デザート特集
◆デザート特集:「底堅さ」から活性化へ 求められる新需要創出
19年度(19年4月~20年3月)のデザート市場のうち、手作り風フレッシュデザートを除く大量生産のゼリー・プリン類は、ほぼ前年並みを維持しているとみられる。19年度は夏場の天候不順やカテゴリー内競争の激化など、常温ゼリー類は上期に影響を受けたものの、下期は暖冬傾向などの追い風要因もあった。チルドゼリー・プリン類全体は前年より若干下振れたとみられるが、中でもチルドゼリー類でコーヒーゼリーやアジアンデザートの好調が目立った。20年2月以降は新型コロナウイルスの影響による一斉休校やリモートワークの増加などに関連する「巣ごもり消費」の傾向もあり、購入率の押し上げが見られている。ただし冷凍デザートは、主戦場であるホテルや学校給食などがマイナス影響を大きく受け、若干潮目が変わってきていることも注視される。
市場全体は近年「底堅さ」が続いているが、一方で起爆剤となるようなヒット商品が待望されていることも事実。新たな需要を創出する付加価値の高い商品の安定供給と喫食機会の創出が、活性化の鍵を握ると考えられる。20年度は、ゼリー・プリン類で各社新たな商品投入や食べ方提案を加速。これまで市場になかった素材を使用したり、喫食シーンを増やすためのレシピを提案したりするなど、ゼリー・プリン類の楽しみ方の幅を広げる施策が目立っている。冷凍デザート類も新型コロナウイルスの収束後をにらみ、オペレーションの簡略化など、昨今の現場課題の解決策を提案し攻勢をかける方針だ。
デザート分野は多岐にわたるため、ここでは加工食品メーカーがNB品として大量生産する家庭用の常温品・チルド品と、外食・給食分野などを含む冷凍デザートの動向を中心に、近況と今後の展望をまとめた。(小澤弘教)
●チルド 好調アジアンデザート類
総務省「家計調査」(2人以上の世帯)によると、19年4月~20年2月までの累計支出金額は、ゼリー類は前年比10.2%増、プリン類は同7.6%増と好調に推移した。年間を通じて大きな消費減退は見られなかったものの、夏場の天候不順による気温の低下の影響があり、一方で9月以降は残暑と暖冬の外的要因もあり、上振れて推移したとみられる。
市場環境では、19年春は値上げを行ったメーカーもあり、販売数量への影響が懸念されたが、通期トータルでの影響は軽微とみられ、市場理解が浸透、単価アップによる上乗せも図れたとの見方が多勢だ。10月の消費増税でも、嗜好(しこう)品であるデザート類への影響が懸念されたものの、トータルではほぼ前年並みで推移している。
タイプ別には、個食がやや苦戦傾向で、連物が伸長している印象だ。森永乳業の4連フルーツゼリー「とろけるゼリー」は幅広い年齢層に受け入れられ、好調をキープしている。
チルドゼリー類の中でも特に伸びを見せたのが、アジアンデザートとコーヒーゼリーだ。アジアンデザートでは、安曇野食品工房の「Little Asia」シリーズが大きく伸びを見せた。折からのタピオカブームの継続もあり、「同タピオカ入りココナッツミルク」は前年の2倍以上成長。売場のコーナー化提案も奏功した。雪印メグミルクの「アジア茶房」シリーズ、森永乳業の「タニタ食堂監修のアジアンデザート」、オハヨー乳業の「おいしい杏仁豆腐」も売上げ増を達成した。
コーヒーゼリーでも、雪印メグミルク、安曇野食品工房、江崎グリコなど、カテゴリー全体で堅調な動きを見せた。
チルドプリン類では、江崎グリコの「プッチンプリン」が市場ナンバーワンブランドとしてのシェアを拡大。オハヨー乳業は焼プリンで若干苦戦も、ゲルプリンで同2桁増となった。
20年度は、市場活性化に向けて各社積極策を投下する。商品周りでは、これまで市場に登場してこなかった新たな素材を使用した新商品が目立つ。安曇野食品工房は、「ジュレパルフェ」シリーズに日本の独自素材を使用。和紅茶や煎茶などを使い、情緒的な価値を押し出していく。森永乳業は好調の「おいしい低糖質プリン」で、健康系ブランドとしての施策展開を進める。江崎グリコは、植物由来原料を使用した「プッチンプリン」新商品など新風を吹き込む。
ロングセラーアイテムの訴求も進む。協同乳業は昨年、「なめらかプリン」の発売20周年施策を展開したが、今年度も同品を軸に戦略展開。来年は「カスタードプリン」も発売40周年を迎える。森永乳業の「牛乳プリン」も発売25周年に向けて仕掛けを進める。
●常温 健康志向への対応など独自販促強める
常温(ドライ)ゼリー類は、健康志向の高まりへの対応やご褒美デザートとしての嗜好性、新たな季節素材の活用など、各社独自の販促を強めるシーズンとなりそうだ。
19年度はチルドゼリー類同様、夏場の天候不順が影響。下期は復調したものの、上期の完全なリカバリーには至らなかったとみられる。
常温ゼリー類の強みである、果肉の使用は根強い人気を獲得している。業界大手のマルハニチロが19年度に投入した「full fruits(フル フルーツ)」は果肉の満足感や透明容器による視覚訴求もあり、好調に推移した。
健康面での機能性訴求も大きな武器で、ブルボンの展開する、乳酸菌入りでカロリーが気にならない「食後の0kcal」や「ヨーグルトデザート」シリーズは好調。マルハニチロの「ゼリーdeゼロ」はサイズアップするリニューアルが奏功し、量販店で大きく伸ばした。
