カレー特集

カレー特集:新型コロナの影響 レトルト需要急拡大 新たな変化へ対応進む

新型コロナウイルスは3月以降、カレー業界にも大きな影響を与えている。家庭用の市場は伸長が続いていたレトルトカレーがさらに拡大し、縮小傾向が懸念されたカレールウもプラスに転じた。加えてカレー粉も数字を伸ばした。一方で、業務用市場は学校の登校中止による学校給食の停止、移動自粛による外食産業の時短営業や営業自粛などで大きく減少した。

家庭用のカレー市場は自粛による巣ごもり需要で、どのジャンルもこの3~5月は前年を上回った推移を見せた。特にレトルトカレーは既存主力品や4袋タイプなどが家庭内食化傾向に加えストック需要をつかんだことで大きく伸長した。カレールウは減少傾向が続いたが、各社の主力品が軒並み伸長。テレワークがある程度、浸透したことで簡便調理から、ある程度の手間をかける調理を選択する消費者が増えていると思われる。この傾向はカレー粉のこの時期の伸長によっても示されている。

一方で業務用はルートによって明暗が分かれている。最も苦戦したと思われるのが給食関係を主流とするメーカーだ。3、4月は学校閉鎖で大幅に出荷を減らした。また外食関連ルートも、自粛当初は「カレーはすぐ食べられる」として昼食需要などで数字は安定していたが、全国的な自粛以降は大幅な出荷減となったようだ。ただし、レトルトカレー関連を手がけるメーカーは個食タイプを中心に安定した数字を残している。これは業務用NBのレトルトカレーが家庭用として販売されたり、PB製品の需要が急増したことが要因だ。このレトルトカレー需要の増加で、カレー粉製造メーカーもレトルト製造メーカーに出荷する部分は安定した数字となっている。

今後については、家庭用の2~5月の数字を見るとある程度は読めてくる。KSP-POSデータによると、レトルトカレーは金額ベースで2月が前年比23.7%増、3月が同42.3%増、4月が同40.9%増、5月が同9.5%増となっている。カレールウおよびカレー粉は2月が同6.0%増、3月が同7.5%増、4月が同13.7%増、5月が同3.6%減となっている。この数字を見ると、巣ごもり需要のピークは3、4月であったと考えることができる。実際に5月後半以降は、外食産業なども徐々に動きを取り戻しつつあり、6月は全国的にモノとヒトの動きが復活している。2~5月は家庭用を中心に動いたカレー市場だが、今後はその反動もありある程度は外食への回復が期待できるだろう。ただし、新型コロナウイルスは抜本的な解決策が出ていないため、以前のような生活様式に戻ることは現状では考えにくい。

このため、新型コロナウイルスを意識した新たな生活様式が求められることとなる。すでに業務用市場でも、備蓄用として発売されている賞味期限が長く常温でおいしく食べられるレトルトカレーがローリングストックとして採用され、一部の学校給食で使用されるなど新たな動きが見られつつある。また、テークアウトニーズに個食タイプのレトルトカレー使用を促す動きもある。家庭用では安定供給がメーンとなるが、在宅勤務の一般化はこれまで簡便化に傾いていた家庭内調理に変化を促す可能性が高い。一部の消費者はすでにカレー粉からカレーを調理しているであろうことはカレー粉の伸びから明らかだ。これからは家庭用、業務用ともに新たな生活様式を意識した消費喚起策が求められる。

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