容器再利用プラットフォーム「Loop」が世界で急拡大 持続可能な社会をめざす新ビジネスモデル

海外でLoopのプラットフォームにのる製品群と発送・回収用の通い容器

海外でLoopのプラットフォームにのる製品群と発送・回収用の通い容器

環境や資源、人手不足などの各問題が深刻化する中、政府だけでなく民間でも早急な対応策が迫られている。環境問題で注目される動きの一つとして挙げられるのが、テラサイクル。「捨てるという概念を捨てよう」という理念で、世界21ヵ国200社以上の企業と手を組み、資源循環の仕組み作りに取り組む、ソーシャルエンタープライズだ。

使い捨て文化に対する挑戦 日本企業も続々と参加

主な事業は(1)リサイクル困難なものを回収しリサイクルするプラットフォーム(リサイクルプログラム)(2)使用済み容器を活用した製品開発(海洋プラスチックを活用した容器製作)(3)リユース可能容器を使用したショッピングプラットフォーム「Loop(ループ)」の展開。

Loopは消費財をもつ企業や流通業者を、使い捨てを主体としたサプライチェーンから持続可能なものに移行させる世界的なプラットフォームだ。

海外でLoopのプラットフォームにのる製品群と発送・回収用の通い容器

2019年5月に米国東海岸でウォルグリーンズとクローガー、仏・パリでカルフールをパートナーにECサイトで実証実験を開始。2020年10月には東京で、5000世帯を対象にECサイトを立ち上げる。実店舗でもイオンリテールの協力で、首都圏10ヵ所以上で実証実験を展開する。

テラサイクルは、ショッピングプラットフォーム「Loop」の米・仏での実証後、海外では今春からトロント(カナダ)の小売業ロブローと、ロンドン(英国)テスコとECサイトで、8月には米・西海岸の小売業クローガーの実店舗で、9月は仏カルフールが実店舗での実験を追加する予定だ。

ほとんどの地域で、実証実験は5000世帯の規模で約1年をかけて検証する。この規模だと食品や日雑メーカーがテストラインとしてオペレーションしやすいためだ。消費者からのフィードバックやビジネスの流れも見えやすくなるという。

日本での実証実験店舗パートナーはイオンリテール。サステナビリティ意識が高く消費者ニーズや価格設定など小売のノウハウが豊富

実証実験の店舗パートナーはイオンリテール。イオンは国内の小売業では最大規模で「サステナビリティ意識が高く、消費者のニーズや価格設定など小売のノウハウが豊富で、パートナーとして理想的」(エリック・カワバタテラサイクルジャパン代表)という。2021年には、シドニー(豪州)最大の小売業ウールワースとの実証実験も準備中だ。

Loopのビジネスモデルは「牛乳配達」。使い捨て文化の中で、企業の資産は「中身」だけ。もともと、耐久性のある容器は中身だけでなく、器の所有権も企業が持っていた。使い捨て文化は安くて便利だが「軽量化とリサイクル率は比例して下がる」ため、その結果として、ゴミ問題が台頭してきた。

味の素グループが開発したリサイクルできるプロトタイプのLoop容器(右はコンソメ・ほんだし・丸鶏)、左はAGFのコーヒー容器

Loopの考え方は「容器に耐久性を持たせ何度も繰り返し使えるようにすれば、容器の所有権はまた企業に戻る。使い捨て文化に挑戦する」ことが成功といえる。

同社がリユースを提案するまで、メーカーは一切考えていなかった。1個10円で販売する使い捨て容器を考えた場合、容器はワンウエーで、使用後容器は消費者が廃棄する。ところが100回再利用できる300円の容器ならば、1回当たりのコストは3円。メーカーは実質7円のコストダウンにつながる。

メリットはコストだけではない。容器に高級感や耐久性、機能性などの付加価値を付与できる。メーカーの理解に時間がかかるが、300円の容器代をデポジット制にすると今まで以上に消費者の利便性が高まる。

容器の値付けはメーカーの資産なので各メーカーが行う。実際に米国の実証では中身が約500円のウエットティッシュで、容器デポジットが約1000円の商品が、ECサイトで2番目の売れ筋になっている。

容器はメーカーの売上原価となるため、消費財メーカーは容器に用いる素材の使用削減を目指してきたが、多層パウチなどリサイクル困難なパッケージを生み出し、より多くの廃棄物を生み出す結果となった

ステンレスとプラを組み合わせた容器で、最後の1枚まで乾燥しづらい点が好評だ。消費者は「容器代がデポジット制で戻ってくるならば中身より容器代が高くてもその対価をきちんと払ってくれる」という証明になっている。

米国のLoopプラットフォームに商品をのせているハーゲンダッツは、通常の容器は「素手で持つには冷たすぎ、中身が溶けてしまう」というクレームを、素手で持て、冷たすぎず、常温放置しても簡単には溶けない2重構造のステンレス容器を開発し好評だ。今年は新たなデザインの開発も検討中だ。

Loopは2019年1月、世界経済フォーラムで意識の高い41企業と一緒に「ゴミを出さない」ということで立ち上げた。驚くべきなのは、ゴミ問題を作る企業に批判的で、リスト化し公表するグリンピース代表も立ち上げ会見に同席した点。容器メーカーのトップと横並びで、Loopの活動を認めている。現在41社は60社に拡大した。

米国のECサイトで2番目に人気の高い、ウエットティッシュの容器、プラとステンレスを組み合わせ機能的に使いやすい

米国Loopのビジネスモデルでは、消費者がECサイトを見て、欲しい商品を購入、配送料は10~20ドルで注文が多いと配送料が割引になる。消費者が使い終わったら通い箱に戻し、回収してもらう仕組みだ。

