパーティー需要やナイト業態が営業停止状態で需要が失われていた。同社は生産者から生花を買い取り、母の日にはカーネーション、父の日にはヒマワリをプレゼントするなどのサービスを行った。これらの心遣いが人気継続の一因でもある。竹川社長は「ドライブスルー八百屋は、社員が創造力を発揮できる場でもある」と新事業への確かな手応えを感じている。

 爆発的なヒットを飛ばしたように見える「ドライブスルー八百屋」も、新型コロナによる売上げ落ち込みの半分ほどのカバーでしかない。竹川社長は「あくまでBtoBが本陣。だが、外食が元に戻らなくても事業を継続できる取組みが必要。そのためのドライブスルー八百屋。何があっても日本の野菜を守る体制をつくる」と意気込む。

 ●宅配「センチョク」 野菜・肉・魚卸4社タッグ

 フードサプライの外食向け食材生産者応援事業は「ドライブスルー八百屋」だけにとどまらない。5月22日には、宅配事業にも進出。オンラインモール「新鮮直送卸・センチョク」の運営を開始した。

 「センチョク」は、フードサプライと鮮魚・海産物卸の山治、かいせい物産、精肉卸のプライムミートの業務用食材卸4社がタッグを組んで、こだわりのプロ向け食材を一般家庭に届ける宅配事業だ。まずは世田谷区限定でスタートし、目黒区、品川区、中央区、千代田区、港区、渋谷区から23区全域と横浜市、川崎市へのフォロー体制を進展させている。

 「センチョク」は、コロナ禍で売上げが激減しただけでなく、商品がはけなく困っている生産者、卸業者の活性化はもちろん、消費者にとっては、普段買えない、おいしく珍しい外食店でしか食べられない専門性の高い食材がネットで購入できる。そして、豊洲市場に当日並ぶ商品が、その日のうちに届く鮮度の高さが特徴だ。

 高い鮮度で、届けられるのは「ラストワンマイル」まで行き届く、きめ細かな対応ができる物流網があってこそ。配送料は1回何個でも500円、4社の商品の混載納品も可能だ。注文平均客単価は約8000円と高価格。これは野菜だけでなく、肉も魚もといったついで買いが多いからだ。注文比率も野菜対肉対魚が3対3対3とバランスが取れている。肉屋、魚屋はそれぞれ専用の調味料など加工食品も取り扱っており、調味料もセットで注文できる。

 「センチョク」のリピート率は35%と高い。竹川社長は「すべてそれぞれ自社物流で、同じエリアには常に同じ配達員が届ける。配達員の接客の良さが、お客さまから好感を持っていただけている」とその理由を語る。

 竹川社長は「BtoB市場は垣根があり、他分野からの参入は難しい。しかし、BtoC市場は、ライバルは多いが、参入障壁は低い」と語る。一般的には業務用と家庭用では、流通の壁は厚いと思われているが、「ドライブスルー八百屋」はその壁に風穴を開けた。竹川社長は、もともとは外食企業で業態開発を手掛け、その後独立、焼肉店のチェーン展開とともにコンサルティング業務を行っていた。野菜の流通に興味を持ち、29歳で焼肉チェーンを売却。そして10年前にフードサプライを創業した経歴を持つ。竹川社長は、「新しい野菜の流通を作りあげる」ため新たな市場を開拓していく考えだ。

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