九州食品産業特集
●九州加工食品メーカー群、6次産業化推進地盤揃う
農林水産省によると、2019年の九州農業の産出額は1兆7520億円で、全国シェア19.6%。ブロック別シェアでは関東の26.7%に次ぎ、以後東北16.0%、北海道14.0%と続く。
九州地区の都道府県別では、鹿児島県が4890億円で全国2位、宮崎県が3396億円で同5位、熊本県が3364億円で同6位となっている。
各農畜産物別では畜産部門が8315億円で25.7%を占め、野菜が4212億円で19.6%、コメが1606億円で9.2%、果実が1243億円で14.8%。特に九州地区は畜産部門のシェアが高く、鹿児島県では肉用牛1278億円、豚847億円、ブロイラー695億円ですべて全国1位。水産業では2019年海面漁業漁獲量は九州48.4万tで全国シェアは15.0%。これに海面養殖業漁獲量では九州26.8万tで全国シェアは29.3%となっている。
これらを見ると、九州は第1次産業である農業、畜産業、水産業の産出額で、全国有数の生産地であることがわかる。つまり、1割経済といわれるその中で、約2倍以上の食経済を支えているという計算となる。
このように九州は食資源の宝庫だが、これらを活用した地域活性化への取組みとしての6次産業化にも多くの企業が取組みを始めている。
収穫から加工、販売までその裏には「農商工連携」というトータルな施策も必要で、円滑に食品が生活者まで届けられる全体観を持って対処することが求められる。
九州は恵まれた農水畜産物で、これらの原料を加工し製品化する食品製造業も全国的に見て数多い。近年、商品の差別化戦略の一環として九州原料にこだわった加工品や原料に近い場所で加工製造する「地産地工」の概念を強化するメーカーも輩出している。
ここで原料から製品化する加工メーカーの役割は大きく、6次産業推進化で強い基盤を持つ九州食品加工業の意義は大きな意味を持つ。ここでは全国へと根を張るメーカーも多く、その各社の現況を紹介する。(九州支局長=堀江勝)
-
◆九州食品産業特集:広がりみせる「地産地工」 6次産業化推進地盤揃う
総合 2021.06.29●九州加工食品メーカー群、6次産業化推進地盤揃う 農林水産省によると、2019年の九州農業の産出額は1兆7520億円で、全国シェア19.6%。ブロック別シェアでは関東の26.7%に次ぎ、以後東北16.0%、北海道14.0%と続く。 九州地区の都道…続きを読む
-
九州食品産業特集:フンドーキン醤油 「生詰め無添加合わせ味噌」全国商材に
味噌・醤油 2021.06.29フンドーキン醤油は今年、創業160周年を迎えた。ここで15年後には売上げ単体200億円を掲げている。昨年度は連結売上げ171億円で過去最高となった。コロナ禍で業務用が落ち込む中、家庭用商材が健闘した。 「生詰め無添加合わせ味噌」が好調で、今や全国商…続きを読む
-
九州食品産業特集:富士甚醤油 新工場建設を計画
調味 2021.06.29富士甚醤油は醤油、味噌以外の加工調味料を製造する現在、本社に体内化している旧サンアスベルフーズの第2工場建設に向けてかじを切った。 現在の第1工場が老朽化してきたことと、業容拡大のため手狭になったことによる。建設地は同一敷地内の土地を活用する予定で…続きを読む
-
九州食品産業特集:ニビシ醤油 「うまくち」60周年
味噌・醤油 2021.06.29ニビシ醤油は昨年、創業100周年を迎えた。近年、一連の設備投資が完了し、さらに販売拠点の整理統合を進め、製造、販売で一つの区切りとしてスタートしている。 今期はこれらの施策に対して、どう効果を上げ、その数値を確実に内外に示したい時期とした。昨年、商…続きを読む
-
九州食品産業特集:マルヱ醤油 創業100周年迎える
味噌・醤油 2021.06.29マルヱ醤油は6月、創業100周年を迎えた。これを機に、再度、コアなマルヱファンを掘り起こし、これを深掘りしていく施策を掲げている。 同社の持つ100年企業としての歴史と併せ、積み上げられた企業風土とともにこれを活用し、伝えていく。また、若年層には長…続きを読む
-
九州食品産業特集:チョーコー醤油 今年創業80周年に
味噌・醤油 2021.06.29チョーコー醤油は今年、創業80周年を迎えた。今期も引き続き、チョーコーブランドの向上をさらに広く深く掘り下げ、再構築を掲げている。すでに百貨店を中心に全国に商品は配荷されているが、可能性の高い空白地帯も多いとみている。 特に、加工調味料の販売強化は…続きを読む
-
九州食品産業特集:ヤマエ食品工業 150周年記念誌を発刊