新しいビジネスモデルなので、新たに参加する企業は、容器を開発する投資も必要になる。実際に仏コカ・コーラでは中身が一番おいしいとされる330mlサイズのガラス瓶のラインをゼロベースで復活し、Loopのために新ラインを作った。

ペプシコもトロピカーナのオレンジジュースをプラ容器からガラスに変更、ビスケットメーカーも品質が保てるように紙容器から金属容器に切り替えた。日用雑貨ではシャンプー容器をプラからアルミに切り替えたメーカーもある。またLoopのプライベートブランドも展開。油脂、コショウ、ハチミツなどのプライベートブランド容器を独自に開発した。

昨年1月24日、世界経済フォーラム会見の模様、普段はごみ問題に関してブランドオーナーに批判的な立場のグリンピースもモーガン役員(右)がLoop会見でブランドCEOらと共同で発表した

東京都が初の行政パートナーに

Loopでは容器が古くなることを前提に容器をデザインしてもらう提案も行う。例えば、国内でもLoopの活動に賛同するキリングループが展開するビール「ハートランド」の瓶は、本来リユース目的で開発している。

ハートランドはラベルを張らず商品ロゴやマークは瓶の凹凸で表現する。瓶は使えば使うほど凸部分が削られ、ロゴや名前のコントラストがはっきりし、古い瓶ほどデザインが浮き上がる。

ラベルのないハートランドのボトルは使うほど凸部分が削れ、ブランド名がくっきり浮き出る

プラ素材でもABSプラとポリカーボネートは溶かして再利用しても耐久性が変わらないので、同社ではLoop容器に利用できるプラスチックという位置づけだ。

カワバタ代表は「すべての商品がLoopの循環に乗らない」という。特に練り歯磨きのチューブ容器はリサイクルがしづらく、リサイクルしても耐久性が変わってしまう。ただ、そこには新しいイノベーションもある。

歯磨き粉の容器がリユースしやすいように、ユニリーバはタブレット状の歯磨き粉「トゥースタブス」を開発した。ガラス性容器に格納できる歯磨き粉を上市した。歯ブラシも先端ブラシと柄の部分が着脱式で、ブラシ部分だけを変更する歯ブラシも開発された。柄の部分には磁石を埋め込み、洗面所の鏡に貼り付けられる新たな付加価値も付与してある。

10月からの実証実験では、食品業では味の素、大塚製薬、キッコーマン食品、キリンビール、サントリー、ロッテ、日用品ではI-ne、エステー、資生堂、P&G、ユニチャーム、事務機器メーカーのキヤノン、小売業のイオンリテールに加え、世界で初めて東京都が行政として参画し助成を行っている。

自治体として世界初、東京都もLoopに参画(トム・ザッキーテラサイクルCEO/前列中央左、小池百合子東京都知事/同中央左、エリック・カワバタテラサイクル日本代表/前列左から3人目)

宅配商品はLoopの通い容器で回収し、小売店頭では消費者が使用済みの容器を返却するとデポジットが戻ってくる仕組みだ。小売店で買った商品でも量が多ければ、Loopの回収システムも使える。

現在、米国東海岸の宅配におけるコンバージョンレート(CVR=成約率)は12%と驚異的だ。アメリカのEC売上げ上位500サイトのデータでは(検索エンジンなどから流入した)ECサイトの平均CVRが3.32%なので、同社の12%がいかに高いかが分かる(Amazon非プライム会員CVR=13%、プライム会員=74%)。

米国の5000世帯を対象にアンケート調査を行った結果、Loopを使用する理由の上位は(1)利便性(2)魅力的な容器的(3)家の中のゴミがなくなりゴミ処理が不要、という回答になった。当初「サステイナブルでエコだから」という回答を予想していたが、消費者からするとそれはあくまでも副産物。便利な上に「意識高いことをしている(気持ちよく使える)」と考える消費者が多いという結果になった。

Loopのために開発した水の要らない歯磨きタブレット「トゥースタブス」

日本の風土はLoopにマッチする。そもそもリユース瓶を使う文化がある。BtoB市場で酒瓶リユースがいまだに健在だ。瓶が傷むことに関するクレームはゼロ。リユースを理解し、デザイン性や機能性など日本ほどパッケージにこだわるマニアな国はない。

雨天時の百貨店での紙袋へのビニール包装や、中元歳暮用に別に紙袋を移し替えるのも日本独自の文化だ。同社を中心とした循環経済が回り出すと、洗瓶事業の復活が期待できる。

昨年12月のエコプロ展の時以上にLoopは盛り上がっており、日本での立ち上げでは最終的に参加企業30~40社で、アイテムは200SKU (ストック・キーピング・ユニット:最小管理単位)を目指す。

キッコーマン食品の醤油とトマトジュースのLoopリユースボトル

Loopは消費者の声が大きいほど、ブランドオーナーを説得しやすい。メーカー・小売のプライベートブランド開発が駄目なら、Loop独自のプライベートブランドというやり方もある。実際、米国の実証実験では新たに40の商品を市場に投入した。汎用性の高い容器を独自開発し、容器にコストをかけられない中小事業者でもLoop容器を使えば市場参加も可能だ。

海外でのクレームで一番多いものは「ECサイトのカタログ商品数を増やしてほしい」というもの。現在も週ごとにアイテムは拡大し、米国では今春200種に拡大の予定。アメリカでは1回の注文で8000~9000円の購買額、6週間に一度の注文という利用実績である。商品の価格、配達料、容器デポジットを消費者が負担する。

※日本食糧新聞の2020年1月24日号の「Hard&Soft新春特集」から一部抜粋しました。

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