全国外食産業・業務用卸特集
全国外食産業・業務用卸特集:家計調査動向・外食=年間外食支出額1.7%増
総務省統計局(6月7日公表)の「家計調査報告(外食)2018」によると2018年の1世帯当たり(2人以上の世帯)の全国年間外食支出額は17万1571円と前年より2925円(前年比1.7%増)と微増。業種別では、「和食」2万2813円(同620円減、同2.6%減)、「飲酒代」1万8861円(同1260円増、同6.0%増)、「すし」1万5091円(同414円増、同2.8%増)、「洋食」1万3424円(同345円増、同2.6%増)、「焼肉」7163円(同85円増、同1.2%増)、「喫茶代」6761円(同340円増、同5.3%増)、「中華そば」6576円(同608円増、同10.2%増)、「日本そば・うどん」6164円(同148円増、同2.5%増)、「中華食」4889円(同115円増、同2.4%増)、「ハンバーガー」4099円(同351円増、同9.4%増)。全体的には、「和食」の支出額は落ちたが、他の業種は前年を上回っている。
●2位の岐阜市 和食、中華食、喫茶代トップ
「外食」の支出額が多い都道府県は、1位「東京都区部」25万5301円(前年1位、前年比7573円増、同3.1%増)、2位「岐阜市」22万2227円(同6位、同1万7036円増、同8.3%増)、3位「川崎市」22万0891円(同3位、同4531円減、同2.0%減)で以下「千葉市」「静岡市」「さいたま市」と続き、傾向としては首都圏・中部圏の外食支出額が高く、低いのは52位「青森市」、51位「和歌山市」、50位「秋田市」の順。「青森市」「秋田市」は、酒類購入金額が高いことから、家呑み文化が根付いているからではないか。また「和歌山市」は「配偶者有業率」が全国一低いため、内食が強いと思われる。
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東京都区部に続く2位の「岐阜市」は外食への支出が高く、「和食」「中華食」「喫茶代」で1位、「すし」3位、「洋食」4位、「焼肉」5位と多業種で上位に位置している。特に「和食」は5万2570円(同9759円増、同22.8%増)で、2位の「佐賀市」3万7688円に1万4882円もの差をつけている。「岐阜市」は、人口10万人当たりの「魚屋店舗数」が一番少なく、「カレールウの支出額」も一番少ない。「和食」の素材といえば魚類が多く、また同報告(外食)には「カレーライス」も「和食」に含まれる。「カレールウの支出額」が少ないのは、「カレーライス」の外食頻度が高いということであり、それで「和食」の支出額が多くなっているのではないか。また、「名古屋市」も「和食」前年1位というように常に上位に位置し、日本一のカレーチェーン「CoCo壱番屋」、しゃぶしゃぶの「木曽路」など和食系有名チェーンの本社があることも一因ではないか。
また、「岐阜市」は、「名古屋市」(2位)と並ぶ喫茶大県だ。特にモーニングサービスの充実ぶりは目を見張る。コーヒー1杯の価格でトースト、ゆで卵、サラダだけでなくうどんに茶わん蒸しまでがサービスで付いてくる喫茶店もあるほどだ。また、ランチもお値打ちで食事需要にも対応している。
モーニングサービスの由来は愛知県一宮市といわれ、「繊維業が盛んだった1950年代、朝まで働いている人のためにサービスとして喫茶店のマスターがコーヒーにゆで卵をつけて提供した」のが起源ともいわれている。また、「はた織りの工場内は騒音がひどく、商談に喫茶店を利用していた」ということから繊維業の盛んな岐阜県、愛知県は喫茶文化が根付いたようだ。
しかし、人口10万人当たりの喫茶店数の全国1位は「高知市」。だが、「喫茶代」では16位、ちなみに人口10万人当たりの飲食店数の全国1位は「那覇市」だが、「外食」では48位だ。「那覇市」であれば観光客ターゲットの店舗が多いというように、必ずしも店舗数と家計消費は相関関係にはならない場合もある。
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「すし」「日本そば・うどん」「中華そば」は人口当たりの店舗数と支出金額は相関関係にある。
