日本食糧新聞社制定、令和2年度「第39回食品ヒット大賞」および「第34回新技術・食品開発賞」の受賞商品が決まった。今年も大賞は選ばれなかったが、コロナ禍による内食向け提案商品の増加など受賞商品にも時代の変化の「今」が色濃く反映した形となった。
令和2年度「第39回食品ヒット大賞」選考委員会は11月26日、東京・ホテルニューオータニで開催された。全国の有力小売、卸など90社のモニター企業に推薦を依頼、65社(回答率72.2%)からの回答があった。ノミネートされた商品について慎重かつ厳正な選考審査を行って決定した。
2020年は言うまでもなく新型コロナウイルス感染症拡大が世界的な影響をもたらした年であった。誰も経験したことのない環境変化が、国民の生活様式をも大きく変え、非対面接触での活動の増加によって「食」の分野でも消費行動や商品面に大きな変化があった。今回の受賞商品にもそれらが色濃く表れている。
まず大幅に増えたのが「本格志向」を訴求する商品。コロナ下の外食自粛で内食の巣ごもり需要に対応。素材感アップや原材料の見直し、新しい製法など、家庭でも一味違う本格的な品質を訴求する商品が目立った。外食ができない状況でもおいしいものを食べたい消費者の姿が垣間見える。
「健康」志向はコロナ禍でより一層ニーズが顕著になった形だ。免疫力アップや糖質オフ、タンパク質摂取など今後も拡大していくとみられる。
「簡便」は具材とともに煮るだけ・炒めるだけで一品ができ、誰でも簡単に作れる手軽さ・時短提案が支持された。
「新価値」は、おつまみの主役としての海苔や、発酵によって新たな食感・質感を得た豆腐など、新たな食シーンを切り開いたキラリと光る商品が注目を集めた。
「本格志向」「健康」「簡便」「新価値」へのニーズはこれまでも中長期的に起きていた傾向だが、コロナ禍はそれを大きく加速したといえる。
モノ自体に自明の「価値」があり、作れば売れたのは過去のものだ。今は顧客と一緒に創造し、顧客に使用されることで初めて「価値」が生じる時代。出生数の減少をコロナ禍が加速するとの予測もあり、「人の口」が急激に減少していく時代には、すべてを顧客起点で考え、自己変革と成長を継続できる攻めの組織に変わることが欠かせない。
ごあいさつ
優秀ヒット賞19品・ロングセラー賞6品 新技術・食品開発賞、価値アップの6品表彰
令和時代連続「ヒット大賞」なし
日本食糧新聞社制定・令和2年度「第39回食品ヒット大賞」(選考委員長=亀井昭宏早稲田大学名誉教授)および「第34回新技術・食品開発賞」(選考委員長=岩元睦夫農林水産技術会議元事務局長)の受賞商品が、それぞれ決定いたしました。
「食品ヒット大賞」は昭和57(1982)年、日本食糧新聞・創刊40周年を記念して制定、食品業界・有力卸売業を代表するトップ経営者を選考委員に依頼、さらに現在90社のモニター企業さまの力強い提案など全面ご支援をいただいて開催しています。
残念ながら想定外のコロナ禍の影響も色濃く反映してか「ヒット大賞」は令和に入り2年連続「該当なし」となりました。
令和2年度の「優秀ヒット賞」の受賞商品はコロナ応援食をはじめテレワーク、外食産業、業務用の打撃を背景に、新技術や変わる新ニーズの先取り、新容器活用による新開発、健康元気、さらなる簡便性や上質感、一方で格安感など、さまざまなTPOに沿う期待感、商品価値を高める挑戦など消費者からの話題を呼んだ商品が多く見られ、各社の知恵と新しい気付きを競う商品開発力、マーケティング力、企業努力が正に分散型で評価されました。コロナ禍で自宅、家庭用食材が底上げした一年でもあり、非接触、外出低下の特殊な一年ともいえましょう。
しかし総体としては一極集中型の大型商品は誕生せず、分散型商材が多く、総体迫力という点では今後に課題を残した年ともいえます。移動なき社会のニーズ集約の難しさを垣間見た年となりました。
