全国小売流通特集
全国小売流通特集:コンビニエンスストア業界動向=ビジネスモデルの転換探る
◇加盟店支援に本腰
コンビニエンスストア(CVS)は、ビジネスモデルの転換期を迎えている。人手不足が深刻化している加盟店を支援するため、時短店の実験などで全店一律の運営の見直しや作業の省人化や効率化に本腰を入れて取り組む。19年度の出店戦略も立地移転に重点を置き、純増数を大幅に減らす。大量出店と24時間営業を前提として全店一律の標準化された店舗運営が支えた成長戦略の見直しが迫られている。(山本仁)
●経産省も対策に動き出す
2月に、大阪・東大阪市に店を持つセブンイレブンのオーナーが、人手不足から時短営業を始めたことを発端に加盟店の労働環境が社会問題として報じられ、国も動き出した。経済産業省が加盟店の人手不足の実態調査と各CVSチェーンに改善の行動計画を求める事態になった。さらに経産省は6月28日、有識者による「新たなコンビニのあり方検討会」を開催した。
同検討会では従来の成長基盤の脆弱化が進行する中、商品・サービスの提供拠点のみならず、防犯・防災機能も期待されるようになったCVSが今後担うべき社会的役割は何かと今後も持続可能な形で成長を続けるために、どのようにオペレーションやそのシステムを見直すべきかについて検討する。
並行して7月8日から全国のCVSオーナーに対してヒアリングへの参加に関する意向調査も開始した。
経産省の要請によりCVS各社は5月に加盟店の人手不足対策について行動計画を公表した。主な内容は、省人化を柱とする店舗作業の効率化や時短店の実験、加盟店とのコミュニケーションの強化、食品ロス削減などの対応策が中心で取組みをさらに推進するというものだ。各社とも抜本的なビジネスモデルの再構築が必要との認識だ。
24時間営業、人手不足問題を受けて、セブン-イレブン・ジャパンは新体制を発足した。永松文彦氏を新社長に就け、新体制で加盟店との意思疎通を緊密にし、営業時間も個店ごとに柔軟に対応できるように事業を見直す方針を打ち出した。
4月の記者会見で、親会社のセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は「この1年で現場の情報が上がりにくくなっていた」と指摘した上で、出向したニッセンホールディングスでの実績を評価する永松氏に「現場の声を吸い上げる資質がある」と期待した。
CVSにとって行動計画がビジネスモデルを見直す契機につながるか、各社の姿勢と実行力が問われる。人手不足に悩む加盟店から対策が評価されなければ、持続可能な成長を続けるのは難しい。地域や個店に応じた柔軟な事業構造へ改革できるかが大きな課題だ。
●オーナー不満・店舗増が鈍化
経産省のコンビニ調査2018によると、従業員の状況について61%のオーナーが不足と回答し、加盟したことへの満足度も低下している。加盟店のオーナーが契約更新したいと回答したのも45%と5割を切った。契約更新しないオーナーが増えれば業界の持続的な成長、社会的インフラの維持も困難になる。
CVSの店舗数は5万5000店を超え、伸び率が鈍化し、加盟店を集めて大量出店することが難しくなっている。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)によれば、17年度のCVSの売上高は11兆0252億円と前年比1.8%伸長したが、店舗数は5万7956店、0.2%の微減だった。
一説で5万店が飽和といわれたが、すでにそれを上回っており、チェーン数も22チェーンと前年より一つ減った。19年5月にはローソンがポプラとの合弁会社ローソン山陰の完全子会社化を決めた。
中堅チェーンを糾合する形で上位集約化が進んだ。売上高シェアもセブンイレブンが43%、ファミリーマートが27%、ローソンが19%、3チェーン合計で約9割を占める。
そうした環境下で、各社は19年度の出店戦略で閉店数を増やして純増数を大幅縮小する。セブンイレブンとファミリーマートが単体ベースの19年度の純増数はそれぞれ100店、ローソンが差し引き0店を計画する。
出店基準をより厳格化して新規出店を抑制し、立地移転による閉店を推進して売上げの高い店にして加盟店の収益力向上を図る。