20年度も各社さまざまな切り口でアイテムをラインアップ。ブルボンは「果実のご褒美」に新商品を投入。常温保存できる乳系デザートも新たにカテゴライズした。マルハニチロは新たな季節素材を「フルティシエ」シリーズで発売するなど、市場活性化を図る。同社は調達力と技術力を生かし、業務用チャネル展開も強化していく方針だ。
寒天・こんにゃくデザートも強化策を打ち出す。たいまつ食品は大容量パウチの「寒天inゼリー」などを投入し、ファミリー向け商品を充実させ、日配売場を意識したデザイン・ラインアップで展開。関越物産は主力の寒天デザート、「わらびもち風こんにゃく」が売上げに寄与してきたが、夏場のこんにゃく売場での展開へ、ラインアップを強化している。
ゼリーを「凍らせて食べる」などの食べ方や、オケージョン提案も引き続き推進する。ハウス食品の「フルーチェ」は、3月以降の一斉休校を背景にした手作り需要もあり、アレンジレシピなどのさらなる浸透を進めていく。
デザート市場は手作り風デザートとの競合や、販売チャネルの多様化が進み、専門店レベルでの本格商品など選択肢も広がっていることから、高付加価値商品の安定供給が重要となってきている。チルド、常温双方の強みを生かした市場底上げに貢献する、存在感のある新アイテム投入が待望されている。
-
◆デザート特集:「底堅さ」から活性化へ 求められる新需要創出
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.2719年度(19年4月~20年3月)のデザート市場のうち、手作り風フレッシュデザートを除く大量生産のゼリー・プリン類は、ほぼ前年並みを維持しているとみられる。19年度は夏場の天候不順やカテゴリー内競争の激化など、常温ゼリー類は上期に影響を受けたものの、下…続きを読む
-
デザート特集:スイーツ市場 ヒット連発も前年比2%減 新型コロナ閉塞感打破を
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27国内スイーツ(リテール・外食向け和・洋生菓子、高級チョコ、土産菓子など)の市場規模は19年、前年を約2%下回る1兆4500億円(本紙推定)となった。新元号スタートでのお祝いムードに加え、タピオカやバスク風チーズケーキ、イチゴあめなどのヒットメニューが…続きを読む
-
デザート特集:チルド=森永乳業 全方位型の施策展開へ 健康系ブランド育成など
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27森永乳業は20年度、焼きプリンカテゴリーでのナンバーワン維持や、健康系ブランドの育成など、全方位型のデザート施策を展開する方針だ。人気商品の「牛乳プリン」も発売25周年に向けて仕掛けを計画。新たな価値を提供する新ラインアップも投入するなど、商品周りで…続きを読む
-
デザート特集:チルド=雪印メグミルク 個食タイプ育成に注力 連物には新価格帯
嗜好飲料 特集 2020.04.27雪印メグミルクは20年度、個食タイプの育成に注力していく。今上期は、グループ会社のルナ物産で生産するトールカップデザート全商品の刷新を敢行。中心商材としての拡販を進める。連物も新価格帯で展開し、市場活性化を図る。 同社19年度デザート部門は、「クリ…続きを読む
-
デザート特集:チルド=江崎グリコ 新規購入率アップへ新提案
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27江崎グリコは20年度、新規ユーザーの購入率アップへ新コンセプトの商品を投入するとともに、食シーンの提案を進める。これまでプリンを食べることができなかった人に向けた植物由来の商品や、場所・時間を選ばず楽しめる機会提案を加速。幅広いユーザーへの訴求を強め…続きを読む
-
デザート特集:チルド=協同乳業 「なめらかプリン」主軸に展開
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27協同乳業は20年度、発売から20年を超えた「なめらかプリン」を主軸にデザート部門の拡販を進める方針だ。食べ方提案や新フレーバーを投入し、味わいの強みを積極訴求。来年には発売40周年を迎える3連タイプ「カスタードプリン」などとともに、購買率アップを目指…続きを読む
-
デザート特集:チルド=安曇野食品工房 「ジュレパルフェ」新たな切り口で伸長へ
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27安曇野食品工房は20年度、主力の「3層仕立てのジュレパルフェ」シリーズで新たな切り口を提案し、伸長を目指す方針だ。日本の独自素材を使った商品を投入し、新たなフルーツゼリーとして「日本の良さ」の再認識を訴求。ドライゼリーでも新たなラインアップをスタート…続きを読む
-
デザート特集:チルド=フジッコ フルーツセラピー「マンゴー」をリニューアル
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27【関西】フジッコは、3月1日に「フルーツセラピー」シリーズの春夏期間限定商品「マンゴー」(150g、標準小売172円)をリニューアル発売した。同品は販売10年以上の人気商品で、今回は熱を加えず超高圧殺菌処理を施したマンゴーピューレを使うことで、生マン…続きを読む
-
デザート特集:チルド=オハヨー乳業 「ジャージー牛乳」認知度高め販売促進
