全国学校給食週間特集
全国学校給食週間特集:「学校給食・食育総合推進事業」事例 静岡県袋井市
●社会的課題に対応するための学校給食の活用事例
文部科学省は1月29日、文部科学省第2講堂で令和元年度「学校給食・食育総合推進事業」事例発表会を行い、第1部「社会的課題に対応するための学校給食の活用事例」のテーマで静岡県袋井市、奈良県、徳島県の教育委員会から、第2部「つながる食育推進事業」では長野県、三重県、山口県の教育委員会から発表が行われた。第1部の社会的課題には地産地消、食文化の継承、食品ロスの三つのテーマがあり、それぞれ地域の特性を生かした取組みを、第2部のつながる食育推進では児童生徒が将来にわたって食の自己決定能力、自己管理能力を身につけることを栄養教諭が中心になって学校や家庭そして地域をつなぐ事例が発表された。袋井市の取組みを紹介する。
●静岡県袋井市の取組み:地産地消と食品ロス解消へ「野菜を食べよう」掲げて健康づくり
袋井市は人口8万8000人で、若い世帯が多く人口が増えている。1993年に日本一健康文化都市宣言を行って、人も町も健康になることを掲げ、食から始まる健康づくりでは「野菜を食べよう」を目標に掲げて市をあげて健康づくりを展開している。
2008年には袋井市第1次食育推進計画で学校給食での地場産活用目標値を設定して「野菜いっぱい普及推進事業(野菜いっぱいマークの設定)」をスタートさせた。ハード面では、2012~13年にかけて地場産活用を推進するための施設整備・他の2センターのシンク増設・機器増設や袋井市立中部学校給食センターを13年に開設。ライフステージを通じた食育推進基本計画を受け、袋井市全体として体制(ソフト)・施設機器(ハード)ともに整備し、学校給食における地場産活用を推進する準備を整えた。
しかし、袋井市の農産物はコメ・茶・メロンが3本柱で、学校給食で使う野菜はあまり作られていなかった。そこで、野菜類の年間使用品目と量を整理し、市内全域の農家を回って市場に出荷していない小規模農家には市内産を最優先して全量買い取りすることを周知して生産量を増加させた。こうした生産者とのコミュニケーションを密にすることで信頼関係を築いていった。
一方で、食に関する指導の年間計画では地場農産物活用を位置づけた。袋井北小学校は児童数1000人規模の大型小学校で、全校児童が野菜を育てることは難しく、農家に収穫体験に行くことで野菜を育てる苦労や工夫を聞いて収穫の喜びを体験することができるようになった。収穫体験に行った翌日に給食に食材として出てくることで、生産者への尊敬の念や郷土愛が深まり、給食は完食されるようになった。
また、地元の食材を使った学校給食コンテストや地場農産物に関する動画配信などを通じて地域に発信することで連携が深まっている。
一連の活動で献立での1食当たりの野菜使用量は2013年の89.76gが18年には105gに増えた。袋井市での地場産活用の経済的成果としては、主要10品目重量ベースでは13.8%から41.0%に増加し、使用金額では350万円から2571万円に増加した。
食品ロスでは、規格外農産物の活用を推進した。全量買い取りにしたことで、通常の給食で使用しにくい大きさ・キズなどがある農作物の活用を考えた。規格外玉ネギは炒め玉ネギに、規格外トマトは加工トマトピューレに、ジャガイモでは企画に合わせた料理、粉ふきいもやジャガイモの甘露煮を開発した。
農家からは「今まで捨てていた、色づきの悪いトマトを使って、あんなにおいしいトマトピューレができて感動した。規格外の大根も切り干し大根として使用でき、助かります」との声をもらっている。
こうした食品ロス改良への取組みは合計3700kgの廃棄予定野菜の活用を予定している。