和食特集

和食特集:保護・継承活動 だし給食は3000校増 食育活動も深化

総合 2020.12.18 12161号 07面
東京都千代田区富士見小学校のだし給食、農水省の葉梨康弘副大臣(右から1人目)も出席した

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食育授業もオンライン化、写真はにんべんの社内検証

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富士見小学校のだし給食。三信工業から食器に現れる文化、思いも伝えられた

富士見小学校のだし給食。三信工業から食器に現れる文化、思いも伝えられた

 和食の保護・継承活動が学校給食で深まっている。11月の「だしで味わう給食の日」は、実施校が前年比3000校増えて浸透した。食品メーカーなど各種団体による食育活動は、コロナ禍で中断。オンライン対応を進め、体験、娯楽も求める成熟社会のニーズに応える。

 和食は13年12月にユネスコの無形文化遺産に登録され、多様で新鮮な食材といった価値が認められた。絶滅の恐れと認定されて、保護・継承は国民の義務になっている。保護活動を担う和食文化国民会議は、11月24日を「和食の日」に制定。同月に全国の小中学校、保育施設の給食でだしが感じられる、汁物の提供を呼びかけている。

 15年の参加2000校から始めて19年9498まで広めてきた。今年から教材資料の配付強制を止めた。ポスター掲示、説明だけの参加も可能にして門戸を開き、実施校を1万2498ヵ所、286万8251人に伸ばした。負担と予算軽減、さらなる全国化を両立した。

 米飯給食の実施率は、全国3万近い小中学校でほぼ100%。提供も週4回に迫り、食育基本法・推進基本法が徹底され、コメ消費の残り少ない牙城を築く。低脂肪で食材の味わいを引き出し、ご飯食が進むだし使いが定着すれば、今後の和食促進も見込める。

 「だし給食」は20年、農林水産省、経済産業省に加え、今年から厚生労働省の後援を得た。保育園や幼稚園といった未就学児への取組みを強化。小児でも読める教材を作って、保育施設での採用を大幅に増やした。だしの香りは後天的に体得するものだけに、幼児からの教育は有効。中長期目標の2万ヵ所実施へ着実に積み増している。

 和食の日のロゴデータや、イラスト集などのデータ拡充も奏功。配信とともに給食・献立便りへの活用をお願いして浸透、定着させた。会員による出前授業も行って子どもへ直接、文化価値を伝える。全27講座のオンライン化も進め、熊倉功夫名誉会長のWeb講演も開催。コロナ下の景気悪化による会員減を反転させる。

 和食会議以外の団体も全国各地で活躍。家庭食と地域の食文化を応援する。代表例は321年前から鰹節を扱い、基本法より早い21年前から食育活動を行うにんべん。出前教室を主に行い、当初は鰹節の豊かな健康栄養成分などの啓発目的だった。近年は、消費者と直接意見交換できる接点と判断。常備する家庭が減った鰹節そのものの味わい、活用法に気付いてもらう場にした。

 実際に食育要請に寄せられるニーズも深化。鰹節だけでなく、和食やだしへの質問、体験学習、娯楽要素も多く求められるようになったという。Web会議システムを活用すれば、リモート開催での食べ比べ、調理も可能。社会や経済、環境の持続性への関心の高まりに対しては、国内外のカツオ漁と長年の流通からなる産業史、伝統製法といった物語などを開示する。

 にんべんの活動で特筆されるのが、昨年からオープンを加速している弁当、惣菜店。冷凍惣菜やレストラン経営も始めて久しいが、即食できる中食の充実は、専門メーカーがだし使いの正解、ゴールを明示することにほかならない。実店舗では「だしジュレ」などの一手間もあるが、基本は家庭用商品を使えば、家で作られるメニュー。本物を知って各家庭で深めてもらい、集積となる地域食、和食を進化する。

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