ふりかけ・お茶漬け特集

ふりかけ・お茶漬け特集:ふりかけ 子ども人気で需要増

●「のりたま」60周年、「ゆかり」50周年

ふりかけ市場は前3月期、前年比1%増の384億円で着地したとみられる。年初まで同2%減で推移していたが、2月末から需要が急増。コメ消費が一気に増え、代表的なコメ周り商材の一つであるふりかけも関連販売が進んだ。新型コロナウイルスの感染防止に向けた、政府の休校要請が契機になり、以後の販売は同2桁増。3年連続となる縮小が避けられた。

3月の週末の自粛要請を経て、店頭回転率は高止まり。さらに4月の主要都市の緊急事態宣言によって、子ども中心に消費マインドが高まった。食シーンは家庭内食を開き、従来少なかった昼夕食需要を得た。半面、コメは長期停滞によって売場のフェースを減らし急激な需要増に応えきれなかったのも実情。ふりかけも少なからずチャンスロスはあったとみられる。売場の混乱を避け、特売やエンド展開も減少した。

春の最盛期に通常見込める、新学期・新生活需要は一部先取りできたが、行楽需要は大幅減。さらに弁当用途は業務用も含めて激減を余儀なくされた。イベントチャネルなどはキャンセルが続出。給食も純減し、悪影響を受けている。

新型コロナの災禍は主に外食へ直撃している。食品業界全体で業務用需要が家庭用に移っている。ふりかけの業務用構成比は家庭用に比べて10分の1程度と圧倒的少ない。現在の消費・生産増は単純な需要移動より多いとみえ、市場全体で安定供給に尽力。社会不安を低減している。

カテゴリー別で見ると、大袋直詰めが4割を超えて最大。混ぜ込みが2割強、ウエット具材のソフトが1割、残りは小袋詰め合わせのミニパック、おむすび、キャラクター、大袋分封などが続く。

大袋は丸美屋食品工業「のりたま」、三島食品「ゆかり」などロングセラーが揃う。高い認知度は安心感と信頼性を醸成、今は緊急事態だけに消費がさらに集中。今年は「のりたま」が発売60年、「ゆかり」50年と半世紀を超える周年イヤー。両者とも販売戦略を厚めにし、需要増をとらえた。

丸美屋は周年プロモーションを得意にして年々、対象品を拡充。今年は蓄積した企画ノウハウを基幹品の「のりたま」に結集し、ユーザーを広げている。トップブランドの大型販促だっただけに、類を見ない生産増に応えられている面もある。三島は姉妹品「うめこ」販売が絶好調。毎月のオリジナルグッズキャンペーンも好評で、記念の年を盛り上げる。

そのほか直詰めのトピックは大森屋「魅惑のふりかけ」、浜乙女「悪魔めし」など悪魔系のヒット。ローソン「悪魔のおにぎり」に代表される、背徳感のある天かす、だしとご飯の相性の良さ、人気が示された。健康志向の深まり、低糖質食の普及といったトレンドが進み、その反動もあらためて顕在化した。

春の新商品は無添加商材が拡充され、スーパー大麦といった新素材も登場。王道の健康訴求が揃う一方で永谷園の「やってみた」のような高い新奇性も。消費刺激策は十分だが、新型コロナの感染防止で試食販売やサンプリングは望めない。消費増という好機に商品力そのものが問われる。

直詰めに続くシェアの混ぜご飯は、特需前の縮小市場でも数少ない成長分野だった。弁当向けで用途を同じにするミニパック、おむすび消費を奪いながら乾燥具材の再現性、おいしさを強みにして増大。カテゴリートップの丸美屋「混ぜ込みわかめ」が一昨年の30周年に刷新。消費者価値の再訴求に成功している。弁当用だけに現在の需要増の恩恵は直詰めより少ない。

そのほか、今期は三島食品の原料栽培の進化も特筆される。産地・生育開発はものづくりの根幹。三姉妹企画などで成果を収めているマーケティングのさらなる深まりも期待できそうだ。珍しい取組みでは田中食品が4月直営店をオープン。エンドユーザーにふりかけシートなど商品と情報を伝え、直接得た反応を市場化する。

ウイルス終息が長引けば、緊急事態が延長し拡大。内食増が続き、原料不安も顕在化するかもしれない。

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