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27【中国】オハヨー乳業の19年度デザート部門の販売実績は前年比微増の着地となった。 前年度は、前半は伸び悩んだが、夏以降は好調に推移。焼プリンが若干の苦戦を強いられたがゲルプリンは2桁増と伸長した。 ゲルプリンでは、個食タイプ(ジャージー牛乳プリン…続きを読む
-
デザート特集:常温=マルハニチロ 新たな素材投入し市場活性化
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27マルハニチロは20年度、これまで市場になかった新たな素材を使った商品を投入し、ドライゼリー市場の活性化を進める。主軸ブランドの「フルティシエ」と「大満足」両シリーズを基軸に展開する方針で、春夏に向けて新たな季節素材を使った商品の投入を計画。同社の調達…続きを読む
-
デザート特集:常温=関越物産 和風デザートにヒットの予兆
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27関越物産の今期(20年5月期)デザート売上げは、前年実績を上回る見込み。主力の「寒天デザート0kcal」シリーズは堅調に推移。和風デザートでは、19年3月に発売した新商品の「わらびもち風こんにゃく」の好調が寄与し、前年を大きく上回った。「わらびもち風…続きを読む
-
デザート特集:常温=ブルボン 品数増や売場起点で販促 健康・ご褒美がコンセプ…
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27【新潟】ブルボンのデザート部門は「健康とご褒美」をコンセプトに、アイテム数を前年以上に増やすほか、販促物を使用した売場起点の独自販促を展開する。今後もフルーツ代替需要や健康志向が高まると予想される中、差別化された商品を展開し市場活性化に取り組む。 …続きを読む
-
デザート特集:常温=ハウス食品 「フルーチェ」濃厚シリーズが好調
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27ハウス食品のデザート関連製品は、ほぼ前年並みを維持した。「フルーチェ」は濃厚シリーズが好調に推移し前年を上回った。「シャービック」や「プリンミクス」などのパウダーデザート類は前年を下回ったが、終売品を除くと数量ベースでは前年を上回っている。パウダーデ…続きを読む
-
デザート特集:常温=たいまつ食品 家庭向けパウチに注力 日配売場意識し品揃え
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27【新潟】たいまつ食品のデザート事業は今期、春夏向けの大容量パウチデザート「寒天inゼリー」など7アイテムを2月から投入し、ファミリー向け商品を充実した。日配売場を意識したデザインや商品ラインアップで展開する。 20年3月期のデザート事業は前年並みの…続きを読む
-
デザート特集:冷凍 19年も安定成長維持 各社、新型コロナで戦略見直し
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27●業務用3%増 家庭用は5%増 長期安定的な拡大基調で推移してきた冷凍デザート市場だが、19年もインバウンド増加など堅調な需要を背景に、業務用で前年比3%増、家庭用で同5%増の市場拡大と推定する。末端売上規模は業務用540億円、家庭用105億円と算…続きを読む
-
デザート特集:冷凍=ヤヨイサンフーズ 小規模施設ニーズに対応
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27ヤヨイサンフーズの19年4月~20年2月累計デザート部門は、売上高が前年比2%増で推移した。主力のプリン・ゼリー・ムースが同3%増と堅調で、学校給食や事業所給食向けには「アレンジダイスゼリー」などコスト訴求タイプの商品が伸びた。総アイテム数の約10%…続きを読む
-
デザート特集:冷凍=日東ベスト “3つの焼菓子”がけん引 カテゴリー強化継続
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27日東ベストの20年3月期末業務用デザート売上高は、新型コロナウイルスによる3月の減速があり、前期を下回る着地の見込み。ホテル・レストランやレジャー施設などの外食や、学校給食のひなまつり行事食などで大きな影響を受けた。2月までは好調なペースを維持し、外…続きを読む
-
デザート特集:冷凍=テーブルマーク さらなる個包装提案を アレンジ訴求も注力
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27テーブルマークの19年12月期末デザート部門(業務用のみ)売上高は、前年比で1桁前半の伸長と堅調に推移した。フリーカットの中で特に強みとするロールケーキのラインアップ拡大、とりわけPS(patissier style)シリーズで展開する季節感を打ち出…続きを読む
-
デザート特集:冷凍=味の素冷凍食品 3月期好調な着地へ 商品提案引き続き強化
デザート・ヨーグルト 特集 2020.04.27味の素冷凍食品の20年3月期末デザート部門(業務用のみ)売上高は、2月以降の新型コロナウイルスの影響でホテル中心に苦戦となるも、トータルでは主力「フリーカットケーキ」が堅調に推移し、加えて現場課題解決品である「カット済みケーキ」のユーザー評価が高まり…続きを読む