近畿中四国小売流通特集

小売 2020.09.26
近畿中四国小売流通特集

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による長引く外出自粛や学校休校、テレワークの増加などで内食需要(巣ごもり需要)が高まったことが追い風となり、食品スーパーは概ね好調に推移している。保存性の高い加工食品だけでなく、家庭内で食事をつくる機会が増えたことで、生鮮食品(青果・畜産・水産)も売上げを伸ばしている。ただ、消費のパイが拡大したわけではない。むしろ人口減、少子高齢化の進行で縮小傾向にある。コロナ禍で外食を中心とした業務用分野の落ち込み分がシフトして上乗せになったに過ぎない。小売業界を取り巻く環境は依然厳しい。少子高齢化や人手不足対応、消費の二極化や激化する競合状況など課題は山積している。
 下期もしばらく内食化は続きそうだが、コロナウイルスによる世界的な経済悪化の影響で個人消費の低迷が懸念されており、消費者の生活防衛意識が高まると想定されるなど、先行き不透明感が強い。さらに関東圏で急成長している激安スーパー「ロピア」の関西進出でシェア争いはより一層激化する。
 コロナという不測の事態が発生し、地域のライフラインを担う食品産業(食品スーパー、卸、メーカー)の社会的意義をあらためて認識することになった。安定的に持続可能な経営を目指し、地域のライフラインとしての役割を果たすためには、顧客に信頼される店づくりが必須だ。常に顧客視点で考え、小売企業としての自社の立ち位置を明確にすることで、時代変化に柔軟に対応しながらも独自性を追求していく取組みをブレることなく、地道に継続しなければ、競合に打ち勝ち、生き残ることができない。
 (関西支社=廣瀬嘉一)