全国外食産業・業務用卸特集
◆全国外食産業・業務用卸特集:コロナ禍の今を生き抜く BCP策定と運用が不可欠
◇当たり前が当たり前でなくなった
●外食企業 大量閉店相次ぐ 新事業領域に活路
コロナ禍で外食企業に大きな地殻変動が起きつつある。5月、居酒屋「甘太郎」や回転寿司チェーン「かっぱ寿司」などを展開するコロワイドは、居酒屋業態を中心に直営店196店舗を9月までに閉店。居酒屋「和民」「ミライザカ」などを展開するワタミは65店舗を21年3月までに閉店。「金の蔵」の三光マーケティングは今6月期中に40店舗を閉店。「はなの舞」のチムニーは20店舗、総合居酒屋の老舗「つぼ八」も12店舗を閉店するなど、居酒屋業態の不採算店閉店の報道が相次いだ。
居酒屋業態だけではない。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」、和食ファストフード「天丼てんや」などを展開するロイヤルホールディングスは21年末までに約70店舗を閉店。ファミリー層をターゲットとしたファミリーレストラン「ジョイフル」も直営200店の閉店を予定、そして牛丼チェーン「吉野家」、セルフ方式讃岐うどんチェーン「はなまる」などを展開する吉野家ホールディングスも国内外で150店舗を今2月期中に閉店など、ランチを主とする業態もコロナ禍の打撃を受けた。
新業態への参入の動きもある。前述のワタミは、テークアウト主体の唐揚店業態「から揚げの天才」の店舗展開を加速するほか、鹿児島県の食肉加工・卸業のカミチクグループと合弁会社を設立し、焼肉事業を新展開。5月には東京・蒲田に「かみむら牧場」をオープンした。5年後国内200店舗など、国内外へのチェーン展開を目指す。
新事業領域への参入も続いている。コロワイドは、給食市場(介護施設・病院)に参入。外食事業で培った高品質な食事・サービスを生かし給食事業の展開を目指す。「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングス、「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングスなど、家庭用冷凍食品市場への参入に活路を求める企業もある。
コロナ禍でも介護施設給食は、外食産業の中でも影響を受けなかった数少ない業態だ。そして、滞在型の高齢者施設は365日×3食が見込める安定市場でもあり、超高齢化社会の進展で人口(胃袋)が増える唯一の成長が見込める市場でもある。家庭用冷凍食品もコロナ禍の巣ごもり消費で伸び、新たなリピーター層を獲得した。そして、「大阪王将羽根つき餃子」で知られるイートアンドのような成功事例もある。同社は、飲食店と食品販売の両輪経営を着実に進め、現在は単品で100億円を超える売上げを実現している。
●業務用卸 BtoCへ参入も 新視点でビジネスモデル模索
業務用卸もコロナ禍を契機に従来のBtoBだけではなく、BtoCへの参入事例も出てきている。成功事例は、業務用青果卸のフードサプライが展開した「ドライブスルー八百屋」(10面参照)だ。ドライブスルー方式の販売方法は、業務用食品卸の泉平(兵庫県)が「ドライブスルーもったいないマルシェ」「ドライブスルー肉屋」、関東食糧(埼玉県)が「ドライブスルー大宮マルシェ」などと広がり、それぞれ一定の成果を挙げた。また関東食糧は、料理レシピを紹介し、業務用食材をセットもしくは単品で購入できるECサイト「Food Value Pro Second」を立ち上げた。同サイトはBtoCも対象としたものだ。
ウィズコロナがいつまで続き、そしてアフターコロナの社会は、元の生活に戻るのか、新たな生活様式が根付くのかはまったく不透明だ。しかし、緊急事態の今を生き抜くためにはBCP(事業継続計画)の策定と運用が不可欠だ。外食産業と、その産業を得意先とする業務用食品卸の場合、現実的に中核となる事業の早期復旧は困難だ。まずは社員・得意先への感染予防を徹底し、そしてあらゆる持ち駒を活用して、少ない投資で打てる手はすべて打ち、自社ならではの武器を身につけていくしかない。それを企業価値の向上につなげ、本来の中核事業の機能により磨きをかけていくことが必要だ。前述の事例は、そのための一つの取り組みだ。もうかつて当たり前のようにあった宴会・パーティー、団体旅行、インバウンドなどの本格復活は当面見込めない。それに、繁華街の好立地も好立地ではなくなった。新たな視点でのビジネスモデルの模索が必要だ。
●19年度業務用食品卸市場規模 前年並み推移 3兆9670億円見込む
2019年度の業務用食品卸市場規模は、前年並みの3兆9670億円(本紙推計)と見込む。上期は順調に推移したが、下期は10月の消費増税の影響は限定的だったものの、台風19号の首都圏直撃。そして3月には、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった。日本フードサービス協会の会員社を対象とした「外食産業市場動向調査」によると3月は前年比17.3%減と東日本大震災の減少幅(同10.3%減)を上回る減少幅となっている。特に3月は歓送迎会など宴会・パーティーの需要が大きく見込める時であることと、安定市場のはずの学校給食の休校に伴う中止、テレワークなどによる事業所給食の減少、イベントの中止に伴う食事需要の消滅などで、前半の貯金をすべて使い果たした。エリア別では、関東45%、関西19%、中部・北陸14%、九州・沖縄9%、北海道・東北7%、中四国6%と見込む。
(金原基道)
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