世界を救え!スイーツ&ベーカリー特集
スイーツ&ベーカリー特集:食シーン多様化で販売チャネル拡大
◇自粛明けに活性化策着々
食シーンの多様化に伴い、販売チャネルを拡大しているスイーツ市場。贈答・土産やハレの日需要はもちろん、日常的な自家消費が広がるにつれ量販店やCVSの存在感が高まっている。一方、コト提案の最前線を行くデパ地下では歳時やイベントと連動した独自の活性化策が見られ、交通施設も19年はラグビーワールドカップ日本大会などでインバウンド需要をある程度つかんだようだ。一方、路面店は特に地方で明暗が分かれ、廃業も散見される。20年上期は新型コロナウイルスの影響で、特にデパ地下や交通施設、外食分野などで厳しい状況が続く。しかし、各分野ともに自粛明けに向けた活性化策を着々と練り込み、回復への期待は大きい。各チャネルの動向をまとめる。(村岡直樹)
●バズ&ヒットのCVS
CVSスイーツは09年のローソン「プレミアムロールケーキ」のヒット以降、有力チャネルに躍り出た。
チルド洋生菓子を軸に和菓子や冷凍スイーツはもちろん、近年ではマカロンやドーナツの市場も押し上げるなど、「ワンハンドスイーツ」を定着させている。
ほぼ毎年、あらたなトレンドが生まれる同チャネルだが、19年は春先からローソン「バスチー」(バスク風チーズケーキ)がバズ&ヒットを記録。レアでもベイクド(焼き)でもない斬新な食感や細部まで追求した絶妙な味覚バランス、独自の世界観・ネーミングなどで話題を喚起し、発売3日間で100万個を販売。伝説的アイテム「プレミアムロールケーキ」の「5日間」を塗り替えた。
19年の市場規模を見ると、全盛期には800億円に達したといわれるドーナツ旋風時には及ばないものの、「バスチー」以外にもカップケーキやタピオカ、ワンハンド系でヒット作が生まれた。
また、和洋折衷のハイブリッド型スイーツも品数を伸ばし、歳時連動型のスイーツメニューは常態化している。通年では2300億円前後に成長したと思われ、踊り場から脱却したといえるだろう。
20年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響を受けているものの、依然存在感は大きい。閉塞感漂う中、情緒的価値を食卓に与える意味でも、重要なチャネルとしても位置付けられる。
さらに、春の新作でも有力チェーンを中心にスイーツ本来の「楽しさ」を具現化するものが並び、売場をにぎわせている。
●自家消費の柱・量販店
量販店はチルドスイーツの充実が目覚ましく、NBメーカー品やデザート類を含め、着実に売場を拡大している。近年ではロカボ(低糖質)対応品やご当地名産品使用などの品揃えも目立ち、多彩なニーズに対応。大袋シューや1本売りロールケーキなど、CVSとの差別化をなす大容量品も19年は総じて堅調で、自家消費の柱を担っている。和菓子関連でもNB品を軸に売場を確保し、高齢者の手軽な買い場となっている。
19年の市場規模はほぼ横ばいのもようで、和洋菓子ともにバランスの取れた売場構成は健在。チルドコーナーのSKUはバラエティー感にあふれ、幅広いジャンルを網羅した。自家消費向けチャネルでは、最大となる2600億円規模をキープしている。
20年は新型コロナウイルスによる巣ごもり(買いだめ)需要での来客増の影響を受け、ジャンルによっては一時欠品も発生。一部を除き備蓄性の薄いスイーツだが、あらためて強力な購買喚起力を示した。ベーカリーでもインストアベーカリーが常態化されるなど変化の中にあり、個包装での販売対応などが進んでいる。インストアベーカリーに代表される本格志向はチルドパンやサンドイッチなどにも波及しており、今後、スイーツ分野でも売場改革が行われる可能性もある。
●コト提案の最先端・デパ地下
百貨店(デパ地下)は、最大チャネルとして土産やギフト、ハレの日から自家消費まで幅広い需要を包括する。中でもクリスマスやハロウィーン、バレンタインデーなど歳時との連動性は全チャネル随一であり、季節に応じた柔軟な売場展開が目立つ。
今後、チャネルの多様化が進む中でも3000億円以上はキープすると思われ、19年も有力ショップが一堂に集結する情報発信地として存在感を示した。
同チャネル最大の強みが、多彩なショップ力を強みとしたイベント力。テーマを明確化したフロア統一型の売場展開は他チャネルを寄せ付けず、非日常感を演出する。
近年ではインバウンド需要も旺盛で、都市型店舗では対外国人を意識したキャンペーンを開催、反響を呼んでいる。
20年は4月中旬現在、全館臨時休業や週末休業、食品フロアのみ営業など、店舗により新型コロナウイルスへの対応は異なるものの、影響は完全に不可避の状況。特に駅前百貨店は、観光客激減の影響を強く受けている。自粛解除のタイミングに向け各フェアが予想され、下期以降の大規模施策での回復に期待したい。
●V字回復期待の交通施設 路面店はテコ入れ必須
19年のラクビーワールドカップ大会から一転、厳しい状況に直面するのが、空港や駅ナカ駅ビルなどの交通施設。店舗休業に加え、客足の大幅な減少、観光客の壊滅的減少など来客数が大幅に減少し、苦しい状況にある。東京2020を控え、日本への注目が集まっていた19年とは大きく様相が変化、まさに耐え時にある。
一方で、生活者心理によるところが大きいが、自粛明けによる外出増(観光客の急増)が発生した場合、大幅なV字回復が見込まれる。また、通販形態での商品提案を本格化する施設も増加しており、「待ち」から「攻め」への提案スタイルが今後活性化すると思われる。
一方、正念場に立たされているのが、路面店(一部外食含む)だ。19年も減少傾向に歯止めがきかず、特に地方では地域2番店以下の廃業や撤退が目立つ。和菓子分野では後継者不足の問題もあり、岐路に立たされているといえるだろう。店舗形態やエリアにもよるが、得意先や常連客のみを生命線とするビジネスモデルは、CVSや量販の台頭への対応策としては及ばず、柔軟な視点での露出増や商品開発、販売戦略が今後必要となるだろう。
4月は新型コロナウイルスの影響により前年比半減との声も上がり、場合によっては競合の垣根を越えた取組みが必須の状況にある。元来、差別化が軸にある路面店だけに非常に敷居の高い取組みとなるが、台頭するCVSや量販チャネルとの線引きのためにも、今後は新たな営業形態を含めたテコ入れの時期に入ったといえるだろう。