未病対策特集 薬膳/薬用作物編

◆未病対策特集 薬膳/薬用作物編:ヘルス&ビューティーで健康寿命延伸

総合 2019.10.16 11956号 04面
薬膳などに使われる薬用作物の高麗ニンジン。古来から伝わってきた伝統植物だ

薬膳などに使われる薬用作物の高麗ニンジン。古来から伝わってきた伝統植物だ

 近年、「未病」という言葉が一般的になりはじめてきた。生活習慣病のまん延、高齢人口の増加、それに伴う医療費の高騰などで、国民の健康に対する意識は高まりを見せている。健康であることは、幸せな人生を過ごすことができる前提であり、その先には“美”につながる楽しさがある。本特集では未病対策の第一人者の声を取り上げるとともに、この分野で活躍する企業・団体の動向を特集。本紙では今後もテーマを変えて、「未病」に関わる企画を実施していく予定だ。(藤村顕太朗)

 ●医療費削減に大きく貢献

 紀元前200年以前に編さんされたとされる中国最古の医学書「黄帝内経」には、以下のくだりがある。「聖人不治已病治未病、不治已乱治未乱、此之謂也。夫病已成而後薬之、乱已成而後治之、譬猶渇而穿井、鬥而鋳錐、不亦晩乎」(聖人は病気を治すのではなく未病を治す。世の中の混乱を治めるのではなく混乱を予防する。混乱してから治めるのでは、喉が渇いてから井戸を掘り、戦いが始まってから武器を作るようなもので、遅すぎではないか)。これが「未病」という言葉の初出とされる。

 「未病」とは、病気と明確に区分できるわけではなく、病気になる手前の不快症状を指す。具体的には、自覚症状はないが検査で異常が見られるものと、自覚症状はあるが検査では異常がないというケースがあり、高脂血症、糖尿病、高血圧などは「未病」とされている。

 近年、西洋医学では十分に対応できない生活習慣病が増加。また、高齢化社会の進展により、加齢で心身が衰えた状態の「フレイル」にどう対応していくかが注目されている。こうしたいわゆる「未病」に対して、東洋医学的な治療方法が注目されている。その代表格である漢方医学は、源流である中国の伝統医学「中医学」の理論をベースとし、その理論を駆使して調理した薬膳によって、病気を防ぎ体の健康を維持しようという動きがある。

 その薬膳などに使われている薬用作物(生薬)には、高麗ニンジンをはじめ、マカやヨモギなど古来から伝わってきた伝統植物があり、その効果効能に対するエビデンスが蓄積されはじめている。また、こうした薬用作物のエキスを抽出したサプリメントは、日常忙しい現代人にとって手軽に摂取し健康に寄与できるものとして重宝されている。

 富士経済がまとめた「H・B(健康・美容)フーズ市場」調査によると、その市場規模は13年に2兆円を突破し、15年に機能性表示食品制度がスタートしてから好調に推移している。来年は東京オリンピック・パラリンピックの年だが、23年にはスポーツ関連食品・サプリメントは17年比23.8%増と予測。また、DHA・EPA、イチョウ葉などの認知機能サポート商品については、23年に17年比44.7%増に成長拡大することが見込まれている。

 日々、自分の体の状態をセルフコントロールできることは、医療費の削減につながることになる上、“健康美”も実現でき、オールジャパンとして貢献度は高い。中国・宋(960年~1279年)時代に編さんされた、中国最初の高齢者向け養生専門書「養老奉親書」には、「人若知其食性、調而用之、則倍勝於薬也…善治薬者不如善治食」(食物の性味、効能を知り、適切に運用すれば薬より効き目は優れている…薬で治療する者は、食物で治す者に及ばない)とある。食の持つ底力に期待がかかる。

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