包装もち特集

◆包装もち特集:新商品投入で市場活性化 消費増税で内食回帰にチャンス

包装もち市場は、成熟したマーケットながら比較的安定して堅調に推移している。18年度の市場規模は微増の350億円強(本紙推計)だった。今年は食品需給研究センター調べの生産量だけ見ると1~8月で5.9%増。冬に偏りがちなもち需要期だが、生産の平準化による生産効率向上の取組みや、業界挙げての喫食機会通年化の提案が徐々に浸透した。そうはいっても秋冬に最需要期を迎えるもち業界。今年も市場活性化のために、時代のニーズにマッチした形状や容量などを開発コンセプトに盛り込み、新商品を相次いで投入。一歩踏み込んだ具体的な用途提案や、小容量化による時短・簡便にも対応。特に、消費税が外食で10%に増税される中、内食回帰をチャンスととらえ、鍋物など食シーン創出に向けて各社多彩な提案を実施する。安定した需要を維持していくために、伝統食の良さを残しつつ、新たな挑戦も見られる。(山本大介)

●食シーン創出へ多彩な提案

全国餅工業協同組合調べの18年度(4~3月)包装もち生産量は、前年比0.3%増の5万9432tだった。16年に熊本地震が発生して以降、防災意識の高まりから保存食としての需要が急増し、16年度だけ突出して生産量が増えた。その反動減が17年度で見られたが、15年度比では上回っており、18年度も微増傾向が続いている。

金額ベースの市場規模を見ると、18年度は350億円を若干上回ったとみられる。佐藤食品工業はグループのうさぎもちを加えると46%を超えるトップシェア。同社グループ独自の「ながモチフィルム」による高品質維持効果の認知が広まり、市場を上回る伸びを見せた。次いで、越後製菓が2割弱、たいまつ食品が1割を超えるシェアで、新潟県内のメーカーだけで8割以上を占める。

昨年は大阪府北部地震や豪雨、台風、北海道胆振東部地震など災害が多く、包装もちも防災意識の高まりで備蓄需要が高まった。今年は昨年の仮需の裏年となり、エリアによっては反動減も見られるという。

ただ生産量を見ると、食品需給研究センター調べでは、19年度に入り4月11.1%増、5月1.6%増、6月10.3%増、7月18.4%増、8月3.9%増で推移。4~8月の年度ベースで見ても前年比9.2%増と大幅な生産増を示した。これは、パッケージの技術開発で賞味期限が延長できたことで、秋冬に偏りがちな生産の平準化が進んでいるとみられる。

また、今年は最大消費地の関東で梅雨寒もあって、もち業界にとっては消費の追い風になった。加えて、冬場の鍋ものだけでなく、夏場のアウトドアでのバーベキューでも消費され、食シーンの登場機会が増えたという声も聞かれる。また、中長期的に見ると、餅つき器の家庭内普及が約20年前にピークだったが、機器の老朽化や家庭で作ることも減って、商品に回帰してきているという見方もある。

〈19年度の市場展望〉

包装もち市場の主流は1kgの大袋アイテムだ。市場の基準ともなり、この流れは今後も大きく変わることはないとみられる。ただ、面取り合戦による低価格競争が激化。20年前には1kgの店頭売価が798円だったものが、年々下がり、今では特売で498円も散見されるようになった。供給メーカーは価格競争に疲弊している。今後原料もち米の価格が引き上がってくると予想され、加えてエネルギーコストや物流費上昇など、コストアップ要因が重なり、自助努力にも限界が見え始めた。価格改定したいというのが各社本音のようだ。特売頻度の抑制や値締めに取り組む動きも見られ、適正な価格体系の再構築が急務となっている。

こうした中で各社は、1kgだけでなく、300~800gといった小・中容量の品揃えを充実させている。原材料のもち米にこだわり、品質や産地による差別化を図る動きが加速している。

時短・簡便ニーズで、切りもちや丸もちそのものの小型化や薄型化による加熱時間の短縮を訴求する動きも見られる。特に、今年は消費税の増税で外食が10%となり、内食の需要増を期待して、各社鍋用の小型もちやしゃぶしゃぶもちなどの薄型商品を再強化する。

一方、小型・薄型化の流れにあえて逆行したのが越後製菓の新商品「生一番厚切り餅醍醐味」だ。コシが強く食べ応えのあるもちとして、真逆のコンセプトで新たな需要を掘り起こす。

また、山形の城北麺工はウルトラマンタロウと臼怪獣モチロンを起用したウルトラ餅つき大作戦の新商品で、話題を喚起。

今年は令和初の年末年始を迎えることから、佐藤食品工業とたいまつ食品は「令和」を冠した商品を期間限定で発売する。

もち業界のこうしたバラエティーに富んだ商品展開や話題喚起が市場活性化につながり、今後も堅調な需要を支えていきそうだ。

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