緑茶特集

飲料 2020.12.14
緑茶特集

 ●新型コロナ抑制効果も期待
 茶業界が需要期を迎えた。リーフ需要の減少分を、PET飲料需要と抹茶を中心とした輸出が下支えする構造もコロナ禍で一変。外出自粛による在宅勤務の拡大や全国規模でのイベント中止といった影響で、オフィスやPET飲料需要が大きく減少した。当然、輸出にも影響が生じたことから業務用が苦戦を強いられた。秋口にかけて徐々に回復しつつあるとの声も聞くが、非常に厳しい経営環境は現状では継続している。
 一方、近年悩みの種であったリーフ茶には光明が差した。在宅時間の増加は、売上げ基盤である高齢者層の消費増加を生むだけでなく従来、PET飲料を常用する若年層などにも波及した。日常生活に制限が強いられる環境下で、癒しを得られると再評価を受けた。豊富な茶種に豊かな風味を有する緑茶の奥深き世界を日常生活で楽しむ和が、今回を機に広がることを願うばかりだ。
 ただ、緑茶業界を支える大部分が中小規模。コロナ禍が解消した先を考察すると、小売販売は大手の寡占状態で市販での大幅拡大はいばらの道。業務用に目を向けてもOEM、バルク販売もブランド力に乏しいと価格競争となる。
 店舗展開も行う茶業者は「アンテナショップを残し、店舗整理が必要。今後は高齢者層が外出できずとも購入できる仕組みづくりと急須を使う習慣があり、ネットを使いこなす50~60代に向けたEC事業に力を注ぐことが中小にとって生存の分かれ目となるのでは」と語る。
 また、高まる健康志向を背景に「日本茶の衝撃的な機能性を発見されれば」と切実な願いも聞かれる中、奈良県立医科大学(橿原市)が基礎研究段階ながらも市販の緑茶や紅茶などを使用した実験で、新型コロナの感染力を抑制する効果があると発表。まだメカニズムは不明で、人での効果は未確認ながら大きな注目を集める。
 そのほか、愛知県茶業連合会では同県産茶試供品ティーバッグ3種(普通煎茶・深蒸し煎茶・かぶせ茶)と同県産茶を取り扱う店舗をまとめた茶販売店マップに加えて、あいちの茶理解促進パンフレット「リアル謎解きゲーム~グリーンティアラのゆくえ~」を作成するなど、各生産地では茶業団体が主導する需要拡大への取組みが積極的に進められており、緑茶の潜在ニーズの掘り起こしにつながることが期待される。(立川大介)