本格焼酎特集

◆本格焼酎特集:テーマ性を持った売場が登場 炭酸割り、RTDで間口広げる

酒類 2021.05.10 12225号 04面

 日本酒造組合中央会がまとめた20年(1~12月)の本格焼酎課税移出数量は、39万6383klとなり前年の40万9023klと比べ3.1%減だった。減少率は前年同期並みとなっている。原料別で見ると「芋」が17万6803kl(構成比44.6%)で前年比2.9%減、「麦」は16万8354kl(同42.5%)で同1.7%減、「コメ」は3万1507kl(同7.9%)で同8.9%減、「そば」は7641kl(同1.9%)で同4.4%減となっている。(大屋良太)

 ●業務用・家庭用で明暗はっきり

 コロナ禍による影響では、業務用、家庭用で明暗がはっきり分かれた。業務用では、居酒屋などの営業自粛や時短営業で、瓶商品を中心に各社は苦戦。2回目の緊急事態宣言が解除された後も、変異株の広がりもあり感染は一部で拡大傾向に。依然として先が読めず、戦略を立てにくいのが実態だろう。

 一方で家庭用は、パック製品を中心に堅調に推移する。既に一定の支持を獲得し、ブランド認知度が高い銘柄ほどこの傾向は強い。他の食品分野同様、消費者による「指名買い」も影響しているとみられる。また、本格焼酎売場にテーマ性が目立ち始めたのは最近の新しい動きだ。「香り系」「キャラクター系」といったくくりを演出する小売業が出てきている。いずれも、話題性を意識した新しい切り口だ。発売当初の斬新さを、一つのジャンルへ育成していくためには時間はかかる。一方で、「来店客が魅力を感じる売場」には取り扱う小売業も敏感。業界全体で、こうした商品テーマを構築していくことで新たな可能性が見えてくるかもしれない。

 RTD市場の活況は、依然として根強い。炭酸割りに関しては、最大手の霧島酒造が昨年本格的なプロモーションを開始した。炭酸割りへの適性を考えた商品も、既に各社から出ている。主要銘柄をベースにしたRTD缶。これが一部広がり始めた点も特筆に値する。将来的に「本格焼酎本来の魅力」を伝えることを見越し、広げた間口で入ってきた顧客をどれだけ増やせるか注目が集まる。

 発信手法では、Web分野での活動が目立ってきた。オンラインイベント開催、SNSを通じた新たな発信など。各社で挑戦と模索が続く。昨年度の全国地域ブランド総選挙で大学生がSNSで発信したスタイルは、一緒に取り組んだ球磨焼酎酒造組合にとっても新鮮だったという。情報があふれる現代社会。コロナ禍を踏まえたうえで、若い世代の心をとらえる発信をいかに構築するか。当面の大きなテーマとなりそうだ。

 輸出関連では、「本格焼酎・泡盛」について政府が2025年の輸出額目標として40億円を掲げている。中国向けでは、地域的な包括的経済連携(RCEP)による段階的関税撤廃を追い風に輸出拡大を推進する予定。米国ではバーやレストランでの消費拡大に向け、バーテンダーなどをターゲットとした情報発信を通じ、販路開拓・認知度向上に取り組む。九州経済産業局が中心となった取組みには、フランスの「Kura Master協会」との関係強化がある。昨年7月にリモートでの蔵元紹介、商談会を実施。今年2月には第2回目も開催した。また日本貿易振興機構(ジェトロ)は昨年10月、焼酎・泡盛輸出促進に向けたデジタルプラットフォーム「バーチャル焼酎館」を開設した。海外向けの動きは各方面で活発化。今後も目が離せない。

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