チーズ特集

◆チーズ特集:拡大から浸透へ 進むステージ変化

乳肉・油脂 2019.12.16 11985号 05面

◇急成長一段落も最需要期へ喚起策

大きな拡大から着実な浸透へ–19年度上期(4~9月)のチーズ市場は、近年続いてきた需要拡大の流れを維持しながら、成長を続けている。昨年は大手メーカー中心の価格改定や、白カビ・青カビチーズの健康報道などさまざまな変化が起き、市場は大幅な伸びを示したものの、今年はこれまでと比較して手堅い推移となった。全体として大きな減退はなかったが、消費支出でも大きな伸びは見られなかった。しかし、消費の底堅さは依然として強く、家庭用では即食系商品が、業務用では高付加価値を実現する高加工度商品の需要が増加。下期は最需要期へ向けて、プロセスチーズ(PC)、ナチュラルチーズ(NC)ともに新商品の投入やプロモーションの拡大など、需要喚起策を各社推進。変化するステージへの対応で、メーカー、輸入商社、業界団体らは積極策を講じている。(小澤弘教)

●家庭用 消費底堅く即食志向強い

家庭用チーズの販売状況は、金額ベースでほぼ前年並み、物量ベースで1~2%の微増で推移したとみられる。PCが金額・数量ともにほぼ前年並みから微増、NCは2~3%増で推移。前年上期と比較して伸び率が若干鈍化した感がある。特に、開封してすぐに食べられる即食系商品は需要が高まり、容量・形態のトレンドは「手軽さ・食べやすさ」が評価のポイントになってきているようだ。

PC市場の最大カテゴリーであるスライスは、金額・物量とも前年並み。コモディティー化によるせめぎ合いが続いている。NCのシュレッドは金額・物量とも増加し、トレードオフ関係が最近強まってきている点も影響した。明治や雪印メグミルクは今春の増量キャンペーンがプラスに働いた。

ベビーチーズは金額・物量とも前年比1~2%増。昨年ほどの勢いが落ち着いたとの見方が多勢だがアイテム数の増加、おつまみ・おやつなどワンコインで多彩なフレーバーが楽しめる価値から、幅広い年齢層にさまざまな喫食シーンを提供してきた。

六甲バターは定番品、プレミアム品ともに増加し、5%増を達成。4月から本格稼働した神戸工場の生産体制も着々とバージョンアップしている。マリンフードも秋にはボジョレー解禁のタイミングで特売需要を獲得した。ポーションは微減から微増とみられる、6Pのけん引が若干鈍化してきた。カルトンは全体では2桁近いマイナスで推移。「切れてる」は2%程度減で着地した。

NCでは、シュレッドは各社で明暗。物量で前年で5%程度のプラスとなったが、金額は2~3%増。大容量サイズが好調である一方、単価が下がっている。価格競争の激化が続く中、東京デーリーは「香り際立つパルミジャーノブレンド」が2桁増。昨年下期に投入した「厳選4種のチーズブレンド」とともに、差別化シュレッドとして市場ポジションを獲得している。

昨年はアルツハイマー型認知症の予防効果についてのTV放映の効果で一気に市場を拡大したカマンベールは反動の年となり市場物量・金額ともに2桁近くマイナスになった。しかし、一昨年比ではプラスとなっていることから、水準の底上げ分は確保している。

そうした中でも、明治は金額・物量とも既存商品群で前年をクリアした。青カビについても健康報道の効果は根強く、小売・量販店での配荷は進んできている。特に顕著なのが、クリームチーズはポーションタイプの苦戦もあり、前年を下回った。そうした中、ベルジャポンは主力の「キリ」ポーションタイプなどはプラス。積極的販促強化が奏功した形だ。

フレッシュモッツァレラは、森永乳業の「クラフトひとくちモッツァレラ」の昨年9月からの上市が大きくプラス効果。ライトからミドルユーザーの獲得が進み、けん引している。ストリングはSNSから火がついた「じゃがアリゴ」が継続して火がつき、金額・物量とも6%程度の伸びを見せた。

家計調査で見る1~10月の消費量は昨年と比べて落ち着いてはいるものの、購入金額・数量とも根強く増加。こうした点からも、チーズが家庭の日常の食材として定着し、拡大してきていることが考えられる。

12月に入ってからもチーズ需要の高まりは売場からも見られ、各社はプロモーション強化や業態別注力アイテム訴求など、需要喚起策を推進中。底堅い需要は続くとみられることから、今後も伸びしろが多くある市場だ。

●業務用 高加工度アイテム需要増

今年度上期の業務用市場は金額・物量とも前年比1~2%増で前年を上回ったと推計される。今年は5月の大型連休や7月の冷夏、秋口の台風、消費増税など、自然環境・社会環境と多くの変化に見舞われたが、おおむね良好に推移。外食は前年並みを維持し、加工食品は堅調となったとみられる。特に、簡便性や差別化志向の高まりから、加工度の高い商材へのニーズが強まっている。

ソフト系チーズがけん引役となる同市場だが、簡便性の高いアイテムの需要が引き続き強い。雪印メグミルクの「ロイヤルスノー」は用途拡大や使い勝手の良さなどが評価を高め、製パンやCVSでの新規採用が増えている。マリンフードの「クッキングモッツァレラ」は、幅広い使用用途で導入が進み、業績の底上げに寄与した。

特に外食では、人手不足によるオペレーション簡略化ニーズは依然として高く、より加工度の高いソースやペーストを求められることが多い。森永乳業の「4種のチーズソース」は外食中心に引き合いが多い。「使い方がすぐわかる」「誰が使用しても同じ味が再現できる」といった確実性も求められている。

外食チャネルでのチーズ需要の旺盛さは続いている。「チーズタッカルビ」や「ハットグ」など、チーズの物性を生かした「SNS映え」するメニューはブームから定着へと移行しているといって良い。

チーズの最需要期とオーバーラップする形で、大手外食チェーンではチーズをメーンにしたフェアを展開しているが、NCに関してメニューに細かな情報を載せるなど、消費者の関心の高まりを示している。

最近では「発酵鍋」(関連記事10面)にも注目が集まり、中でも「チーズ鍋」に対しての業界からの提案が進んでいる。上期からもラクレットの人気が続いていることも見逃せない。

CVSチャネルでは、「バスク風チーズケーキ」の根強い人気や、チーズを使った差別化中食アイテムの拡充が目立ってきた。和食ジャンルにチーズを組み合わせたり、中~高価格帯商品にNCをアクセントに使ってみたりするなど、各社独自性の高い商品を展開し、物量も伸びている。製パンでも、今年は7月が比較的涼しかったこともありチャネル自体の好調が後押しした。

一方、市場全体としては、「フードロス」への対応が気になるところ。最近では、SMでは閉店の1~2時間前には商品を作らず、CVSでも24時間営業をやめる店舗が増えていくと予想されることから、秋に入り動きが鈍化してきた感も否めない。より高付加価値を実現するメニュー提案などが、今後ますます求められそうだ。

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