全国外食産業・業務用卸特集

◆全国外食産業・業務用卸特集:コロナ禍の今を生き抜く BCP策定と運用が不可欠

卸・商社 2020.08.15 12097号 01面
東京の観光名所・浅草雷門。7月の4連休も人はまばら。外食ニーズのけん引を期待されていた訪日外国人観光客の姿はまったくない

東京の観光名所・浅草雷門。7月の4連休も人はまばら。外食ニーズのけん引を期待されていた訪日外国人観光客の姿はまったくない

昨年までは訪日外国人観光客でにぎわいを見せていた。今年はさらなる増加を期待されていたが

昨年までは訪日外国人観光客でにぎわいを見せていた。今年はさらなる増加を期待されていたが

 ◇当たり前が当たり前でなくなった

 ●外食企業 大量閉店相次ぐ 新事業領域に活路

 コロナ禍で外食企業に大きな地殻変動が起きつつある。5月、居酒屋「甘太郎」や回転寿司チェーン「かっぱ寿司」などを展開するコロワイドは、居酒屋業態を中心に直営店196店舗を9月までに閉店。居酒屋「和民」「ミライザカ」などを展開するワタミは65店舗を21年3月までに閉店。「金の蔵」の三光マーケティングは今6月期中に40店舗を閉店。「はなの舞」のチムニーは20店舗、総合居酒屋の老舗「つぼ八」も12店舗を閉店するなど、居酒屋業態の不採算店閉店の報道が相次いだ。

 居酒屋業態だけではない。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」、和食ファストフード「天丼てんや」などを展開するロイヤルホールディングスは21年末までに約70店舗を閉店。ファミリー層をターゲットとしたファミリーレストラン「ジョイフル」も直営200店の閉店を予定、そして牛丼チェーン「吉野家」、セルフ方式讃岐うどんチェーン「はなまる」などを展開する吉野家ホールディングスも国内外で150店舗を今2月期中に閉店など、ランチを主とする業態もコロナ禍の打撃を受けた。

 新業態への参入の動きもある。前述のワタミは、テークアウト主体の唐揚店業態「から揚げの天才」の店舗展開を加速するほか、鹿児島県の食肉加工・卸業のカミチクグループと合弁会社を設立し、焼肉事業を新展開。5月には東京・蒲田に「かみむら牧場」をオープンした。5年後国内200店舗など、国内外へのチェーン展開を目指す。

 新事業領域への参入も続いている。コロワイドは、給食市場(介護施設・病院)に参入。外食事業で培った高品質な食事・サービスを生かし給食事業の展開を目指す。「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングス、「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングスなど、家庭用冷凍食品市場への参入に活路を求める企業もある。

 コロナ禍でも介護施設給食は、外食産業の中でも影響を受けなかった数少ない業態だ。そして、滞在型の高齢者施設は365日×3食が見込める安定市場でもあり、超高齢化社会の進展で人口(胃袋)が増える唯一の成長が見込める市場でもある。家庭用冷凍食品もコロナ禍の巣ごもり消費で伸び、新たなリピーター層を獲得した。そして、「大阪王将羽根つき餃子」で知られるイートアンドのような成功事例もある。同社は、飲食店と食品販売の両輪経営を着実に進め、現在は単品で100億円を超える売上げを実現している。

 ●業務用卸 BtoCへ参入も 新視点でビジネスモデル模索

 業務用卸もコロナ禍を契機に従来のBtoBだけではなく、BtoCへの参入事例も出てきている。成功事例は、業務用青果卸のフードサプライが展開した「ドライブスルー八百屋」(10面参照)だ。ドライブスルー方式の販売方法は、業務用食品卸の泉平(兵庫県)が「ドライブスルーもったいないマルシェ」「ドライブスルー肉屋」、関東食糧(埼玉県)が「ドライブスルー大宮マルシェ」などと広がり、それぞれ一定の成果を挙げた。また関東食糧は、料理レシピを紹介し、業務用食材をセットもしくは単品で購入できるECサイト「Food Value Pro Second」を立ち上げた。同サイトはBtoCも対象としたものだ。

 ウィズコロナがいつまで続き、そしてアフターコロナの社会は、元の生活に戻るのか、新たな生活様式が根付くのかはまったく不透明だ。しかし、緊急事態の今を生き抜くためにはBCP(事業継続計画)の策定と運用が不可欠だ。外食産業と、その産業を得意先とする業務用食品卸の場合、現実的に中核となる事業の早期復旧は困難だ。まずは社員・得意先への感染予防を徹底し、そしてあらゆる持ち駒を活用して、少ない投資で打てる手はすべて打ち、自社ならではの武器を身につけていくしかない。それを企業価値の向上につなげ、本来の中核事業の機能により磨きをかけていくことが必要だ。前述の事例は、そのための一つの取り組みだ。もうかつて当たり前のようにあった宴会・パーティー、団体旅行、インバウンドなどの本格復活は当面見込めない。それに、繁華街の好立地も好立地ではなくなった。新たな視点でのビジネスモデルの模索が必要だ。

 ●19年度業務用食品卸市場規模 前年並み推移 3兆9670億円見込む

 2019年度の業務用食品卸市場規模は、前年並みの3兆9670億円(本紙推計)と見込む。上期は順調に推移したが、下期は10月の消費増税の影響は限定的だったものの、台風19号の首都圏直撃。そして3月には、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった。日本フードサービス協会の会員社を対象とした「外食産業市場動向調査」によると3月は前年比17.3%減と東日本大震災の減少幅(同10.3%減)を上回る減少幅となっている。特に3月は歓送迎会など宴会・パーティーの需要が大きく見込める時であることと、安定市場のはずの学校給食の休校に伴う中止、テレワークなどによる事業所給食の減少、イベントの中止に伴う食事需要の消滅などで、前半の貯金をすべて使い果たした。エリア別では、関東45%、関西19%、中部・北陸14%、九州・沖縄9%、北海道・東北7%、中四国6%と見込む。

 (金原基道)

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