パリでは「おにぎり」や「メロンパン」が人気 コロナ禍で美食の国も激変
フランスにおける新型コロナウイルスの新規感染者数は、昨年11~12月に実施した2回目のロックダウンで抑えられたものの、解除後も毎日2万人超から減少することはなく、フランス政府は4月3日から全地域を対象とした3度目のロックダウンを決行した。昨年10月末からレストラン・バーでの店内飲食の禁止が続いているパリ市のオペラ界隈へ足を運ぶと、日本食を求める多くのパリジャンがいた。今回は、いまフランスで注目されている「日本食ファストフード」について紹介する。
場所を選ばず手軽に食べられる「日本のサンドイッチ」
現在のフランスでは、レストランやカフェなどの営業形態はテークアウトのみに制限されており、外出をすれば昼食に苦労する。2月後半から徐々に気温が上がり、外で過ごしやすい季節になると、公園や路上のベンチ、オペラ座前の階段といった道端で、テークアウトした食事をとるパリジャンの姿を多く見かけるようになった。
以前から日本食はパリでも人気が高く、寿司やラーメンはその代表格だが、近年その仲間入りをしているのが「おにぎり」だ。パリ市内でも日本食レストランが多いエリアであるオペラ地区でいつも賑わっているおにぎり専門店「OMUSUBI GOMBEI」には、取材当日も平日の早めの時間にもかかわらず、すでに行列ができていた。同店は、日本でも多数店舗展開している「おむすび権米衛」の海外支店だ。
店員に話を聞いてみると、人気が高いのはスパイシーチキン、海老天おにぎり、そしてサイドメニューの唐揚げとのこと。
また、メニュー表を見てみると、小麦を使用しないおにぎりはグルテンフリー対応であることや、梅や昆布などの具材を選べばビーガン対応となることなどの記載もあり、昨今の食トレンドとの親和性も高いようだ。
さらに持ち運びが容易で、食べる場所を選ばず、手軽に食べられるヘルシーな食事という点で、店内飲食ができない現在のフランスの環境では受け入れられやすくなっているのかもしれない。
パリ市内スーパーのおにぎりの具材は…
昨夏からは大手スーパーマーケット「MONOPRIX(モノプリ)」でもおにぎりの販売がスタートした。前述の「OMUSUBI GOMBEI」のおにぎりと異なるのは、ご飯が酢飯という点だ。そして具材はツナマヨ、スパイシーツナマヨ、ビーフテリヤキ、サーモンクリームチーズ、チキンマヨネーズ、キュウリフムス(ビーガン対応)、野菜(ビーガン対応)と幅広く、こちらも完全にローカライズされている。
包装は日本のコンビニと同じスタイル。パリパリの海苔のおにぎりを食べることができることがブランド名の「SHAKI SHAKI」につながっていると思われる。そして公式WEBサイトでは「日本のサンドイッチ」という紹介がされており、パッケージの裏側や公式サイトに開封方法が丁寧に説明されているのも印象的だ。
以前は「フランス人は海苔が好きではない」と耳にした記憶もあるが、日本アニメがフランスでは人気で、登場人物がおにぎりを食べるシーンを目にする機会もグッと増えたことで海苔の認知も広がっているようだ。
価格は、1個3.4ユーロ(約440円)と決して安くはないものの、発売から8ヵ月以上たった現在も、特に大きな公園近くの「MONOPRIX」には大量におにぎりが陳列されていることからも人気が定着していることがうかがえる。
パン屋のメロンパンバーガーも人気
今回、もう1つ紹介するのは、日本でも人気のメロンパンだ。フランスには街のあちこちにパン屋が並んでいる。その店舗数は非常に多いが、メニューは日本とはラインナップがかなり異なり、フランスにおいて主食としてのパンはバゲット、サンドイッチといえばバゲットサンド、菓子パンといえばクロワッサンやパンオショコラなど。
そんなパリ市内でオペラ地区の「AKI Boulangerie」ではあんぱんやカレーパンなど日本でおなじみの種類のパンが販売されている。そして、人気メニューの1つがメロンパン。シンプルなものだけではなく、生クリームやフルーツを挟んだ「メロンパンバーガー」という商品が、最近では流行っているようだ。
シンプルなメロンパンは1個2.2ユーロ(約280円)、メロンパンバーガーは1個4.2ユーロ(約540円)。一般のパン屋のバゲットやクロワッサンが1個1ユーロ前後なので、メロンパンバーガーは高級な部類ではあるが、平日はもちろん、休日には非常に多くのパリジャンが「日本のパン」を買うために列を成していた。1つ購入してみると、アイスクリームについてくるような小さなプラスチックスプーンもつけてくれたので、パフェやクレープを食べるような感覚なのかもしれない。
コロナ禍で「美食の国フランス」のレストランを取り巻く環境は激変した。テークアウトのみの営業を続けているレストランで提供されるメニューの多くはフォークやナイフを要し、温かいまま食べることを想定された料理が大半である。その中で、持ち運びが簡単で、冷めていてもおいしく食べられるおにぎりのような食品は貴重だ。コロナ禍での環境変化は、日本食文化のメリットを再認識させ、海外への浸透を後押ししている。(在フランス管理栄養士ライター 高城紗織)