●人手不足など負担減に着手
立地を厳選して1店当たりの収益力を高めるとともに、人手不足や廃棄ロスなど加盟店の負担を減らす取組みにも本腰を入れる。
人手不足では時短営業の実験に着手した。時短店もセブンイレブンが3月から実験に着手し、ファミリーマートも6月から約270店で検証を始めた。ローソンもすでに時短営業を実施しており、希望店舗の相談に個別に応じるという。
店舗作業の効率化や省人化に注力する。人手不足に対応し、省人化にも力を入れる。セブンイレブンはセミセルフレジを全店導入するなど合計7時間の作業削減を図る。
ファミリーマートも新型引き出し什器、新型発注端末、セルフレジ導入拡大、キャッシュレス化などで5時間削減する。ローソンも9月末までにセルフレジを全店対応し、顧客が自分で決済するスマートフォンレジも1000店に広げるほか、新ストアコンピューターの導入で作業効率を上げる。
加盟店の負担として大きい廃棄ロス削減にも力を入れる。セブンイレブンとローソンは賞味期限が迫った商品にポイントを還元して食品ロスの削減を図る。
ローソンはカウンター商品など店内調理品の見切り販売で食品ロスを約2割削減しており、6月からはおにぎりと弁当で消費期限が迫った商品に売上げの5%分のポイントを付与する実験を愛媛県と沖縄県で始め、エリアを広げて検証する。
ファミリーマートはおせち、恵方巻や大型のクリスマスケーキなど季節商品を完全予約販売に移行する。中堅のポプラは賞味期限が迫った販売期限切れ商品の値下げ販売を加盟店に正式提案した。
商慣習にもメスを入れる。食品の製造日から賞味期限までを3分割する3分の1ルールの2分の1ルールへの変更を進める。各社とも飲料、菓子で2分の1に変更しており、カテゴリーをカップ麺にも広げる。
●中食・冷食の品質向上へ
商品では中食の品質向上をさらに進めるとともに、伸長カテゴリーの冷凍食品を拡大する。
セブンイレブンは冷食のケースを2台にして、品揃えも60品に増やす。冷凍食品の売場やオープンケースの拡大、カウンターを拡張した新レイアウト店を今年度6000店、累計9400店に導入する計画だ。
ファミリーマートも冷凍食品も売場を拡大し、リーチインケースを3台から4台に増やす。販売も18年は15年比で11%増の見込みで、惣菜商品やフルーツやカット野菜など素材商品も増やす。
ローソンは強みの健康関連の商品開発に力を入れる。19年度の弁当や調理麺などの中食の商品戦略で減塩、低糖質、添加物削減の三つの健康軸で開発を進める。中でも低糖質は主食メニューで品揃えを強化する。19年度の健康関連商品の売上高3800億円を目指す。
●キャッシュレス対応を加速
10月に予定されている消費増税に伴うキャッシュレス決済のポイント還元に備えて、バーコード決済の導入を加速している。
セブンイレブンはスマホのバーコード決済「セブンペイ」のサービスを7月1日から開始した。CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント=顧客関係管理)を推進するため自社アプリ内に決済機能を組み込む。
10月以降には外部との提携も始め、来春にはセブン&アイグループ各社のアプリにも導入する予定だ。
ファミリーマートも決済機能を核とする自社アプリ「ファミペイ」の提供を開始した。税込み200円の購入ごとに1円相当を還元するほか、クーポンや回数券などの販促機能を備えるアプリだ。11月からは他社のポイントサービスとも連携する。
20年度内に1000万ダウンロード、22年度内に他社サービスを含めたキャッシュレス比率を現状20%から50%に高める。
ローソンでは17年1月からバーコード決済を開始し、今年6月末時点で支付宝(Alipay)、LINE Pay、楽天ペイ、d払い、Origami Pay、PayPayなど11種類を利用できる。
キャッシュレス化の推進で顧客の利便性を高めるとともに、レジ業務の負担軽減も図る。さらにぼう大な購買データを集めることで、きめ細かいマーケティングや販売促進に活用して顧客の囲い込みも狙う。
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