調味 2021.06.29ヤマエ食品工業では5月28日、創業150周年を迎えた。江夏岩吉氏が創業した。大正15(1926)年には本社近くに当時の木造建築の技術の粋を集めた邸宅を建設、石造りの洋館も連なっているのも珍しく、登録有形文化財へ現在、改修を行いながら準備している。さら…続きを読む
-
九州食品産業特集:宮島醤油 小容量液体調味料の需要増え増強
調味 2021.06.29宮島醤油は昨年4月、加工食品を製造している妙見工場の第4工場が完成した。需要増の小容量液体調味料の包装ラインを増設、さらに商品倉庫のスペースも拡張した。敷地1万4112平方m、延床面積3634平方m、鉄骨造1階建て。屋根には太陽光発電パネルも設置して…続きを読む
-
九州食品産業特集:フンドーダイ 地元企業の協業可能性探る
味噌・醤油 2021.06.29フンドーダイでは今夏、中国向け商材で人気が高まっている「減塩醤油」のための脱塩設備を更新し、広がる需要に対応する。さらに今年中には密封ボトルの醤油充填の設備投資を計画している。 昨年同様に、引き続き、醤油、味噌の原点をさらに磨く方針で「食文化発信企…続きを読む
-
九州食品産業特集:マルタイ SDGs・CSR取り組み促進
小麦加工 2021.06.29マルタイは昨年度、巣ごもり需要の追い風も受けて大幅な増収増益決算を実現した。主力の九州、関東、関西でもすべての地域で前年を上回る業績で着地した。 昨年に引き続き「マルタイラーメン」「長崎皿うどん」などの袋麺が好調に推移した。商品開発も日本食研、ピエ…続きを読む
-
九州食品産業特集:五木食品 SDGs目標達成
小麦加工 2021.06.29五木食品は1878年、熊本市で製粉、製麺の店として創業し、その後「五木そば」の発売を経て、五木ブランドを確立した。60年には棒状即席麺「アベックラーメン」を発売し、67年にはLL麺業界に参入した。 87年本社・工場を現在の城南町に新築移転し、96年…続きを読む
-
九州食品産業特集:サンポー食品 100周年販促を計画
小麦加工 2021.06.29サンポー食品は、1921年大石忠蔵氏が基山町で、米穀卸商、大石商店を創業したのが始まり。今年で創業100周年を迎えた。これを機に秋口には消費者キャンペーンを計画している。 麺事業は49年旭製粉製麺所を設立して、製粉製麺事業を開始した。当時、農協との…続きを読む
-
九州食品産業特集:きゅうぶつ 経営基盤の強化を
農産加工 2021.06.29きゅうぶつは1949年、椎茸などの農産物を販売する九州物産商会として設立され、70年を超える歴史を持っている。59年には日田椎茸入札市場を開設し、業容を拡大した。 76年九州物産商会から分離して、加工、販売部門として同社が設立された。同時に「上手工…続きを読む
-
九州食品産業特集:丸永製菓 「和」の強みを発揮
乳肉・油脂 2021.06.29丸永製菓は関東、中部、関西など都市圏強化と本社所在の九州地区でのさらなる深耕を進め、シェア拡大を目指している。同社の強みは「和」のシリーズだが、これをさらに磨くことで、会社全体の底上げを進めていくのが基本方針となっている。 設備投資では2017年、…続きを読む
-
九州食品産業特集:八ちゃん堂 新工場計画を策定中
冷凍・チルド 2021.06.29八ちゃん堂の現在の生産体制は業容拡大と施設老朽化に伴い、中期的に現在の第1工場である本社工場と近隣に所在する第2工場の統合を目指して、新工場建設の計画を策定中である。複数のラインを導入し、商品開発の幅を広げたいとしている。加えて焼きナスを製造するベト…続きを読む
-
九州食品産業特集:一番食品 一歩先の食未来を模索
調味 2021.06.29一番食品は1959年、スープの専門メーカーとして創業。現在、業務用加工業界、一般消費者向けの商品を、約8500種類以上を生産し、全国の加工業者やCVS、流通業界など生産拠点と消費者へ両軸に供給している 生産拠点は本社の立地する飯塚市と茨城県小美玉市…続きを読む
-
九州食品産業特集:ダイショー 鍋スープ好調推移
調味 2021.06.29ダイショーの前期は増収増益となった。売上げは224億円で、着実な上積みがあった。特に昨年は家庭用商材が好調で、主力の鍋物調味料や焼肉のたれがそれらをけん引した。鍋物では王道鍋といわれるもつ鍋スープ、キムチ鍋スープ、カレー鍋スープが好調に推移した。 …続きを読む
-
九州食品産業特集:さかえやグループ 明太子加工品を積極的に開発
水産加工 2021.06.29さかえやグループは近年、明太子の加工品の商品開発に積極的に取り組んでいる。昨秋には「たらこの旨煮」を発売。筑前煮風に煮込み、ほんのり甘く仕上げた。 「バターめんたい」はバターに明太子を練り込み、トースト、クラッカー、じゃがバターなどに使用することで…続きを読む
