ロックダウンで冷凍野菜の需要急増 フランス冷凍食品市場は消費者の変化に対応

フランスでは2020年春から3度のロックダウンが行われ、夜間外出禁止令の最も強化された時期では午後6時以降は外出禁止だった。その影響で、フランス人の生活様式や食の消費行動にも変化があったようだ。

多様なカット済み野菜を冷凍

コロナ禍での変化の1つが冷凍食品の消費増加。スーパーマーケットでは2020年の冷凍製品の売上高増加率は11.6%増、冷凍食品専門店では29%増と急増した。

カットされた冷凍野菜・冷凍キノコ・冷凍豆などがショーケースに多く並ぶ

これは調理済みの冷凍惣菜だけでなく、カット済みの野菜や冷凍肉、冷凍魚なども含まれており、CSA(Conseil supérieur de l’audiovisuel =視聴覚高等評議会)の調査ではCovid-19状況の中で冷凍野菜の売上げは2019年と比較して数量ベースで8.5%増の成長を遂げている。

2020年春では数量ベースで冷凍野菜が31%増、秋の開始週には金額ベースで50%増となり、ロックダウンが消費の大きなピークとなった。

出典元
Covid-19 : les surgelés ont la cote depuis le premier confinement・Le Point

冷凍食品に高い信頼

フランスの冷凍市場売上高は90億ユーロ、約200万トンに相当する規模だ。オーブンや電子レンジで加熱してすぐに食べられる調理済み冷凍製品だけでなく、手早く簡単に調理ができ、生鮮食品と比較して賞味期限が長い冷凍野菜や冷凍肉・冷凍魚は、従来から共働き家庭が多いフランスでは日常的に重宝され定着していた。コロナ禍でロックダウンや夜間外出禁止となると一層優位となった。

売上げ増加が目立つ冷凍食品

消費者が消費する理由は保存性などその利便性に加えて、冷凍食品への高い信頼が支えている。

コロナ禍で消費が増えた冷凍野菜についてフランスで実施されたアンケートでは9割が冷凍野菜は「食事のバリエーションを増やす」「食品ロスを削減できる」「価格に見合った価値がある」「品質が良い」「健康に良い」と回答されている。2020年12月のアンケートでは85%が冷凍野菜の消費を増加させたいと答えており、高い信頼を得ているようだ。

出典元
Consommation : Les légumes en conserves et surgelés ont connu une hausse spectaculaire en 2020

冷凍食品専門店は環境対策も

フランス国内に約920店舗を展開し、日本を含め世界11ヵ国に店舗を持つ大手冷凍食品専門店Picardはどのように消費者の信頼を獲得しているのだろうか。食品安全や栄養価だけでなく、環境対策や動物福祉・食品安全・健康面などさまざまな角度から消費者の期待に応える企業努力があるようだ。

商品の70%がフランス産の食材を使用している。GMO(遺伝子組み換え作物)から生産される各食品成分・水素添加脂肪・塩分は無添加。すべての野菜・果物は旬の時期に収穫したものとうたっている。品質表示ラベルであるLabel Rougeの製品も多く使用する。

冷凍食品専門店Picardの店内掲示

加えて、環境面への配慮としてBio製品だけでなく「MSC(持続可能な漁業)認証ラベル」を積極的に取り入れ、パーム油の使用をゼロとした。欧州で広がる動物福祉への取組みとして、放し飼いの鶏の卵を使用した製品シリーズを開発し、遅くとも2025年までにすべてを変更するとしている。

コロナウイルス感染まん延防止のための外出自粛により、日本国内でも家庭での食事・料理の機会が増え家庭用冷凍食品の消費が高まっている。加えて、冷凍食品は女性の就業率の増加に伴う成長も期待できる分野であり、消費者のニーズに寄り添うことで日本でも今後さらに躍進していくのではないだろうか。(在フランス管理栄養士ライター 高城紗織)