総合乳業特集
総合乳業特集:森永乳業・大貫陽一社長 独自性発揮しチャレンジする企業へ
◇新トップに聞く成長戦略と乳業界展望
独自性を発揮し、チャレンジを恐れない企業作りを目指す–2021年6月に就任した大貫陽一森永乳業社長は、コロナ禍で大きな変化を経験する時代の中で、新たなビジネスステージに向けたかじを取る。3ヵ年の現中期経営計画の最終年度を迎える今期までの企業体質強化をベースにさらなる飛躍を目指し、ビジネス戦略はもちろん、健康・栄養面での貢献を目標に掲げていく。ビフィズス菌など同社ならではの素材を生かした商品開発やサービス提供はもちろん、サステナビリティ活動など、バランスのとれた経営を進める方針だ。同社の成長戦略と乳業界の展望について聞いた。(小澤弘教)
◆健康・栄養で貢献図り飛躍
21年はコロナ禍に明け暮れた1年だった。内食需要が高まり、健康への意識が大きく高まった一方、業務用はインバウンド需要喪失が戻らず、業界全体で見ればプラス・マイナスの両面のあった1年だったと思う。生乳生産量は、国や業界団体の努力もあり、北海道で3年連続、都府県で2年連続の増産基調となっているが、コロナ禍の業務用需要の減少でなんとも難しい形になっている。当社としても可能な限りの生乳処理や、新商品含め需要喚起を進め、乳原料を活用していきたい。
●経営基盤の強化から拡大へ
当社は現中計の柱として、BtoC、ウェルネス、BtoB、海外の4事業を推進してきた。ここ数年はプロダクトミックス(PM)改善や資本効率の改善に注力し、少しずつ筋肉質の会社に変わってきた。21年はBtoBで厳しさが続いたものの、チーズなどBtoC事業が堅調。中でもヨーグルトやアイスクリームがけん引した。ヨーグルトでは、「トリプルヨーグルト」など機能性表示食品を中心にお客さまの支持が続き、アイスクリームも「ピノ」などの主力ブランドを中心に売上げが伸びている。ウェルネスでは、「ミルク生活」ややさいジュレなどの「森永ジュレ」シリーズが好調。関係会社のクリニコも堅調に伸ばすことができた。海外はドイツの子会社ミライ社を中心に利益貢献し、今期はベトナムのエロヴィ社もグループに入った。
これまでさまざまな経営基盤の強化を進めてきたが、次期中計を見据えると、次のステップとして売上げを伸ばす時期に来ている。少子高齢化が進む中、堅実に育成しながら、各事業のバランスをとって進めていくことが重要だ。
22年は、どの食品メーカーも原材料やエネルギー費の価格高騰などがますますのしかかってくる。さらに流通業界の垣根が無くなってきている実感もあるので、会社としていかに独自性を持って取り組めるかが鍵だ。そうしないとボーダーレスの競争下では、単純な規模の論理での勝負に陥ってしまう。
当社は50年以上にわたり研究を続けてきたビフィズス菌のパイオニアと自負している。「ビフィズス菌BB536」をはじめとして、延べ450社以上の商品に採用されている「シールド乳酸菌」(3)など、菌体でさらに存在感を強め、BtoBtoC領域でも展開を進めたい。「ビフィズス菌といえば森永乳業」と言われることを目指したい。
BtoCでは、健康志向の高まりに力点を置いた機能性表示食品「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」(2)がストレートな商品名やヘルスクレームが受け入れられ好調が続いており、「メモリービフィズス 記憶対策ヨーグルト」も確かなエビデンスを元に育てていきたい。このほかに中長期視点でも、健康・栄養面を中心にウェルネスや海外での取組みを増やしていきたいと考えている。
●守りから挑戦する企業文化
これまで当社は、手堅く業務を遂行するという企業風土が根強かったが、今後は一人一人がもっとチャレンジしていく文化を育んでいきたい。挑戦して失敗したとしても、挑戦したことを評価していく。現在、社内表彰制度として「Morinaga Milk Awards」を運用しており、社員が上司を推薦する「イクボス大賞」や「トライ&エラー大賞」など、さまざまな表彰を行っている。その中で今期「サステナビリティ大賞」を受賞した一つが、「マウントレーニア」(1)で展開している「深い癒やしプロジェクト」だ。50代以上の人間には食品のパッケージに動物を配置することは考えつかなかったが、Z世代を中心に若い世代のアイデアが形になった。
また、サステナビリティの取組みも進める。6月には、社長直轄部署として「サステナビリティ本部」を設置し、さまざまな検討を進めてきた。目標達成においても、健康・栄養を事業の一丁目一番地に据え、さらに環境や人権についても一面的な見方をせず、全体の最適解を探り、バランスのとれた事業を行っていきたい。