-
九州食品産業特集:大盛食品 「糸島グルメ」本格化
調味 2021.06.29大盛食品では企業テーマとして「おふくろの味」「忘れられない味」「感動できる味」を掲げ、伝統的な味を受け継ぎ、化学調味料を使用しない無添加商品を基本としている。 国産原料にこだわり、博多に本社を置く食品メーカーとして、博多をテーマに、明太子やとんこつ…続きを読む
-
九州食品産業特集:福徳海苔 上質海苔を基本姿勢に据え
水産加工 2021.06.29福徳海苔の前身は1924年、乾物主体の食品卸業「福原商店」の出資により1958年、佐賀県諸富町に創業した。同社は当初からブランド戦略を推進し、「宝づち印」の味付海苔、焼海苔、乾海苔を中四国、九州地区を主体に販売してきた。 上質海苔を基本姿勢に据え、…続きを読む
-
九州食品産業特集:鶴味噌醸造 多彩な味噌加工品
味噌・醤油 2021.06.29鶴味噌醸造は1870年、余米の価値を高めるために味噌醸造を開始し昨年150周年を迎えた。柳川の歴史に残る企業でもあるが、1929年に合資会社吉開商店を設立後、56年現社名の鶴味噌醸造となった。当時は特に軍用物資の陸海軍御用達として納め、品質で高い評価…続きを読む
-
九州食品産業特集:山忠 ヒジキ加工品好調
水産加工 2021.06.29山忠はヒジキ、ワカメ、海藻サラダを主力とする海藻の総合加工メーカーである。1947(昭和22)年の創業以来、原料の買い付けから加工・選別・製品化までを一括管理し、国内産ヒジキ処理量は日本一でもある。 原料入荷後も洗浄、蒸煮、乾燥、選別までの工程があ…続きを読む
-
九州食品産業特集:アクタ テークアウト・デリバリー・環境対応に今期注力
機械・資材・IT 2021.06.29アクタは昨年4~7月は、コロナ禍による百貨店休業、行楽関連弁当などの落ち込みなどの影響で苦戦した。その後、8月~年末にかけては実績は回復傾向に。今年に入ってからは、売上げが前年比2桁増と好調に推移しているという。テークアウト、デリバリー分野全体が、こ…続きを読む
-
九州食品産業特集:西日本食品工業 包装充填機械更新で生産量が増大
農産加工 2021.06.29西日本食品工業は、1950年熊本市本山町で、食品添加物メーカーとして設立され、昨年創業70周年を迎えた。同社では第2の創業期として位置づけ、新しい商材の展開を計画している。 創業以来、経営多角化し現在ははるさめメーカーとして歩みを続け、そのほか、ベ…続きを読む
-
九州食品産業特集:西田精麦 オートミールOEM販売始動
農産加工 2021.06.29西田精麦は昨年度(2020年5月~21年4月)を振り返り、食品分野全体の実績は堅調に推移したとしている。食品工場には、穀物加工でのアルファ化や焙煎の機械を導入。加工の組み合わせが広がり、製造可能な商品が多様化した。 同社が特に重視しているのがオート…続きを読む
-
九州食品産業特集:火乃国食品工業 水資源に恵まれる
農産加工 2021.06.29火乃国食品工業の立地する小川町は九州中南部に位置し、古くから阿蘇の伏流水や白川、球磨川など豊かな清冽(せいれつ)な水資源に恵まれている。この自然の恵みを利用して、名産品の数々を生んでいる。 とりわけ、熊本県宇城市小川町はその中心にあり、水の良さでは…続きを読む
-
九州食品産業特集:マルキン食品 部門間の連携強化
農産加工 2021.06.29マルキン食品は3月、近年のひきわり人気の高まりを踏まえて、「元気納豆 九州本仕込み」の派生品として「元気納豆 ひきわり本仕込み」を市場に投入。たれは「元気納豆 九州本仕込み」の「あまかたれ」をひきわりに合わせ、新たに開発したものを使用した。 同社が…続きを読む
-
九州食品産業特集:フタバ 新ブランドを育成
水産加工 2021.06.29フタバでは昨年6月、熊本市西区に新工場が建設され、本格稼働している。敷地面積約6600平方m、建物面積約2500平方m、延床面積約5000平方mで、1階、2階を生産工場として、事務所は2階の一部を使用している。 衛生設備の向上はもちろん、HACCP…続きを読む
-
九州食品産業特集:丸美屋 100年企業向け準備
農産加工 2021.06.29丸美屋は前期実績について、コロナ禍による巣ごもり消費などで、納豆を中心に自社製品の動きがよく、過去最高の売上げを達成できたとしている。 同社が、個性を発揮しながら注力してきたのが自社展示会。得意先に、より同社への理解度を深めてもらえるよう工夫した点…続きを読む