ロングセラー賞は非日常のさなか、確実に力をつけ、ここにきて環境変化とともに長きにわたりきらりと目立った商品がモニターの支持を受けました。10年以上にわたり消費者から「飽きない商品」として応援をされてきた点は見逃せません。
「新技術・食品開発賞」は、新技術を駆使して商品開発に取り組み、今後の成長・拡大が楽しみな技術力を持った商品に授与されるもので、今回も新技術や先端性、その応用商品など高い評価を得た6商品が受賞しました。コロナ禍と新技術の融合は新しい価値提供でもあったと考えます。
両賞の受賞商品は、いずれも健康志向、簡便性、個食対応、価格志向など食生活向上への貢献、新技術による機能と味を組み合わせた新価値創造、巧みな価値発信など、各社の優れたマーケティング力とのコラボを感じさせるものでした。あの手、この手、身近な手、そして次の先読みなどくるくる変わる消費者の心の奥底が探りにくい一年でもありました。社会の変化とともに売れる要因が激しく揺れ動いた年も実感しました。
日本食糧新聞社では、今後も当社の社是である食品産業・流通・関連産業への「提言紙・世論紙・応援紙」という報道基本方針を胸に、時代背景から報道方法が新聞からWebへと大きく変わりゆく中でも情報だけではなく、配信システムの最新化をも加え続けてまいります。どうぞ引き続いてのご理解とご協力、ご支援をお願い申し上げます。
第39回食品ヒット大賞
第39回(令和2年度)大賞なし、優秀ヒット賞19品・ロングセラー賞6品に栄誉
講評
令和2年度「第39回食品ヒット大賞」選考経過報告
令和2年度(第39回)「食品ヒット大賞」の選考委員会は、昨年11月26日に選考委員6人の出席〈1人欠席〉を得て、開催された。
今年度は昨年を上回る、延べ2218件の推薦を65社のモニター企業さまから得て、各部門の授賞食品を選出するため白熱した議論が交わされた。しかし、残念ながら「ヒット大賞なし」の結論に至った。
例年とは異なり、「一般加工食品」部門の「優秀ヒット賞」授賞食品が11品、「ロングセラー賞」部門で6品が選出されたが、「酒類」部門、「チルド食品・フローズン食品」部門および「菓子・パン」部門の授賞が2~4品の少数にとどまり、全体としては25食品の授賞食品を選出する結果となった。
これは、突出した推薦件数や推薦の辞を得た食品がなかったという決定的な事実によるものであったが、その主な原因は、令和2年度の初頭から勃発した新型コロナウイルス禍のまん延による「緊急事態宣言」の影響に加えて、少家族化や個食化の傾向などによって食品の店頭購入が減少し、Webなどの非対面販売を利用した少量・高頻度・計画購入という購買行動の激変によるものと推測される。
一日も早く抗コロナワクチンが普及して人々の日常生活が元に復し、食品業界をはじめとする産業界の再隆盛を心から祈念したい。
選考委員
優秀ヒット賞(部門別、社名五十音順)
ロングセラー賞(発売年)
受賞商品
優秀ヒット賞
一般加工食品部門
エスビー食品 本挽きカレー(中辛・辛口)
記事はこちら→優秀ヒット賞=エスビー食品「本挽きカレー(中辛・辛口)」
大森屋 バリバリ職人
記事はこちら→優秀ヒット賞=大森屋「バリバリ職人」
サントリー食品インターナショナル サントリー緑茶 伊右衛門
記事はこちら→優秀ヒット賞=サントリー食品インターナショナル サントリー緑茶「伊右衛門」
日本コカ・コーラ ファンタ プレミアシリーズ
記事はこちら→優秀ヒット賞=日本コカ・コーラ「ファンタ プレミア」シリーズ
Mizkan ミツカン フルーティス
記事はこちら→優秀ヒット賞=Mizkan「ミツカン フルーティス」
ヤマサ醤油 ヤマサ ぱぱっとちゃんと これ!うま!!つゆ
エバラ食品工業 黄金の味 さわやか檸檬
記事はこちら→優秀ヒット賞=エバラ食品工業「黄金の味 さわやか檸檬」
キリンビバレッジ キリン iMUSEシリーズ
記事はこちら→優秀ヒット賞=キリンビバレッジ「キリン iMUSE」シリーズ
日清食品 日清これ絶対うまいやつ!
