包装米飯特集
◆包装米飯特集:無菌米飯、9年連続プラス 生産量・金額とも過去最高更新
◆10年以内に1000億円市場へ
パックご飯を意味する無菌包装米飯市場は、9年連続で増加した。本紙推計の18年度市場規模(出荷ベース)は前年比7%前後増加の691億円と700億円に迫った。数量ベースで見ても、食品需給研究センター調べの18年1~12月生産量は同5.7%増の17万0218tと過去最高を更新。社会構造や生活様式の変化で、簡便性や安全・安心・高品質が受け入れられ、日常食利用が増加。需要に対して供給が追いついていなかったが、各社の投資が進み今期は供給体制が強化され、今後もさらなる市場拡大が期待できそう。ここ2年間では毎年50億円弱、7%ずつ拡大している市場。今後踊り場はあっても、同様の伸びを示すとみられ、10年以内に1000億円、15年後には18年度比2倍以上の1500億円規模となる可能性も見えてくる期待の市場だ。(川崎博之、久保喜寛、佐藤路登世、本宮康博、丸山正和、村岡直樹、本吉卓也、山本大介、吉岡勇樹)
●18年の市場総括=パックご飯は市場規模700億円弱に
18年は災害も多く、防災意識の高まりで非常食用に常備する需要が高まった。加えて、世帯構成の少人数化や女性の社会進出などのライフスタイルの変化による日常食としての利用が定着。さらに、猛暑でコメを炊かない人も増えて追い風となった。“炊いたご飯と同じかそれ以上のおいしさ”という声も寄せられ、各社の品質向上努力も下支え要因だ。小容量から大容量、産地ブランド米から雑穀米などさまざまなニーズに対応。おにぎりにちょうど良いなど、食べ方提案も定着に貢献した。3食、5食、10食パックなどの大容量が主流になっていることから、多めに購入して賞味期限前に消費していく「ローリングストック」の需要もある。ただ、どちらかというと日常食としてまとめ買い利用する消費者が増えているようだ。
17年まで原材料のコメ価格が3年連続で上昇し、17年11月からパイオニアでトップの佐藤食品工業(サトウ食品)が1988年の発売以来初めて価格を改定。主力の「サトウのごはん新潟県産コシヒカリ」など同県産米使用商品は2018年11月に値上げした。テーブルマークは同年2月、東洋水産は同3月、越後製菓は同4月、ウーケは同12月、たいまつ食品は19年4月に各社価格を改定。ただし、値上げによる消費への影響はほとんど見られず、それよりも需要が上回り生産量が過去最高を更新した。
パックご飯は、雑穀米商品など一部レトルトで殺菌していることから、レトルト米飯と無菌包装米飯の生産量合算で見ても、前年比5.0%増の19万8381tとなった。市場規模は、1988年にゼロだったものが96年に100億円を突破。近年はその成長が加速し2016年600億円弱、17年650億円弱、18年690億円の見込み。09年に440億円規模だったことを考えると、この10年間で250億円もの成長を遂げている。
18年は需要に供給が追いつかない状況が続き、商品アイテム数を集約するなどで対応。業界を挙げて安定供給に取り組み、生産量・金額ともに9年連続で過去最高を更新した。市場は年々拡大しているが、18年度の本紙推計による内訳を見ると、上位4社で8割以上のシェアを占めている。生産量ベースではテーブルマークがトップとなったもようだが、金額ベースで見るとサトウ食品がトップ。テーブルマークとほぼ拮抗(きっこう)しており、それぞれ30~31%のシェア。3位の東洋水産は11%、4位のウーケが8%とみられ、残り2割のシェアははごろもフーズ約4%や越後製菓約2%、たいまつ食品約1%などが占める。
●19年上期動向=伸長の勢い止まらず うれしい悲鳴も
今年1~6月の生産量を見ると、無菌包装米飯は前年比7.2%増と大幅に伸長。半期では、これまで加工米飯の中でトップだった冷凍米飯の生産量を上回った。
金額ベースで見ても、直近までサトウ食品、テーブルマーク、東洋水産、ウーケ、越後製菓、たいまつ食品といったパックご飯を展開する企業は軒並み前年を超えて推移している。
今期は、パックご飯で上位各社が工場の新設やラインを増設したものが順次稼働。今春まで一部出荷調整も見られたが、業界全体で安定供給が可能となり始めた。需給バランスが均衡し一息付けそうだったが、直近までを見ると伸長の勢いが止まらない。
本来は新工場や新ラインが稼働し供給が安定することで、これまでフル稼働していた旧ラインのメンテナンスを進めることが可能となるはずだった。各社で生産ラインの違いはあるようだが、「メンテナンスは一気に短期間でできるわけではない」(メーカー)という。しかし、いまだフル操業が続いている状況。計画を上回る旺盛な需要は、うれしい悲鳴となっているようだ。
●19年下期動向=健康基軸商品が拡充 供給体制整い新商品・販促も
包装米飯の売場の棚は徐々に拡大。3尺1本が3尺3本に広がるところが散見されるなど、間口が広がりレトルトがゆやセット米飯を含めて商品のバラエティー化が進む。特に健康を切り口にした商品が目立ち始めている。発芽玄米やスーパー大麦バーリマックス配合商品、雑穀入りのほか、もち麦商品は一過性のブームではなく定着してきた。はくばくや全農、たいまつ食品、東洋水産、アイリスなどがもち麦商品を展開。今秋は越後製菓も新潟県産はねうまもち品種にこだわった新商品をフィルム包装で発売し、健康機能を前面に打ち出す。今後の市場は、白米をベースとしながら、健康維持をうたった商品も盛り上がりそうだ。
また、各社投資が進んだことで、販売促進活動にも力が入る。トップのサトウ食品は、新TVCMの放映を開始し、釜炊きのおいしさを前面に押し出している。同時に新工場竣工を記念してキャンペーンを展開。テーブルマークは、10月からの消費税の増税を踏まえて9~10月までディスプレーコンテストと消費者キャンペーンを実施し売場を活性化する。
食べ方の幅広い提案も引き続き強化する。少量タイプやツインパックで、単身者ニーズを取り込むほか、おにぎりにちょうど良いといった提案も継続。また、大盛り商品一つを2人で分け合うといった食べ方も紹介していく。さらに、ご飯を使ったレシピをホームページに掲載したり、レンジ耐性のあるトレーの特質を生かしたハンバーグドリアやカルボ飯といった簡単メニューを動画で紹介している。
新規ルートへのチャレンジも進む。健康基軸商品の拡充で、今まで以上にDgSなど新規チャネルへの広がりを目指す動きや、外食・中食・宅配などでの利用の可能性を探る動きも見られる。また、国内安定供給を最優先に各社取り組んでいるが、海外輸出についても中長期的視野で求められそう。炊飯器がない海外でもおいしいご飯が食べたいというニーズは高く、一部で販路拡大が進みそうだ。
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