本格焼酎特集

◆本格焼酎特集:「炭酸割り」で広がる新たな接点づくり 蒸留酒として世界へ

酒類 特集 2019.05.13 11875号 06面

本格焼酎業界では今、既存の顧客基盤を大切にしつつ、「炭酸割り」提案、新たな切り口での商品開発などを通じ、若年層や女性との接点を増やそうとする動きが目立つ。洋酒事業を手掛け、そこから得られる知見を本格焼酎分野に生かそうとする企業もある。「将来へ向け市場を創造する」という共通の目標に対し、各社はそれぞれの個性や強みを生かしながら挑んでいる。こうした胎動の一つ一つが、本格焼酎の新たな時代を築き上げていく。

海外で本格焼酎の認知を広げようとする取組みも広がり始めた。日本発の蒸留酒として、世界へどう魅力を伝えていくのか。メーカーを含めた関係者の間で試行錯誤が続く。造り手の思いといった商品背景、各原料別特徴の訴求、浸透が図りやすい飲み方の提案、現地に合わせたデザインの検討–こうした課題へじっくり向き合い、和食人気や日EUの経済連携協定(EPA)といったグローバル化の波を生かしていくことも重要となりそうだ。(大屋良太、浜岡謙治、藤林敏治、丸山正和)

日本酒造組合中央会がまとめた18年(1~12月)の本格焼酎課税移出数量は42万5309klと前年の45万0830klと比べて5.7%減少した。原料別でみると「芋」が18万9884kl(構成比44.6%)で前年比7.5%減。「コメ」は3万6458kl(同8.6%)で5.4%減。「麦」は17万6610kl(同41.5%)で4.0%減。「そば」は8725kl(同2.1%)で7.5%減。以下、その他となる。

「炭酸割り」提案は、若年層へ向けた入口として取り組む蔵元が多い。新たなスタイルでまず接点を作り、本来の香りが生きた「お湯割り」を楽しむファンを育成する流れが業界全体でも広まりつつある。イベントなどで消費者に対し、直接試飲の機会を設けることで新鮮さ、飲みやすさを実感してもらう。料飲店へ対しドリンクメニューとしての提案を強化し、取り扱い店舗を拡大することで浸透を図る。こうした各社のアプローチで、「炭酸割り」への支持は少しずつ広がり始めた。

海外では輸出が好調な日本酒に比べ、これまで認知度が低かった本格焼酎。そんな現状を打開しようという動きが活発化している。特に注目されているのがカクテルとしての用途提案。米国のニューオーリンズで開催される「テイルズ・オブ・ザ・カクテル」には、日本酒造組合中央会が蔵元と一緒に毎年参加(昨年で3回目)。また、国外の著名なバーテンダーやミクソロジストを、蔵元に招聘(しょうへい)する取組みも行われている。双方で行き交う関係が世界規模で展開され、本格焼酎の認知向上に期待が高まる。味わいや風味がある本格焼酎。この特徴ゆえに、カクテルベースとして使うことで「新しいもの」が出来上がるという面白さを評価するバーテンダーも出てきている。

カクテルに関連した動きは国内にもある。昨年は「第1回本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」が開催された。訪日観光客が最初にお酒を飲む機会が多いホテルのバー。この業態で本格焼酎、泡盛のカクテルを広めることを目的とした競技会だ。当日は日本ホテルバーメンズ協会の全国12支部で予選を勝ち抜いた、20人のバーテンダーによる決勝戦が繰り広げられた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の動きとしては、昨年9月米国のサンフランシスコで本格焼酎の商談会が開催された。鹿児島県を中心に9社が集まり、消費者向け試飲イベントも実施。米国では「蒸留酒はバーなどで食後酒として飲まれるケースが多い」「原酒に近いアルコール度数の高いものが好まれる」という特徴も見えてきた。2月に発効した日EUの経済連携協定(EPA)では、単式蒸留焼酎の容量規制が緩和されている。これまで、700mlや1750mlなど決められた容量でしか販売できなかったが、四合瓶、一升瓶での輸出も可能となった。国内ではさまざまなシーンで若年層や女性との接点を増やし、未来のファンを開拓する。同時に、こうした世界市場を見据え「日本の蒸留酒」として存在感を高めていくことが、今後の市場を構築する上で重要になってくると予想される。

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