記事はこちら→優秀ヒット賞=日清食品「日清これ絶対うまいやつ!」
ハウス食品 ハウス ごちレピライス
記事はこちら→優秀ヒット賞=ハウス食品 ハウス「ごちレピライス」
明治 TANPACT(タンパクト)シリーズ
酒類部門
アサヒビール アサヒ ザ・リッチ
記事はこちら→優秀ヒット賞=アサヒビール「アサヒ ザ・リッチ」
サッポロビール サッポロ GOLD STAR
記事はこちら→サッポロビール「サッポロ GOLD STAR」
キリンビール 一番搾り 糖質ゼロ
記事はこちら→優秀ヒット賞=キリンビール「キリン一番搾り 糖質ゼロ」
チルド食品・フローズン食品部門
相模屋食料 BEYOND TOFU
記事はこちら→優秀ヒット賞=相模屋食料「BEYOND TOFU」
菓子・パン部門
アサヒグループ食品 1本満足バー プロテインシリーズ
湖池屋 湖池屋プライドポテト
記事はこちら→優秀ヒット賞=湖池屋「湖池屋プライドポテト」
ロングセラー賞
築野食品工業 こめ油
記事はこちら→ロングセラー賞=築野食品工業「こめ油」
森永製菓 チョコモナカジャンボ
記事はこちら→ロングセラー賞=森永製菓「チョコモナカジャンボ」
ヤマザキビスケット チップスター
記事はこちら→ロングセラー賞=ヤマザキビスケット「チップスター」
ギンビス アスパラガスビスケット
記事はこちら→ロングセラー賞=ギンビス「アスパラガスビスケット」
ブルボン ルマンド
記事はこちら→ロングセラー賞=ブルボン「ルマンド」
霧島酒造 黒霧島
記事はこちら→ロングセラー賞=霧島酒造「黒霧島」
第34回新技術・食品開発賞
第34回(令和2年度)新技術・食品開発賞 独創性・市場性優れる6品
講評
令和2年度「第34回新技術・食品開発賞」選考経過報告
コロナ下、課題多い年 積極的な食品開発に敬意
日本食糧新聞社制定第34回「新技術・食品開発賞」の選考委員会は、令和2年12月1日、日本食糧新聞社・食情報館(東京都中央区)で開催された。審査には8人の委員があたり、開発目標・独創性・学会などでの評価および市場性などの視点から慎重に評価を行った結果、以下の6品が選考された。
開発した新規粉砕法によりコーンスターチやデキストリンなどの固結防止剤を用いなくても50日間以上固結しない粉糖「粉糖初雪 純糖タイプ」(上野砂糖)、固形ルウと調味料粉末を混合しながら粉砕し粉粒状カレールウを製造するパウダールウ製法による「本挽きカレー(中辛・辛口)」(エスビー食品)、豆腐を主原料に大豆臭が抑制され食感が改善された植物たんぱく新素材でチルド流通の「ソイルプロ そぼろタイプ」(ニップン、オーケー食品工業)、酸性下で乳タンパク質が凝集する課題を克服した酸性タイプの筋肉増強効果が高い乳タンパク質飲料「ザバス MILK PROTEIN」シリーズ(明治)、免疫反応抑制効果が明らかにされた乳酸菌ヘルべを利用したヨーグルト市場初の「目や鼻の不快感を緩和する」機能性表示食品の「乳酸菌ヘルべヨーグルト ドリンクタイプ」(雪印メグミルク)、金型冷却プレス法でシェルの厚さを揃え食べ心地に改善を加えたミルクチョコレート「ラミー」(ロッテ)。
本年度はコロナ禍の影響から、食品製造業も様々な課題を抱えた年であったと思われる。そんな状況下で積極的に応募いただいた各社に対し心より敬意を表する。
選考委員
新技術・食品開発賞(社名五十音順)
受賞商品
上野砂糖 粉糖初雪 純糖タイプ
記事はこちら→新技術・食品開発賞=上野砂糖「粉糖初雪 純糖タイプ」
ニップン/オーケー食品工業 ソイルプロ そぼろタイプ
記事はこちら→新技術・食品開発賞=ニップン/オーケー食品工業「ソイルプロ そぼろタイプ」
雪印メグミルク 乳酸菌ヘルベヨーグルト ドリンクタイプ
エスビー食品 本挽きカレー(中辛・辛口)
記事はこちら→新技術・食品開発賞=エスビー食品「本挽きカレー(中辛・辛口)」
明治 ザバスMILK PROTEIN脂肪0シリーズ
記事はこちら→新技術・食品開発賞=明治「ザバス MILK PROTEIN」シリーズ
ロッテ ラミー
記事はこちら→新技術・食品開発賞=ロッテ「ラミー」