アイスクリーム特集

◆アイスクリーム特集:巣ごもり消費で需要高まり反転攻勢へ

乳肉・油脂 2021.03.29 12207号 08面

 2019年度に一服感のあったアイスクリーム市場だが、コロナ禍での巣ごもり消費で新たな需要の高まりを追い風に、20年度は攻勢に転じた1年となったようだ。第1回目の緊急事態宣言以降、例年にないスピードでマルチを中心にした売上げが高水準で推移。7月の長梅雨や10月の台風頻発など天候要因によるマイナス影響を受けながらも、年間を通して前年を1~2%程度伸長して新たな年度を迎えそうだ。特に、他の食品カテゴリー同様、ニューノーマルの生活様式が与えた影響は大きく、在宅時間の増加は喫食シーンの多様化をさらに拡大。長引く不安感が募る生活の中で、「癒やし」としての情緒的価値の再認識が進んでいる。ただし、同時にCVSチャネルは伸び悩み、業務用チャネルの回復もまだ時間を要しそうだ。そうした今こそ、あらためてアイスクリームの持つ価値を新たな形で訴求する大きなチャンス。コラボ企画や定番アイテムのブラッシュアップなど、各社さまざまな強化策を進め、市場は新たなステージへと入っていきそうだ。(小澤弘教)

 ●今こそ新たな価値訴求を 「癒やし」など情緒面で貢献も

 1回目の緊急事態宣言発令で、巣ごもり消費が本格化し、外出自粛と買い物回数の減少が進行。SM中心にマルチのまとめ買いなどの需要が大きく高まった。商品によってはあまりの売れ行きに過去に例のない5月での製造出荷調整に追われるメーカーや、本来であれば後にくる季節品を前倒しで発売しなくてはならなかったメーカーもあったほどだ。一方、テレワークの浸透などで通勤頻度が減少。結果、パーソナル構成比の高いCVSや、自販機チャネルは客数減少が響いた。

 天候要因も単月で影響。本来であれば最需要期になる7月は、長梅雨による日照不足が全国的に続き、2年連続で単月マイナスを経験した。その後、関東甲信地方で13年ぶりなど、8月の梅雨明けとなったのちに猛暑が到来。8月単月は一転して氷菓中心に一気に売上げが加速し、前半戦を折り返した。

 下期に入ると、出だしは好調に推移したが、10月に過去最高となる7個の台風が発生し、多くのメーカーが苦戦。しかし11月以降の秋冬商戦では話題性の高い商品投入などで市場は活性化。上期にチラシ販促の休止などで伸び悩んだプレミアムアイスへの「日々のご褒美」ニーズが高まり、全体で堅調な後半戦となった。

 市場が活性化していく中で、トレンドにも変化が現れている。感染予防意識が高まる中、買い物へ行く頻度が減少したことで、アイスでも各社の定番・主軸品やロングセラーアイテムなどの購買が進んでいる。

 こうした市場環境の中、「チャレンジする所はチャレンジしていくことが必要」(メーカー)との認識のもと、21年度へ向けて各社積極施策を進めている。ニューノーマルの生活様式の定着で、在宅時間が増加したことで、これまでオフィスや外出先ではなかなか喫食機会のなかったアイスクリームを、間食として取り入れる消費者が増加傾向にあり、「職場にアイスが入り込める環境になった」(メーカー)ことは大きい。加えて「コロナ太り」に対する体調管理需要などもあり、糖質カットや高タンパク質、栄養強化などの健康系商材のニーズも高まっているようだ。

 20年度はマルチが市場のけん引役となっていたが、パーソナルタイプを成長軌道に再び乗せるために、各社施策を進めている。定番アイテムも含めてコラボ企画も根強い人気で自社の他カテゴリー商品や、他社ブランドとの企画に取り組むメーカーも多く、新たな顧客獲得が期待される。また、かつてのロングセラーアイテムなどの復活施策も、往年のファンの再獲得に寄与すると予想される。

 コロナ禍では、フローズンカテゴリー全体の価値が高まっているが、中でもアイスクリームは「癒やし」や「ねぎらい」といった情緒的価値を提供できることから、再成長に向けた積極策が進みそうだ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

  • アイスクリーム特集

    乳肉・油脂

     2019年度に一服感のあったアイスクリーム市場だが、コロナ禍での巣ごもり消費で新たな需要の高まりを追い風に、20年度は攻勢に転じた1年となったようだ。第1回目の緊急事態宣言以降、例年にないスピードでマルチを中心にした売 […]

    詳細 >