ヨーグルト・乳酸菌飲料特集

◆ヨーグルト・乳酸菌飲料特集:鍵は消費者インサイトの刺激

乳肉・油脂 2019.09.27 11948号 08面

ヨーグルト市場の上期(4~9月)は、前年を2~3%程度下回って折り返しそうだ。昨年度に続き底堅い需要は変わらないものの、市場拡大には一服感が見られる。乳酸菌飲料市場についても、昨年度からダウントレンドに転じているもようだ。両市場急成長の背景に、消費者の健康志向、ニーズを刺激するメディア露出や情報発信が活発だったことがあるが、ここにきて他カテゴリーと比較して一段落していることもあり、新たな成長ステージへ挑むには、消費者インサイト(消費者自身が気づいていない購買行動の動機や本音)を刺激する商品投入やコミュニケーション投下へ、各社さまざまな施策を進めようとしている。特に、近年成長に停滞感が見られた機能性ヨーグルトでは、これまで以上にターゲットを細分化したアイテムが多数上市を控え、広い意味での「健康」から、個人のライフスタイルに合わせたより具体的な「健康」へ、個別のターゲットの需要掘り起こしが今後ますます進みそうだ。(小澤弘教、徳永清誠、浜岡謙治、廣瀬嘉一、山本大介)

●ヨーグルト=話題喚起・情報発信で再活性化 機能性ヨーグルト、個別需要掘り起こし新ステージ

ヨーグルト市場の直近4~7月の動向は、前年比3~4%減で推移している。生産量を見ると、乳業・非乳業とも前年を5ポイント以上下回り、合計で6.0%減となった。今年4月は、乳価改定により大手メーカーを中心に値上げに踏み切ったが、徐々に影響は吸収されているとみられ、家計調査では金額で前年を上回って推移している。前年割れの推移が続くが、ヨーグルト自体が「良い意味でコモディティー化している」(メーカー)との見方もある。

今春の市場をとりまく環境を見ると、一時期と比較してヨーグルトに関するメディアを含めた露出の減少が影響。市場拡大が続いていた2016年~17年上期ぐらいまでは、「腸内フローラ」や「菌活」など、健康や美容の面でヨーグルトや乳酸菌・ビフィズス菌に関する話題が多かったが、ここにきて露出が減り、ニュース性の高い他カテゴリーへ消費者の意識が移っていると考えられる。特に、情報量の増減に敏感に反応するライトユーザー層への影響は大きい。

タイプ別では、ハード、ソフト(フルーツ)、プレーン、ドリンクと軒並み前年を下回った。中でも、ドリンクは減少幅が大きいとみられ、飲料などカテゴリー外での戦いを強いられてもいる。

迎えた下期は、そうした機能性ヨーグルトの潮目が変わりそうだ。より具体的なターゲットを明確化し、話題性の高い商品を各社展開し、新たなステージに突入を始めている。

明治は、プロバイオティクスヨーグルトの中で「PA-3」が好調を維持。上期に「尿酸値の上昇を抑える」機能性表示をしたことで、ターゲット訴求に成功している。今春に血圧・血糖値・中性脂肪の三つの機能性を取得した森永乳業の「トリプルヨーグルト」は、TVCMも含めヘルスクレームをよりわかりやすく伝え、好調を維持している。

雪印メグミルクは、来年初に「乳酸菌ヘルベヨーグルト」の発売を予定。目や鼻の不快感を緩和する機能性表示食品で、「新しいめはな対策習慣」を提案する。協同乳業は、「LKM512ヨーグルト+(プラス)」を発売。腸内で血管内皮機能の改善や老化予防などが期待される万能成分「ポリアミン」を産生する。同社は「ポリアミン」認知度拡大に向けてWebサイトの拡充など、積極的なコミュニケーションを進めている。タカナシ乳業からは、日本初となる肌の潤いを保つ「タカナシ flora(フローラ)ドリンクヨーグルト」が登場。肌の乾燥を気にする女性だけでなく、冬に向けて男性からの購買も期待される。

また、健康の訴求に加えて、嗜好(しこう)性の高い消費者ニーズに対応する商品展開も進む。市場ではプレーンへの回帰傾向が見られるが、明治は「明治ブルガリアヨーグルトLB81甘みつき」で、「混ぜて食べる」喫食シーンの拡大を目指す。フジッコは、「カスピ海ヨーグルト脂肪ゼロ」を生乳100%にリニューアル。北海道産生乳のおいしさを生かし、自然なコクを実現した。

素材へのこだわりをさらに進め、消費者の志向にマッチした商品展開も広がっている。ダノンジャパンは、今春から消費者一人ひとりのライフスタイルに合った「腸活」を提案するコンセプトにリニューアルした「ビオ」で、新商品「果実の甘みだけ」をラインアップ。自然由来のシンプルな素材を使用し、毎日続ける「腸活」提案を進めている。チチヤスは、近年のトレンドを反映した新しい形のヨーグルト「無添加メープルヨーグルト」を上市するなど、健康軸にプラスアルファされた価値の発信を各社強化している。

プロモーションでは、江崎グリコが「BifiX」で食物繊維「イヌリン」配合を訴求した拡販策を投じたり、森永乳業が発売25周年を迎えた「アロエヨーグルト」の新商品投入と販促企画を予定するなど、ヨーグルト市場でさまざまなニュースが増える予感だ。

●乳酸菌飲料=継続ユーザー確保へ ターゲットと相性合う提案を

乳酸菌飲料市場は18年度にダウントレンドに突入しているが、苦戦に歯止めをかけようと、各社さまざまな商品投入を進めるとともに、継続ユーザーの確保へ、ターゲットとの相性に合った提案を進める。

上期4~7月の生産量は乳業・非乳業合わせて3.1%減だったものの、割合の大きい非乳業は前年比微減で推移。家計調査でも2.2%増と回復傾向にある。下期に向けては乳業の生産量動向が左右しそうだ。

最近の動向では、ヨーグルトと同様、機能性や話題性がある他カテゴリーへの流出もあるとの見方が強く、商品力やターゲットへのアプローチ改善などが巻き返しの焦点になってくる。

ヤクルト本社は、同社初の機能性表示食品「Yakult(ヤクルト) 1000」を10月から発売。ストレスの緩和や睡眠の質の向上を訴求する。同社は今年度に入り「ヤクルト」類全体で前年を下回って推移しているが、下期から投入する同品を戦略の中心に据え、将来的主力アイテムに育てる方針だ。

日清ヨークの「ピルクル」は、昨年発売25周年企画からの好調をそのまま維持し、スタートダッシュに成功。秋には「ピルクルFe」を投入し、これまで男性ユーザー中心だった同ブランドへの女性層取り込みを目指す。

カゴメは、植物性乳酸菌飲料として初めての機能性表示食品「ラブレα」が新規ユーザー獲得に成功。下期は効果的メディアプロモーションなど推進し、継続使用の価値を伝えていく。

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