デザート特集

◆デザート特集:「底堅さ」から活性化へ 求められる新需要創出

菓子 2020.04.27 12044号 05面

19年度(19年4月~20年3月)のデザート市場のうち、手作り風フレッシュデザートを除く大量生産のゼリー・プリン類は、ほぼ前年並みを維持しているとみられる。19年度は夏場の天候不順やカテゴリー内競争の激化など、常温ゼリー類は上期に影響を受けたものの、下期は暖冬傾向などの追い風要因もあった。チルドゼリー・プリン類全体は前年より若干下振れたとみられるが、中でもチルドゼリー類でコーヒーゼリーやアジアンデザートの好調が目立った。20年2月以降は新型コロナウイルスの影響による一斉休校やリモートワークの増加などに関連する「巣ごもり消費」の傾向もあり、購入率の押し上げが見られている。ただし冷凍デザートは、主戦場であるホテルや学校給食などがマイナス影響を大きく受け、若干潮目が変わってきていることも注視される。

市場全体は近年「底堅さ」が続いているが、一方で起爆剤となるようなヒット商品が待望されていることも事実。新たな需要を創出する付加価値の高い商品の安定供給と喫食機会の創出が、活性化の鍵を握ると考えられる。20年度は、ゼリー・プリン類で各社新たな商品投入や食べ方提案を加速。これまで市場になかった素材を使用したり、喫食シーンを増やすためのレシピを提案したりするなど、ゼリー・プリン類の楽しみ方の幅を広げる施策が目立っている。冷凍デザート類も新型コロナウイルスの収束後をにらみ、オペレーションの簡略化など、昨今の現場課題の解決策を提案し攻勢をかける方針だ。

デザート分野は多岐にわたるため、ここでは加工食品メーカーがNB品として大量生産する家庭用の常温品・チルド品と、外食・給食分野などを含む冷凍デザートの動向を中心に、近況と今後の展望をまとめた。(小澤弘教)

●チルド 好調アジアンデザート類

総務省「家計調査」(2人以上の世帯)によると、19年4月~20年2月までの累計支出金額は、ゼリー類は前年比10.2%増、プリン類は同7.6%増と好調に推移した。年間を通じて大きな消費減退は見られなかったものの、夏場の天候不順による気温の低下の影響があり、一方で9月以降は残暑と暖冬の外的要因もあり、上振れて推移したとみられる。

市場環境では、19年春は値上げを行ったメーカーもあり、販売数量への影響が懸念されたが、通期トータルでの影響は軽微とみられ、市場理解が浸透、単価アップによる上乗せも図れたとの見方が多勢だ。10月の消費増税でも、嗜好(しこう)品であるデザート類への影響が懸念されたものの、トータルではほぼ前年並みで推移している。

タイプ別には、個食がやや苦戦傾向で、連物が伸長している印象だ。森永乳業の4連フルーツゼリー「とろけるゼリー」は幅広い年齢層に受け入れられ、好調をキープしている。

チルドゼリー類の中でも特に伸びを見せたのが、アジアンデザートとコーヒーゼリーだ。アジアンデザートでは、安曇野食品工房の「Little Asia」シリーズが大きく伸びを見せた。折からのタピオカブームの継続もあり、「同タピオカ入りココナッツミルク」は前年の2倍以上成長。売場のコーナー化提案も奏功した。雪印メグミルクの「アジア茶房」シリーズ、森永乳業の「タニタ食堂監修のアジアンデザート」、オハヨー乳業の「おいしい杏仁豆腐」も売上げ増を達成した。

コーヒーゼリーでも、雪印メグミルク、安曇野食品工房、江崎グリコなど、カテゴリー全体で堅調な動きを見せた。

チルドプリン類では、江崎グリコの「プッチンプリン」が市場ナンバーワンブランドとしてのシェアを拡大。オハヨー乳業は焼プリンで若干苦戦も、ゲルプリンで同2桁増となった。

20年度は、市場活性化に向けて各社積極策を投下する。商品周りでは、これまで市場に登場してこなかった新たな素材を使用した新商品が目立つ。安曇野食品工房は、「ジュレパルフェ」シリーズに日本の独自素材を使用。和紅茶や煎茶などを使い、情緒的な価値を押し出していく。森永乳業は好調の「おいしい低糖質プリン」で、健康系ブランドとしての施策展開を進める。江崎グリコは、植物由来原料を使用した「プッチンプリン」新商品など新風を吹き込む。

ロングセラーアイテムの訴求も進む。協同乳業は昨年、「なめらかプリン」の発売20周年施策を展開したが、今年度も同品を軸に戦略展開。来年は「カスタードプリン」も発売40周年を迎える。森永乳業の「牛乳プリン」も発売25周年に向けて仕掛けを進める。

●常温 健康志向への対応など独自販促強める

常温(ドライ)ゼリー類は、健康志向の高まりへの対応やご褒美デザートとしての嗜好性、新たな季節素材の活用など、各社独自の販促を強めるシーズンとなりそうだ。

19年度はチルドゼリー類同様、夏場の天候不順が影響。下期は復調したものの、上期の完全なリカバリーには至らなかったとみられる。

常温ゼリー類の強みである、果肉の使用は根強い人気を獲得している。業界大手のマルハニチロが19年度に投入した「full fruits(フル フルーツ)」は果肉の満足感や透明容器による視覚訴求もあり、好調に推移した。

健康面での機能性訴求も大きな武器で、ブルボンの展開する、乳酸菌入りでカロリーが気にならない「食後の0kcal」や「ヨーグルトデザート」シリーズは好調。マルハニチロの「ゼリーdeゼロ」はサイズアップするリニューアルが奏功し、量販店で大きく伸ばした。

20年度も各社さまざまな切り口でアイテムをラインアップ。ブルボンは「果実のご褒美」に新商品を投入。常温保存できる乳系デザートも新たにカテゴライズした。マルハニチロは新たな季節素材を「フルティシエ」シリーズで発売するなど、市場活性化を図る。同社は調達力と技術力を生かし、業務用チャネル展開も強化していく方針だ。

寒天・こんにゃくデザートも強化策を打ち出す。たいまつ食品は大容量パウチの「寒天inゼリー」などを投入し、ファミリー向け商品を充実させ、日配売場を意識したデザイン・ラインアップで展開。関越物産は主力の寒天デザート、「わらびもち風こんにゃく」が売上げに寄与してきたが、夏場のこんにゃく売場での展開へ、ラインアップを強化している。

ゼリーを「凍らせて食べる」などの食べ方や、オケージョン提案も引き続き推進する。ハウス食品の「フルーチェ」は、3月以降の一斉休校を背景にした手作り需要もあり、アレンジレシピなどのさらなる浸透を進めていく。

デザート市場は手作り風デザートとの競合や、販売チャネルの多様化が進み、専門店レベルでの本格商品など選択肢も広がっていることから、高付加価値商品の安定供給が重要となってきている。チルド、常温双方の強みを生かした市場底上げに貢献する、存在感のある新アイテム投入が待望されている。

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