ヨーグルト・乳酸菌飲料特集

◆ヨーグルト・乳酸菌飲料特集:再び成長軌道へ 重要局面迎える

乳肉・油脂 2020.06.08 12062号 09面

◆高まる健康増進効果への期待

近年、拡大に一服感が見られていたヨーグルト・乳酸菌飲料市場だが、2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う消費者の行動変容や予防・健康意識の高まりなどを背景に、再び成長軌道へ向けた重要なターニングポイントを迎えているようだ。19年度(19年4月~20年3月)のヨーグルト市場は、春先に行った価格改定の影響で上期は数量減など前年割れが続いていたものの、下期は中心カテゴリーであるプレーンタイプが拡大に転じ、加えて1月以降の新型コロナ禍による家庭内消費の増加や、機能性ヨーグルトに対する健康増進の期待の高まりを追い風に拡大。市場全体で前年比微減からほぼ前年並みで推移したと考えられる。

18年度にそれまでの拡大路線から前年割れに転じていた乳酸菌飲料は、1世帯当たりの消費金額は前年超えに転じた。特に、トクホや機能性訴求型アイテムが成長を維持しており、同時に商品間競合も激しさを増し始めている。ヨーグルトと同様に健康維持への備えとして、1月以降は売上げが増加しており、在宅勤務の増加や緊急事態宣言発令による休校措置が続いたため、大容量タイプや多本数パックなどのファミリーユースアイテムが好調に推移している。

両市場とも、今年度は上期に引き続き新型コロナの影響は継続することを想定し、継続喫食・飲用を訴求したコミュニケーション策や、新たな科学的エビデンスに基づく機能を訴求した新たなラインアップを投入。これまでにない価値を訴求した新商品も展開を進めており、健康と嗜好(しこう)の両面の消費者需要に応える市場として、再活性化を目指している。(小澤弘教)

●ヨーグルト=変化する消費者動向 トレンドの上向き着実視

19年度のヨーグルト市場は、通期では前年比微減からほぼ前年並みでの着地となった。特に、下期は前年を上回る推移が続き、中でも中心カテゴリーのプレーンが拡大。さらに2月以降は新型コロナ禍で健康意識が高まり、喫食頻度も増えている。消費者の購買動向も、外出自粛や緊急事態宣言発令による休校、在宅勤務の増加などで家庭内消費が中心となり、大きく変化している。今年度に入ってからも4月単月で2桁増を記録したメーカーもあり、カテゴリーとしてトレンドの上向きは着実視されている。

主要メーカー動向を見ると、チチヤスが決算情報開示前のため未推計となっているが、14社全体で前年の販売金額をクリアすることは確実視される。

タイプ別には、プレーンが前年を超えて推移。新たな食べ方提案などの需要増に向けた各メーカーの取組みやメディア露出の増加が要因として考えられる。加えて、2月以降は巣ごもり需要に伴い家族で食べる大容量アイテムが好調に推移している。

機能性ヨーグルトは上期伸びが見られなかったものの、下期はプレーンの伸長と並行して、科学的根拠に基づく機能への期待が高まり、年度末に向けて需要が底上げ。

ハードはカテゴリーとして新たな提案となる商品が少なく、年間では前年を下回った。ソフトも同様だが、第4四半期以降は4連タイプが伸びを見せた。ドリンクは他の飲料カテゴリーとの競争もあり、下期の巻き返しもカバーするには至らなかった。

今年度は新型コロナ禍での緊急事態宣言が解除されたものの、ヨーグルトへの期待はあらためて自己防衛健康意識の向上によって目を向けられていくことが予想される。復調の兆しが見られる機能性ヨーグルトでは、森永乳業の「トリプルヨーグルト」が好調を堅持しているが、同社は新たに「ビヒダスヨーグルト 便通改善」を上市。雪印メグミルクは「乳酸菌ヘルベヨーグルト」を通年訴求し、明治は新たに「明治スキンケアヨーグルト素肌のミカタ」の投入で、個別の機能価値はますますバリエーションが豊富になってきている。また、ダノンジャパンは「ダノンデンシア」でターゲットをより明確に打ち出し、骨の健康への訴求を強める。

健康価値に加え、嗜好価値の訴求も進む。日本ルナは新ブランド「Isey SKYR(イーセイ スキル)」シリーズを展開。アイスランドの伝統的国民食を日本に上陸させ、高タンパク質もポイントに新たな市場創造が期待される。

新型コロナ禍の影響で、各社とも店頭販促が制限される中、SNSやメディア露出、EC活用など、さまざまな展開策を講じており、価値伝達をさらに強化している。

●乳酸菌飲料=飲用シーン増加 ユーザー定着施策

19年度の乳酸菌飲料市場はヨーグルト市場同様、後半戦での巻き返しが進み、今年度に入ってからも引き続き飲用シーンに増加傾向が見られる。一方、ユーザーの定着は引き続き課題とされ、各社新商品投入や新たなコミュニケーションの投下など、継続飲用に向けた施策を進めている。

特に2月以降、巣ごもり需要が本格化するにつれ、店頭チャネルでは多本数パック商品や大容量のホームサイズ商品の需要が拡大。ヤクルト本社の「Newヤクルト」類や日清ヨークの「ピルクル」など、10本パック製品などが販売を増やしている。健康維持への備えとして乳酸菌飲料を飲用する意識が高まっており、中でも「Newヤクルト」類は一時的に品薄状態も起きた。

一方、ライトユーザーの購買は定着が難しく、各社ヘビーユーザーの育成に引き続き注力している。カゴメは植物性乳酸菌飲料「ラブレ」で、おいしさと機能価値両面の向上を推進し、商品から飲用の習慣化促進を図る。日清ヨークは「ピルクル」に新たに中性脂肪を減らす機能性表示食品「同Bodycare(ボディケア)」を投入し、発売から28年目に突入する同品へのユーザー回帰を視野に入れる。ヤクルト本社は、好調の「Yakult(ヤクルト) 1000」や、エリア限定で発売している「ヤクルト400W」の展開範囲を広げ、高付加価値商品のブランド浸透を進めていく。

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