「すし」は、「金沢市」が1位。「金沢市」は、新鮮な魚介類が集まり、石川県は回転すし用ベルトコンベア発祥の地で、現在もほぼ回転すし用ベルトコンベアの100%が石川県産だ。ちなみに「金沢市」は焼肉店舗数でも1位。2016年は「焼肉」でも1位になり、「焼肉」「すし」と国民食の2冠を達成した。16年は「金沢市」に有名高級焼肉チェーン「叙々苑」がオープンしたことも一因として挙げられる。
「日本そば・うどん」は「高松市」が1位、「中華そば」は「山形市」が1位となっている。「高松市」は、香川県が「うどん県」と名乗るほどの讃岐うどんの産地であり、地元に根付いている。また、「日本そば・うどん」の最下位は「那覇市」。51位の「和歌山市」と比較してもダブルスコアの開きがある。沖縄の麺といえば「ソーキソバ」であり、地域性がよくわかる。
「中華そば」1位の「山形市」は「赤湯ラーメン」「とりもつラーメン」「冷やしラーメン」などのご当地ラーメンが数多くあり、地域に根付いている。
●単身世帯は減少傾向 焼肉、ハンバーガーのみ増加
今回の家計調査で大きな伸びを見せたのが「焼肉」で1位となった「高知市」。支出金額は1万9681円(同6位、同9456円増、同92.5%増)と驚異的な伸びだ。
高知市に問い合わせたが「焼肉が特に盛り上がっている情報はない」との回答だった。高知県畜産振興課は「ブランド牛『土佐あかうし』の生産量が増え、認知度が上がっているのが一因では」ということだった。「高知市」は「飲酒代」も断トツ1位だ。その理由は高知独特の「おきゃく文化」があるからだ。「おきゃく」とは土佐弁で宴会のことだ。そして「献杯・返杯」の習慣があり、飲酒量が増えるためだ。この「飲酒代」と「焼肉」との相関関係があるのかとも考えられるが、他の都市を見るとそういう相関関係も見えない。しかし、「焼肉」が「家計調査(外食)」の項目で「洋食」から独立したのは、15年からとまだ4年しか経っていない。成熟産業といわれる外食産業の中でも、「焼肉」は、まだ伸びしろが大きい業態といえる一つの証なのではないか。
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参考までに一番増えている単身世帯の外食支出の推移を掲載する。
2018年の外食支出は14万7767円と前年より6236円減少(同4%減)している。15年との比較では2万0471円(同12.2%)の大幅減と完全なダウントレンドとなっている。前年を上回っている業種は「焼肉」5606円(同213円増、同3.9%増)、「ハンバーガー」1902円(同193円増、同11.3%増)、「他の主食的外食」4万5029円(同1112円高、同2.5%増)のみ。
「焼肉」は2人以上の世帯、単身世帯共に伸びていることから肉ブームはまだ続くだろう。また、一人焼肉で焼肉ファストフード業態を打ち出している「焼肉ライク」や新たな一人焼肉業態の出店が今後も拡大すれば、さらなる伸長が見込める有望な市場だ。「ハンバーガー」は、大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドの回復が大きい。「他の主食的外食」については、業態が絞れず、伸びている要因は不明だ。
特に落ち込みが大きいのは、「和食」2万0245円(同2101円減、同9.4%減)、「中華食」3428円(同808円減、同19.1%減)、「洋食」7363円(同2121円減、同22.4%減)というごちそう的な食事だ。また、前年からの落ち込みは低いが、「飲酒代」は11年との比較で1万1625円減(22.9%減)。だからといって家呑みが盛り上がっているわけでもない。「酒類」2万2382円(同3013円減、同11.9%減)と落ち込んでいる。アルコール離れは深刻だ。
一方、「外食」の代わりに伸びているのは「調理食品」、いわゆる中食だ。「調理食品」は8万3911円(同1683円増、同2.0%増)であり、11年からの推移をみても着実に伸び、「外食」「中食」の垣根がどんどん無くなっていることがわかる。消費増税に伴う軽減税率がスタートすれば、さらに「中食」との競争が激化するのではないか。
※参考文献など
・総務省統計局「家計調査報告2018(外食)」
・日本食糧新聞「2019都道府県Deta Book」
・ホームページ「地域の入れ物」飲食店の都道府県ランキング(2014年)