低糖質商品特集
◆低糖質商品特集:食品カテゴリーの拡充進む 購入選択肢が多様化
糖質オフに関する健康維持・増進効果の認知度上昇を背景に、低糖質商品の市場が伸びている。この数年で市場へ多数のメーカーが参入し、SMなど小売業の間でも店頭で専用コーナーを設ける動きも定着。商品ジャンルの多様化により、かねて市場の課題だった食品分野の種類の少なさをカバーし、バランスの取れた構造も形成しつつある。商品選択肢の多様化で今後も市場の伸びが見込める一方、購入側の商品やブランド選別も進むなど、競争環境は厳しさを増してきそうだ。(篠田博一)
●市場は着実に成長 19年度3600億円規模へ
富士経済の調査によると、18年度の糖質オフ・ゼロ市場は前年比4.6%増の3514億円に拡大し、19年度は同2.8%増の3612億円へ伸びる見込み。生活習慣病予防やダイエットのニーズなどに加え、近年の「ロカボ」(緩やかな糖質制限)ブームがけん引する格好で堅調に拡大している。長期的に続く食の健康トレンドを背景に、毎年新たな切り口が出ては消えていく中、低糖質市場は一過性のブームにとどまらないポジションを確立するとともに、堅実な成長軌道へ乗ったといえそうだ。
市場の約9割はまだアルコール系飲料が占めるとみられるが、食品カテゴリーでも商品ジャンルの多様化が進み、従来の麺や菓子・パン類だけでなく調味料や冷凍食品、飲料などへ裾野が拡大。SMの惣菜デリカ売場でも低糖質の商品開発が進むなど、購入側の選択肢が増える展開が進んできた。
一般市場での低糖質商品は2000年代初頭、ビール大手が健康軸の切り口で投入したのが始まりとされる。また、国内糖尿病医療のトップドクターである山田悟氏(北里大学北里研究所病院)を代表理事に、13年に発足した「食・楽・健康協会」の医学的根拠に基づくロカボの普及活動を通じ、社会的な認知度が年々拡大。かつて糖尿病患者向けの食事だった糖質制限は健康な人の間でも、着実に広がりを見せている。
国内の糖尿病患者と予備軍は2000万人ともいわれ、医療費削減の視点からも、その改善は社会的にも重要なテーマ。特に中高年の4人に1人はメタボという実態もあり、こうした層が毎日続けられるような糖質オフ商品の開発は社会的な課題へ対応するとともに、企業にとって新たな商機となっている。
そうしたトレンドを背景に、今年度も小売や卸などの流通業は低糖質商品の販売姿勢を強めている。CVSではローソンが12日から大麦原料の低糖質・食物繊維豊富なベーカリーの品揃えを強化し、先行する「ブランパン」に続くヒットを狙う。
ファミリーマートは16年から開始したRIZAP監修商品のラインアップ強化を今秋も継続。セブンイレブンは9月から中食などオリジナル商品の栄養成分表示に糖質量の記載を始めるとともに、新たに「食・楽・健康協会」へ加盟したことから、今後、ロカボ対応を強化する可能性もある。
SMやGMSがドライグロサリーや日配商品売場で糖質オフのコーナー展開、専用POPなどで訴求する動きも根付いている。こうした小売業の専用コーナーの展開に一役買っているのが、卸最大手の三菱食品が販売する自社ブランド「食べるをかえる からだシフト」シリーズだ。
16年の発売時から糖質オフを面で訴求する戦略を進め、半期ごとにラインアップを順次拡大してきた。今秋はスムージーやもち、冷凍食品などの新商品を追加し、アイテムを62SKUまで増強(タンパク質商品を含む)。併せて「からだシフト」の業務用展開も重点ターゲットに掲げ、健康経営を掲げる企業の社食などへ供給を始めている。
メーカーの商品開発や流通業の販売強化で低糖質商品の露出度が大幅に高まった一方、今後の市場では選ばれる商品になるための競争がより厳しさを増してきそうだ。本紙調べでは昨年度の糖質オフの発売・参入件数は17年度比でほぼ倍増の勢いだったが、今年に入って終売や撤退の動きも目立つ。
市場の成長とアイテムの整理淘汰(とうた)が並行して進む中、消費者が継続的に利用できる味の良さや使いやすさなど商品力の向上ほか、未開拓のカテゴリーにおける糖質オフ商品の開発など、新たな差別優位性の追求が不可欠になりそうだ。