即席麺特集

◆即席麺特集:販売数量減も金額ベースで横ばい

麺類 特集 2020.02.26 12018号 07面
袋麺売場では新たな売り方提案が行われている

袋麺売場では新たな売り方提案が行われている

 即席麺市場は、通期(19年4月~20年3月)着地での成長が微妙な状況となっている。4月のスタートは順調だったものの、6月の値上げ以降、需要が鈍化傾向にあり、10月の消費増税がさらに景況感を悪化させたことで、厳しい局面を迎えている。販売数量は前年を下回る見込みだが、金額ベースでは値上げの影響もあり、前年を維持する可能性がある。残り約1ヵ月の需要に期待したいところだが、前年の3月は販売が順調だったため、高いハードルとなりそうだ。市場環境は、引き続き、NB製品を中心に売上げが伸び悩んでいる。一方で、オープンプライス商品やPBなど、価格を据え置いたアイテムの販売好調が続いている。NB製品も緩やかに回復に向かっているようだが、これまでの落ち込みをカバーするほどの勢いはないという。今年は、値上げ後の新価格の浸透・定着を図るため、販売数量を落としても価格改定に取り組むメーカーもある。(久保喜寛)

 ●カップ麺堅調 袋麺2~3食が伸長

 カテゴリーでは、袋麺が苦戦し、カップ麺が堅調に推移する。袋麺に関しては、単身世帯の増加などの社会構造の変化で、袋麺の中心の5食パックの魅力が伝わりにくい状況となっている。その半面、市場規模は小さいものの、2~3個パックや1個売り販売が着実に売上げを伸ばし、袋麺の売場展開が大きく変わろうとしている。

 また、袋麺の鍋や食器を用意して調理する工程も不便と感じている人もいるようで、より簡便なカップ麺に需要が流れていることもある。ただし、袋麺の魅力の一つは調理して、自分なりのアレンジが楽しめること。好きな具材を揃えて、袋麺を食すシーンが提案できれば、新たな需要の獲得にも期待できる。特に2020年は国際的なスポーツ大会開催など、家庭内食需要が高まると見込まれているため、袋麺を家庭で味わうシーンを想起していきたい。

 一方、カップ麺はタテ型がけん引役となっている。各社のメジャーブランドが揃っていることに加え、商品提案も多いことから安定した売上げを確保している。カップ麺の中でもどんぶり型の和風タイプや、カップ焼そばが少し低迷した。

 和風タイプは価格前の特売では100円以下で販売されていたが、価格改定後は100円以上だったため、消費者にとって高い印象を持たれてしまったようだ。最需要期の12月に盛り返したものの、全体では低調だった。焼そばは、春先に油そばなど、汁なし系の商品ラインアップが充実したものの、いずれもヒット商品につながらなかった。需要期の7月が冷夏だったことも影響を受けている。

 来期(20年4月~21年3月)については、引き続き価格改定後の新価格の浸透・定着が課題となってくる。6月には一巡するため、消費者意識も新価格が根付いて、需要の回復につながってくると思われる。

 カテゴリーでは、袋麺の回復は急務だ。春の新製品のラインアップを見ると、焼そばに新たな提案や、順調な2~3食パックの強化などが行われる予定なので、新製品を起爆剤としたい。

 カップ麺は、来期もタテ型が商戦の中心になってくる。新たなところでは、和風の汁なし商品が豊富に揃いそうなので、ヒット商品が生まれるか注目だ。 来期は、健康などの新たな軸が本格的に確立するかにも期待がかかる。これまでも健康訴求の即席麺は展開されているものの、カテゴリーとなるには至っていない。

 しかし、社会環境や消費者意識は確実に、カロリーオフや減塩といった健康へのニーズが高まっている。即席麺を食べるときは、健康などを意識しない、という需要が当たり前だったが、健康需要の獲得に向けて“即席麺も健康的な商品”という印象をつけていく必要がある。

 日本即席食品工業協会調べによる19年(1~12月合計)の即席麺類総需要(総生産量)は、56億3020万食で前年(57億7857万食)に比べ1億4837万食減少した。前年まで4年連続の総需要拡大となっていたが、5年ぶりのマイナスとなった。

 このうち袋麺が16億9013万食(前年比4.2%減)、カップ麺が39億4013万食(同1.8%減)といずれも減少。18年の出荷金額ベースの総需要は、袋麺が1253億5900万円(同3.7%減)、カップ麺が4682億6300万円(同0.1%減)の合計5936億2500万円(同0.9%減)と、金額ベースでは微減でとどまった。市場規模6000億円が視野に入ったところでの足踏みとなった。

 減少傾向に見えるものの、マーケティングリサーチ会社のインテージによると19年のインスタント麺の市場規模は4294億円(前年比3.0%増)となったとみているようだ。TVドラマの影響もあって、袋麺もカップ麺も需要が喚起されたことによると考えられるという。

 特に、袋麺は低迷が続いていた中で前年比2.2%増と盛り返せたのは、ドラマの中で誕生物語に接することで消費者が関心を持ち、メーカーや流通側も施策を打ちやすい環境が開けたことが大きいと考えられるようだ。また、19年は梅雨明けが遅く、冷夏が続いたことが追い風となったこと。そのうえ、首都圏をはじめ近隣エリアを襲った10月の台風災害による、備蓄用非常食としての需要が再び起きたこともポイントになったようだ。

 カップ麺の19年市場規模は3542億円(同3.1%増)と伸びている。要因は、袋麺と同様にTVの影響と天候不順、自然災害による備蓄食としての需要の高まりとともに、ロングセラー品の安定的な売れ行きと、各社の切れ目ない新商品投入の効果によるところが大きいという。

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