イングリッシュ・ブレックファストを食べない英国の若者が続出 朝食も健康志向に

1950年代に生まれた英国の伝統的朝食であるイングリッシュ・ブレックファストがいま危機を迎えている。一度もこれを食べたことがない英国育ちが増えているのだ。イングリッシュ・ブレックファスト離れの理由と朝食のトレンドを紹介する。

伝統のイングリッシュ・ブレックファストとは

一般的に、英国のレストランで「イングリッシュ・ブレックファスト」を注文すると、ソーセージ、ベーコン、卵、マッシュルーム、トースト、トマト、ブラック・プディング(主原料は豚の血液)、豆のトマトソース煮が皿に盛られてテーブルに運ばれる。英国人は、これを「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」と呼ぶこともある。

英国のイングリッシュ・ブレックファスト(筆者撮影)

英国に住む18歳から30歳の2000人を対象に実施したGinger Researchの調査によると、5人中1人がこの朝食を食べたことがないという。理由の一つとして「心臓病や肥満の原因になる」と20%の回答者が考えており、ベーコンやソーセージは食べないと回答している。

若い年代層は健康意識が高く、ベジタリアンやビーガンになる者も多い。そのためイングリッシュ・ブレックファストよりも、レストランやカフェでの朝食であれば、スモークサーモンやスクランブルエッグ、アボカドのオープントーストやパンケーキを好む傾向にある。

参照サイト:
One in five under-30’s have never had a full English breakfast, study says ITV News (英語)

「インスタ映え」もキーワードに

さらに、インスタ映えする朝食や新しいアイデアに惹かれる傾向が見られる。15%の回答者は、朝食のアイデアを得るためにインスタグラムを利用しているそうだ。卵白で作ったフワフワの白いスクランブルエッグにトロリと流れ出る黄身といった新しいアイデアを求めている。

また、Tabascoは、35歳未満の3人中1人がトーストとゆで卵のセットやコーンフレークなどを食べないと回答していることを明らかにしている。

朝食を摂らずに出勤する人々が多い英国。それでも全体の70%が「朝食は大事である」と考えており、出勤途中や職場で摂っているようだ。

砂糖不使用のシリアルバー(筆者撮影)

シリアルバーやビスケットが人気

最近は、昼食時間まで満腹感を得ることができ、簡単に食べられるアイテムに人気が集中している。人気ベスト3を挙げると、シリアルバー、果物、ブレックファスト・ビスケットとなる。小袋に入っており、場所を選ばず、気軽に食べられる利便性、低カロリーであること、栄養バランスの良いことなどが魅力となっているようだ。

参照サイト:
Daily purchases, on-the-go habits and health credentials: 10 charts explaining UK attitudes to biscuits | 10 Charts | The Grocer (英語)

ブレックファスト・ビスケット(筆者撮影)

ブレックファスト・ビスケットの登場は「ビスケットは午後のおやつ」といった英国人の固定観念を変えつつある。特にこの商品は女性に人気があり、年々売上げを伸ばしている。

人々のライフスタイルの変化やヘルシー志向の高まりにより、伝統のイングリッシュ・ブレックファストは存在し続けることができるのだろうか。不安である。(フードライター・ラッド順子)