中部食品マーケット特集

総合 2021.07.13
中部食品マーケット特集

 ●フードデリバリー、名古屋でも浸透 外食は苦境に
 先ごろまで愛知県では新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が発令され、6月21日からまん延防止等重点措置に移行した。感染者数は小康状態にあり、対象期間は7月11日まで(7月1日現在)となっているが、これまでも感染拡大の波を繰り返すなど根本的な対策に決め手を欠いている。そのため、ワクチン接種の話題が身近になり、国民的行事の東京2020大会開催が目前に迫っているのに、不安は払しょくできないままだ。
 中部の食品業界は、全国同様に長引くコロナ禍で明暗が分かれている。「明」の部分は食品スーパーが巣ごもり特需で好調な点だ。特需は一巡した印象だが、新型コロナが収束しない中で内食需要は依然として続いている。スーパーに限らず、ドラッグストアなど家庭用食品を取り扱っている業態は好機ととらえている。
 巣ごもり消費とフードデリバリーの親和性は高く、この1年で一気に世間に浸透したといえる。2018年10月、名古屋市内で始まった「Uber Eats(ウーバーイーツ)」は、米国のウーバー・テクノロジー社がユーザーとレストラン、配達パートナーの3者をリアルタイムでマッチングさせ多種多様な料理を届ける仕組みだ。開始当初、浸透にはまだ時間がかかると思われたが、コロナ禍を追い風にした。
 ウーバーイーツの成功を受け、20年10月にドイツのデリバリーヒーロー社が手掛ける「foodpanda(フードパンダ)」、6月には世界最大級の配車プラットフォームを展開する中国のDiDi Chuxing(滴滴出行)が母体の「DiDi Food(ディーディーフード)」がそれぞれ名古屋市内でサービスを開始。特にディーディーフードは新規登録者に割引クーポンを発行したり、期間限定で配達料金を無料にするなど、先行する2社との差別化を図っている。
 一方、「暗」の部分は何といっても外食産業の低迷で、愛知・名古屋の飲食店も例外なく苦境に立たされている。特にアルコール提供を売りにしている店舗は、時短営業と酒提供自粛要請に従い、著しく体力を消耗している。時短営業の協力店舗に対しては、国から一日につき一律6万円が支給されてきたが、個人店と外食チェーン、郊外店と都心部の店が同じ支給額で良いはずがないだろう。そればかりか、協力金の支払いの遅れも問題視されている。ある業務用卸幹部は「(資金ショートで)夏を越せないチェーンが出るかも」と不安を隠さない。
 だが、われわれに、むやみに不安をあおる考えは毛頭ない。事実は真正面から受け止めて報じる責務があるが、これからの食品業界をいかに盛り上げていくかのほうが大事だ。コロナ禍で中止になった食品展示会はいくつもあり、機会損失は計り知れない。これだけオンライン商談が進化しても、食品に関しては味や香りなど五感で価値判断する部分が多いためだ。