ヨーグルト・乳酸菌飲料特集
◆ヨーグルト・乳酸菌飲料特集:ヨーグルト市場、再ブーストの助走期間へ
◇根強い需要変わらず
2018年度(18年4月~19年3月)のヨーグルト市場は、前年比1~2%減で昨年に引き続き前年未達となった。16年度までは機能性ヨーグルトを中心に大幅な伸長を達成してきたが、最近はメディアなどの情報発信頻度の減少や、ヨーグルト以外のカテゴリーで健康訴求商品投入が続き、ライトユーザーを中心に需要が流れたとの見方もある。ただ、ヘビーユーザーからの根強い需要は変わらず、定番のプレーンが回復基調にあることから、今年は市場の再ブースト(強化、押し上げ)に向けた助走期間と位置づけられる。
他方、17年度まで拡大傾向が続いていた乳酸菌飲料は、前年割れに転じたもよう。日清ヨーク「ピルクル」は発売25周年施策が奏功し大幅増を達成した一方、ヤクルト本社の「ヤクルト」類の国内販売本数は減少となった。生産量、消費金額も前年を下回っている。
迎えた今期は、大手メーカーを中心に、4月から原料乳価の改定による価格改定を実施。現在は各社影響を注視する姿勢が続いているが、数量では滑り出しで落としているとの見方もある。流通業各社も購入回数減少への対策に注力する傾向が見られる。両カテゴリーとも、乳酸菌、ビフィズス菌が整腸にとどまらず、体全体への健康効果、より細分化された健康需要への新たな提案が求められている。菌体そのものの機能・効果に関する理解促進への取組みも進められ、今後も新たな作りを切り口に再び成長曲線を描くことが期待される。(小澤弘教)
●ヨーグルト:機能・効果 新たな価値発信が鍵
18年度のヨーグルト市場は、過去最高を更新した16年度の反動が戻らず、マイナストレンドを継続した。家計調査でも、消費金額は前年比2.3%減、生産量1.3%減となっている。要因として、これまで活発だったメディア露出機会が減ったことも考えられるが、消費者サイドから見ると食品カテゴリーの健康関連食品の投入増加などが続いたことで、一部需要が流出したとも考えられる。
機能性の一服感は続いているが、ヨーグルトは今や食卓の必需品となり、潜在的需要は引き続き底堅い。機能性ヨーグルトはハードの苦戦を招いたが、18年度はボリュームの大きいプレーンが1~2%増と回復基調。毎日継続して食べる健康食材として、アレンジしやすい「原点回帰」(メーカー)としてのトレンドが見て取れる。機能性ヨーグルトの受け皿として、ソフト・フルーツの役割もある。個食タイプは苦戦が続くが、4連マルチは引き続きニーズがあり、前年比1~2%増減で推移。一方、ドリンクは前年を若干割り込んだようだ。
市場成長が一段落する中、各メーカーは、さまざまな新価値訴求を進めており、特にターゲット層を絞った健康効果を前面に押し出す商品展開が目立つ。トップメーカーの明治は、「PA-3」で機能性表示食品を取得。尿酸値の上昇を抑える効果を前面に出し、ユーザー開拓を進める。雪印メグミルクの「ガセリ菌SP株ヨーグルト」は内臓脂肪低減で勢いを継続。森永乳業の「トリプルヨーグルト」は生活習慣ケア食品として刷新した。オハヨー乳業は口内フローラを良好に保つ「ロイテリヨーグルト」を全国展開していく。
また、ユーザーの再獲得に向けて各メーカーとも新たな価値情報の発信を重要視している。江崎グリコは「BifiX」刷新で腸内年齢訴求を強めるとともに、「朝食りんご」でニンニクの臭いを抑える効果を実証し、食後の必需品としてPRする。成長するプロテイン市場にもオーバーラップする訴求としてギリシャヨーグルトの既存価値をあらためて前面に押し出す動きもある。ダノンジャパンは「オイコス」をプロテインヨーグルトブランドとして一新。明治は「THE GREEK YOGURT」に新フレーバーを投入するなどラインアップを強化している。
●乳酸菌飲料:一転、前年割れ 継続飲用の健康効果、理解促す
乳酸菌飲料市場は、ここに来てマイナスに転じたとみられる。生産量、家計調査ともに前年を割り、特に夏場の猛暑などによる消費量減少も響いたようだ。
容量別では、手軽に続けやすい小容量タイプが引き続きニーズが高い。ヤクルト本社では「Newヤクルト」で「カロリーハーフ」、宅配の「ヤクルト400」で「LT」のカロリーオフタイプがけん引した。
日清ヨークの「ピルクル」は、昨年発売25周年を迎え、さまざまな販促企画を立て続けに投下し、過去最高の売上高を更新した。
成長軌道への修正に向けて、継続飲用による健康効果に対する理解促進の動きも進む。カゴメは、「ラブレ」と同社野菜飲料とコラボした「朝スムージー夜ラブレ」の飲用を引き続き提案している。ヤクルト本社も「ヤクルト」と「ミルミル」のダブル飲用で、乳酸菌・ビフィズス菌両方を摂取する相乗効果で、購買動機の推進を図っている。