酒類流通の未来を探る
国内酒類業界が歴史的な苦境に陥っている。新型コロナウイルスの感染拡大から1年余りが過ぎる中、繰り返される緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、業務用市場は壊滅的な打撃を受けた。飲食店の倒産や業態転換が相次ぎ、コロナが収束したとしても以前の市場規模の水準には戻らないのではとの見方が大勢だ。
12日、政府は東京都に4度目の緊急事態宣言を発令した。宣言を延長する沖縄県とともに、酒類を提供する飲食店に対して休業を要請。重点措置が延長された埼玉・千葉・神奈川・大阪の4府県の飲食店に対しても、「禁酒令」ともいえる酒類の提供を原則停止する措置が取られている。
今回、政府は酒の提供をやめない飲食店への「圧力」を強めるため、取引先の金融機関から順守を働きかけてもらう方針を示したほか、飲食店に酒を販売する事業者へ取引停止も依頼し、酒類流通業界に混乱を広げた。だが、この一連の対応が業界内外で問題視され相次いで撤回を発表。取引停止を求めた政府対応について、菅義偉首相が陳謝する事態となった。
これ以上の締め付けは不振にあえぐ業務用市場に追い打ちをかけ、市場の縮小が加速しかねない。感染対策に真摯(しんし)に取り組む飲食店が多く見られる中、一律に飲酒制限を求める政府の対応に疑問の声も挙がる。飲食店に的を絞った感染対策でも、メーカーや卸、商社、業務用酒販店など、酒類流通に関わる事業者にも影響を及ぼす。
今後は酒類市場の縮小が予想される中、定着した家飲み需要の取り込みと外飲み需要の喚起が必要不可欠だ。コロナが収束すれば、飲食店で自由に酒が飲める時代に戻る。飲食店での楽しい時間創出や在宅の時間を充実させる魅力など、アフターコロナはより一層酒の真価が問われる時代になりそうだ。酒類市場の現状と未来へのヒントを探った。(岡朋弘)
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