●「味わいスッキリ」本格訴求

チルドカップコーヒー市場は、コーヒーそのもののトレンド変化に対応した商品投入が進んでいる。18年度の市場は4～5％減で推移したとみられ、CVSなどで改廃ペースの速い季節限定商品が伸びた。中でも注目されるのが、市場全体の10～15％の構成比微糖・無糖・ブラックの伸びだ。近年は、コーヒー飲用量自体は増えているが、CVSのカウンターコーヒーの定着や、米国発のコールドブリューが新しい飲み方として認知が進んでいる背景もあり、コーヒーのテイストそのものが、「味わいスッキリ系」が好まれる傾向にある。PB品との競争は激しさが続いており、各社NBブランドを見直し、消費者にとって鮮度感・魅力のある商品開発を推進し、そうした潜在的需要に応えるチルドカップ棚作りに取り組んでいる。以下、チルドカップ飲料市場でトップシェアの森永乳業と、「スターバックス」ブランドを展開するサントリー食品インターナショナルの取組みを紹介する。（小澤弘教）

チルドカップコーヒー市場で8割強のシェアを誇る森永乳業は、「マウントレーニア」ブランドのラインアップを充実させ、消費者の琴線に触れる商品展開で、チルドカップコーヒー売場の華やぎ・鮮度感を演出していく。昨年発売から25周年を迎えた同ブランドの根底にある「癒やし」のコンセプトをぶれることなく継続させ、2～3年後を見据えたテーマ性を持ったリブランディングを進める。

「マウントレーニア」の18年度実績は、シリーズ全体で4％減だった。レギュラー品が夏場前年を割ったが、下期に力強く盛り返し、連結業績へ貢献した。直近の状況では、4～5月は気温の影響もあり市場同様盛り上がりに欠けたものの、6月に入り前年をクリアして推移している。

商品展開では、消費者の志向変化に対応した強化策を推進。今春は本格的味わいが楽しめる、製法や原料にさらにこだわった「SPECIALITY」シリーズに「ワールドクラフトラテ」、期間限定フレーバーを展開する「SEASONALITY」シリーズに「ダブルチョコ」を投入した。

夏の強化策としては、ごくごく飲める止渇（しかつ）系商品のラインアップを充実させる。水出しですっきりとした味わいで高感度なユーザーを獲得したコールドブリューは新しいコーヒーの飲み方として浸透してきた。同ブランドでは17年に発売した「コールドブリュー」のパッケージを6月上旬から期間限定リニューアル。これまでのレンガ調デザインから、「日本独自のスッキリ系コールドブリュー」としての清涼感を直感的に感じてもらえるものに変更した。「SPECIALITY」シリーズには、7月から期間限定で「ブラック」を投入する。低温抽出製法でコーヒー本来の香りやコクはそのままに、苦みや酸味を抑えて「暑い日のコーヒーブレイク」を楽しめる設計とした。

「SEASONALITY」シリーズには、「カフェラッテ　ソルティキャラメル　～サマージャーニー～」を新発売。「バケーション」をイメージし、シチリア産塩を使い、イタリアの夏・ゆっくりとしたバカンスをイメージした「コト表現」商品で、五感で楽しめる夏ならではの商品として投入する。

さらに、7月からは新コミュニケーションをスタートさせる。新TVCMキャラクターに俳優の西島秀俊を起用。「ほどける　ひとくち」をキャッチコピーに、ストレスなど日常の疲れを癒やすブランドとして、男性にも女性にも受け入れられるブランドとして訴求する。同時にパッケージのリニューアルも実施し、チルドカップコーヒーの持つ魅力をブランド全体で発信していく。

サントリー食品インターナショナルの「スターバックス」は、3月から主力商品「カフェラテ」「ドッピオ　エスプレッソ」「抹茶ラテ」の大幅リニューアルを実施した。シンプルで高級感のあるデザインや、フレッシュな鮮度感のあるデザインに刷新し、新たなユーザー獲得を進めている。

同ブランドは05年の発売以来、チルドカップコーヒー市場で高付加価値の商品群「プレミアムカテゴリー」を新たに創造し、独自のポジションを確立させてきた。

市場全体のテイストが変化していく中で、今春は「ノンスウィートカフェラテ」を新発売。砂糖・甘味料不使用で、厳選したコーヒー豆のおいしさをミルクが引き立てる本格的コーヒー感が楽しめる商品として販売している。4月に発売した「コールドブリュー　コーヒー」は、初夏に向けてスターバックス厳選の専用豆をぜいたくに使用し、水でじっくりと時間をかけて抽出。苦みや酸味を抑えて、奥深い香りと同時に滑らかな口当たりを実現した。

季節感を演出する限定商品では、4月に「ストロベリー　マーブルケーキラテ」を、初夏に合わせて「アイスオレンジブリュレラテ」を新発売。前者は春の華やぐ気分に合わせたストロベリーとバニラの香りが溶け合うスイーツラテで、ぜいたく感を打ち出した。後者は、爽やかなオレンジとまろやかなクレームブリュレの風味が初夏にマッチする設計で、パッケージも同ブランドらしい洗練されたデザインとしている。