人生100年時代をどう生きる?管理栄養士が考える「健康寿命を延ばす食事」

人生100年時代がやってくる。あなたはその時代に向けての準備をしているか?と聞かれ、「もちろん!」と答える人はどれぐらいだろうか。昨年からさまざまな場所で取り上げられている「人生100年時代」という言葉。定年を60歳とした場合、100歳までの期間は40年。その時間を幸せに過ごせるかどうかは、働き盛り世代の今の生き方に寄与するところが大きいと考えられる。働き方や人生設計を変えることも大事と言われているが、根本にあるのは100歳まで自分で考え、動くことができる状態、いわゆる健康な身体でいるということだ。
管理栄養士の目線から100年時代を豊かに過ごすための生活習慣や取組みを取り上げ、100年時代を見据えたサービスや健康セミナーを行っている宿泊施設や飲食店を紹介したいと思う。

平均寿命は延びているが、介護が必要な期間は9年以上

今年も日本の平均寿命が更新された。2018年の平均寿命は男性が81.25歳、プラス0.16歳で7年連続更新され、女性は87.32歳、プラス0.05歳で6年連続の更新である。そして、今年9月16日、敬老の日に厚生労働省が発表した100歳以上の数は、7万1274人である。この数字だけ見ても、100年時代の到来を実感できるだろう。

ただし重要なことは、全員が平均寿命まで元気に動いて楽しく人生を送れているのかである。キーワードは健康寿命。日常生活が制限されることなく、自立して生活できる年齢だ。

2016年の健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳であり、平均寿命と健康寿命の差は男性は約9歳、女性は約12.5歳となり、この期間は家族や医療機関のサポートが必要になる。この差を埋めること、すなわち健康寿命を延ばすことが、100年時代を幸せに生きることにもつながるとも言えよう。

健康寿命が終わる原因、いわゆる介護が必要となる原因は大きく3つある。平成28年国民生活基礎調査によると、関節障害、骨折・転倒、高齢による衰弱の運動器の機能低下に関連するものが約36%であり、次に脳血管疾患、心疾患、がん、糖尿病など生活習慣病関連が約26%、そして認知症が約18%と続く。

この3つの原因に対して早めに予防しておくことが健康寿命を延ばすうえで、最も重要なポイントになるのである。

働き盛りの40代からが生活習慣病の予備軍が大きく増えだす。筆者も栄養指導を行っているが、その年齢になって生活習慣を変えるのはなかなか難しい。脳卒中で倒れて介護が必要になったある50代男性は「ある日突然、人生が変わった」と、暴飲暴食をしていた生活を後悔していた。

筆者はいつも予備軍の人にこう伝える、「長生きしてピンピンコロリと死ぬのが理想だが、実際には少ない。100歳まで生きなければならない時代を最後まで幸せに過ごすかどうかは、健康に対する意識を今から少し変えるだけ。その意識を持つだけで、腹八分、禁煙、ウォーキングなど今まで興味がなかったものに、目を向けることができる」と。

料亭が家族の健康づくり応援セミナー、顧客満足度をアップ

桜坂観山荘は福岡市内の高台にあり、モダンで和風な雰囲気が人気の料亭だ。顧客に対して定期的に健康や介護、終活などのセミナーを行っている。今年9月には、「心も体も元気で過ごす100年時代の《食》」をテーマに、管理栄養士の立場から、「食事」、「運動」、「休養」をマネジメントして、元気に過ごす生活習慣についてセミナーを行った。

「心も体も元気で過ごす100年時代の《食》」セミナー

飲食店での健康セミナーの利点は、「普段家庭では話さない介護や健康のことを自然に話す機会ができる」「健康に良い食材を学び、実際に料理として食べることができる」である。参加者には40代夫婦や母親と参加した40代女性もおり、「カルシウム源の干しエビや、タンパク質源のささみを、スーパーで買って帰る」と、すぐに実践する姿勢が見られた。

