新春特集第1部

総合 2021.01.01
新春特集第1部

 2021年は、団塊世代が後期高齢者となり始める22年を目前に控え少子高齢化と生産年齢人口の減少が加速する中で、ワクチンの普及次第ではあるものの、新型コロナウイルスへの感染リスクとは依然、背中合わせ、感染症対策の影響を受け続ける年となろう。リスク低減のためのさまざまな取組みが社会構造を大きく変えつつある現実に直面した20年の経験から、何を学び取るか変化対応力が試される。大きな飛躍へとつなげられるかもそこで決まる。
 医療崩壊を防ぐ感染症対策としての人の移動の制限は社会・経済活動の停滞を招いて世界を変えた。働き方改革の延長線上にあるテレワークは、公共交通機関による通勤時の混雑緩和への協力が拍車を掛ける形となり情報通信技術の進展と相まって大手企業を中心に定着しつつある。それらも対面の必要・不要の選別をもたらし、社会の在り方を根底から変えつつある。
 しかし、それが逆に、社会・経済活動の中での対面の価値を高め、さらに食品界に則して言えば、食事を共にする“共食”の価値も高めていることは確かだ。
 食品産業・食品関連産業界が持続可能な成長を今後も遂げていくため、付加価値額、海外売上高、労働生産性をそれぞれ伸ばしていかなければならない。企画・開発力の向上と人材確保、新技術の適用、消費者ニーズへの対応、ブランド力の強化、食の機能性の追求、包装・容器の高度化なども進める必要がある。産学官が一体となり総力を挙げなければ進めることができない生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーンの構築も重要だ。21年は、ベンチャー企業、スタートアップ企業との協業によるフードテックなどの新たな分野に挑戦する動きも出て来よう。
 今回の新春特集では「食牛之気」の文言をテーマとして掲げた。フードテックをはじめとした食品界と食品界を取り巻くさまざまな産業界の新たな試みの胎動が大きな飛躍へつながることへの期待も込めた。語源となる「虎豹の駒は食牛の気あり」は、トラやヒョウの子はまだ幼いうちから牛を食うほど意気さかんであるの意から、大人物は幼少のときから常人とは違ったところがあることを例えたものだ(「精選版日本国語大辞典」小学館)。中国古代の思想家・尸子(しし)の思想書「尸子 巻下」にある「虎豹之駒 未成文 而有食牛之氣」(虎豹の駒は、未だ文を成さずして、牛を食らわんとする気有り)の一節としてわが国には「古老軍物語」(荒木利兵衛、1661年)が伝えた。
 “共食”の価値の最たるものである宴席の場で中国・唐時代の詩人・杜甫が発した言葉でもある。漢詩「徐卿二子歌」は徐卿の二人の男子の下の子を「小児五歳氣食牛 満堂賓客皆回頭」(小児は五歳にして気は牛を食らい、満堂の賓客、皆、頭を回らす)とうたい(吉川幸次郎著・興膳宏編「杜甫誌注 第十冊」岩波書店)、この漢詩に由来する「麒麟児」(才知に秀でる少年)という言葉で上の子とともに褒めたたえた。