清酒特集
◆清酒特集:ニーズに即した商品で市場活性化 好調、機能性清酒
清酒業界にとって最需要期となる秋冬シーズンを迎えた。9月末で「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」が解除された。その後、飲食店の営業時間短縮の要請も解除されるなど、長引くコロナ禍で苦境が続いた業務用市場では、明るい兆しが見えてきた。引き続き旺盛な「家飲み需要」を受け、パック系もおおむね堅調な動きだ。とはいえRTD人気の高まりなどで清酒をはじめとした酒類間競争は、一層激しさを増している。清酒メーカー各社は定番品の再訴求はもちろん、「高級感」「安全・安心」「健康志向」などといった消費者ニーズに即した商品リニューアルや新商品の投入を図り、清酒市場の活性化を図る。(藤林敏治)
●若年層の取り込み図る展開
21年1~8月の全国清酒課税移出数量は22万6186kl(日本酒造組合中央会まとめ、一部概数値)で、前年比3.2%減となった。コロナ禍による業務用市場の苦戦が影響したものの、前年同期(20年1~8月)の減少率(12.6%減)に比べると下げ止まりが見られた。
健康志向の高まりを受け、「糖質ゼロ」「糖質オフ」などといった機能性清酒は好調で、今季は機能性清酒の新商品の投入や、リニューアルが目立つ。当面、機能性清酒カテゴリー市場の伸長は続く勢い。近年、広がりを見せるノンアルコール市場での定着を目指した新アイテムも注目される。
特定名称酒では、従来にはなかった「新しい香り」を切り口とした商品開発が目を引く。アウトドアシーンを意識した「ボトル缶」もコロナ禍で好調な動きを受け、「カジュアル」をキーワードに新商品で若年層の取り込みを図る。
日本酒造組合中央会(大倉治彦会長)は10月1日の「日本酒の日」に合わせて、日本各地の酒蔵や飲食店など約130ヵ所をオンラインでつなぎ、一般参加者ととともに日本酒で一斉乾杯を行うイベント「オンライン全国一斉#日本酒で乾杯2021」を開催した。京都の会場から登場した大倉会長は「10月1日は日本酒の日です。これからますます日本酒がおいしくなる季節になります。またコメの収穫も始まり、日本酒の仕込みも本格的に始まってきます。この10月1日に皆さんと一斉乾杯をし、機運を盛り上げていきたい」とあいさつした。
また同15日に開催された文化審議会で、日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造りが「伝統的酒造り」として登録無形文化財に登録することが認定された。また保持団体として「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」が認定された。