定期的に健康セミナーと取り入れることで、テーマに興味を持った新規顧客の来店やリピートにもつながり、顧客満足度を高めるとともに、他店との差別化を図ることができると考える。

これからの料亭には、ハレの日をお祝いする場としてだけでなく、高齢化する顧客やその家族の健康づくりを応援するサービスを創り、長く寄り添っていくことが必要ではないだろうか。

参照サイト:
桜坂観山荘公式サイト

健康増進プログラムを提供する阿蘇の宿泊施設

熊本県阿蘇にある「大自然阿蘇 健康の森」は「病気にならないカラダづくり、ココロづくり」をコンセプトにした宿泊施設。生活習慣病予防3泊4日プランや管理栄養士が監修したカロリー・塩分・糖分をコントロールした健康食など、滞在しながら健康を増進するプログラムが提供されている。

滞在しながら健康を増進するプログラムを提供

このような取組みを知り、栄養士養成施設が今年から1泊2日の研修で「大自然阿蘇 健康の森」を選び、「健康レシピ」の調理実習と健康キャンパスで「食と健康」を受講した。健康増進や病気予防へのニーズが高まる中で、栄養士が活躍できる現場を実際に体験することができ、学生達の資格取得の意識も上がっていたようである。

宿泊施設の利点は、食事・運動や睡眠・リラックスできる空間を提供できること。森林浴や町中ウォーキングを提案してみたり、館内のフィットネスジムでの30分筋トレプログラム・快眠を応援するグッズ・寝具・音楽を強化した宿泊プランなどを取り入れてみてはどうだろうか。

カロリー・塩分・糖分をコントロールした健康食

日本では昔から病気やけがを治療するために温泉に入る湯治の習慣がある。週末や連休には健康増進のために、宿泊する。これからの宿泊施設には、心と体の健康をサポートする湯治のような役割が必要ではないだろうか。

参照サイト:
大自然阿蘇健康の森公式サイト
宿泊中に健康度アップ!管理栄養士がおいしい健康メニューを徹底監修する「大自然阿蘇 健康の森」 – たべぷろ

「健康寿命を延ばしましょう!」をスローガンにした国民運動も

政府の人生100年時代構想会議でも、国民が幸せに100年時代を迎えるには健康寿命の延伸が必須であると考えており、「健康寿命をのばしましょう。」をスローガンに、国民全体が人生の最後まで元気に健康で楽しく毎日が送れることを目標とした厚生労働省の国民運動「スマート・ライフ・プロジェクト」が行われている。

このプロジェクトでは主に生活習慣病の予防対策として、運動・食生活・禁煙の3分野を中心に具体的なアクションの呼びかけを行っている。

・毎日10分の運動をプラス
例えば通勤時、苦しくならない程度の早歩き。いつものエレベーターを階段に。

・1日あと70gの野菜をプラス
生活習慣病予防には1日350gの野菜が必要だが、日本人の平均は250g。1日にプラス70~100gで健康寿命を延ばそう。

・禁煙でたばこの煙をマイナス
たばこは健康だけでなく、肌の美しさや若々しさをも失うことにつながる。禁煙で健康寿命を延ばそう。

・健診・検診で定期的な健康チェック
早期には自覚症状がないのが、生活習慣病の多く。定期的に自分の体の状態を調べることでリスクを早期に発見しよう。

スマート・ライフ・プロジェクトには、活動に賛同し健康づくりを応援する企業や団体が参加している。社内での健康セミナーや社員食堂での健康メニューの提供の事例から、地域を巻き込んだ禁煙キャンペーンなどさまざまな取組みが紹介されており、100年時代に向けて企業や行政、地域が一緒にタッグを組んでいく姿を見ることができる。

飲食業界は食生活を支えており、国民の健康を作り上げる機会を持っている。これから必要とされるのは、おいしい料理やサービスだけではない。国や地域と一緒に「100年時代の食事」を造りだす商品やサービスである。(管理栄養士 大山加奈惠)

参照サイト:
スマート・ライフ・プロジェクト公式サイト

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